普段何気なく食べている柑橘類ですが、そこに含まれている「ノビレチン」というポリフェノールに認知症の予防効果が期待できるということをご存じでしょうか。そして、このノビレチンは青魚に含まれるDHAと一緒に摂ることで、より効果を発揮するといわれています。今回は認知症専門医の遠藤英俊先生に詳しく話をうかがいました。
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ノビレチンが豊富なシークワーサー
「みかんなどの柑橘類が認知症を予防する効果があることが、東北大学の研究で明らかになりました。柑橘類を食べる頻度が週3〜4回の人は、週2回以下の人に比べて認知症を発症するリスクが8%も低下していました。このような研究結果が出たのは、柑橘類に含まれるノビレチンという成分が関係しているとされています」(遠藤先生)
ノビレチンには抗酸化作用や抗糖化作用、抗炎症作用があるので、認知症を引き起こすような脳の神経変性の疾患に対する予防や改善の効果が期待できることが、さまざまな論文で報告されてます。
「柑橘類の中でもノビレチンの含有量が特に多いのが、沖縄県の北部にある大宜味村特産のシークワーサーです。この村は長寿の村として知られていますが、シークワーサーは温州みかんに比べて10〜20倍のノビレチンが含まれています。沖縄県は認知症の発症率が他県と比べて低いのですが、その理由の1つがシークワーサーではないかといわれています」(遠藤先生)
ノビレチンに関する研究は着実に進んでおり、マウスを使った実験では、ノビレチンを含むエサを与えたところ、アルツハイマー病の原因の1つとされるアミロイドβの蓄積が抑制されたことがわかっています。
また、認知症の発症を防ぐには、認知機能の予備能力を鍛える必要があります。この能力は脳を使えば使うほど発達していきますが、ノビレチンにはそれを促す効果があるといわれています。
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DHAとノビレチンを一緒に摂ると効果的
ほかにも、最新の研究結果で、ノビレチンに神経細胞の突起を増やす効果があることがわかっています。神経細胞から伸びた突起は別の神経細胞と接続してネットワークを増やしていきますが、それによって多くの情報をやり取りすることができます。
「ノビレチンはDHAと一緒に摂ることで、両者の値を足した以上に神経細胞の突起が増えることがわかっています。1+1が2ではなく、3になるイメージです。そのため、DHAが豊富な青魚とシークワーサーは、神経細胞の突起を増やして脳の老化を予防する最高の組み合わせといえます」(遠藤先生)
また、人体には血液中の物質が脳内へむやみに移動しないよう、門番のような役割を担う「血液脳関門」という機能がありますが、脳のエネルギー源となるブドウ糖やアミノ酸は通し、高分子のたんぱく質や脂質などは通しにくくなっています。
「ニコチンやカフェイン、アルコールも通し、脳の神経細胞に直接働き、気分を高揚させたり、落ち着かせたりします。ノビレチンもカフェインと同等のレベルで血液脳関門を通過し、脳へ直接届くとされています。脳では神経細胞に直接働きかけ、認知機能を維持する効果が期待できます」(遠藤先生)
ノビレチンはアミロイドβの蓄積を抑制するほか、蓄積の次の段階で現れるタウというたんぱく質の蓄積を抑える効果も期待できます。そのほか、活性酸素による神経毒性を抑制したり、シナプス(神経細胞のつなぎ目)伝達の機能不全を防いで活性化させる効果なども報告されています。
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このコンテンツの監修者は……いのくちファミリークリニック院長 遠藤英俊先生
【PROFILE】
認知症専門医。名古屋大学大学院医学研究科修了。米国国立老化研究所客員研究員、国立療養所中部病院(現・国立長寿医療研究センター)内科医長、国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長などを経て、2021年3月、愛知県稲沢市にいのくちファミリークリニックを開院。著書に『最新 ボケない!“元気脳”のつくり方』(世界文化社)、『医師が認知症予防のためにやっていること。』(日経BP)など。
(抜粋)
TJ MOOK『100歳まで脳を育てる生活習慣』
監修/遠藤英俊ほか
[編集・執筆]株式会社はる制作室
[執筆協力]常井宏平
[撮影]中川晋弥
[写真・イラスト協力]shutterstock, photolibrary
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