現役ボカロPのインタビューを大公開! 作曲の上達法やアドバイスもご紹介!

人気ボカロP・みきとPがDTM初心者へアドバイス! 上達への近道は寝ること&締め切り!? [インタビュー]

ボカロPという言葉を聞いたことはありますか? “ボカロP(Pはプロデューサーの略)”とは、ネット上にVOCALOIDを使用して制作したオリジナル楽曲を発表する人のこと。プロ・アマ問わず数えると、世界中に数十万人はいるといわれています。

今回はTJ MOOK『ボカロPになりたい! 一番やさしい作曲入門』の内容から、現役で活躍する超人気ボカロPであるみきとPのインタビューをお届け! 曲作りのコツや、ボカロPとしての心得などを伺いました!

 

現役ボカロPのみきとPとは?

現役ボカロPのみきとPとは?

【Profile】
2010年より活動を開始。バンド経験を活かしたサウンドが特徴的で『いーあるふぁんくらぶ』『サリシノハラ』『ロキ』など数々の名曲を生み出したヒットメーカー。近年は楽曲提供やライブ活動も数多く行っています。

【Twitter】@mikito_p
【YouTubeチャンネル】みきとP /mikitoP Official Channel
【ニコニコ動画】nicovideo.jp/mylist/19099704

現役ボカロP、みきとPにインタビュー!

バンド活動経験を経て新境地“ボカロ界”へ

―― みきとPさんがDTMを始めたきっかけを教えてください。

11年ぐらい前、それまでずっとやっていたバンドが解散して、ひとりで作曲作業を行うようになったんです。最初はマルチトラックレコーダーなどに録音していたんですけど、バンド時代の知人から「DTMで曲を作っているんだ。こういう機械があればできるよ」と色々教えてもらって、その流れでDTMで作業をするようになりました。

僕は女性キー想定の曲を作ることが多かったので、「仮歌が必要だな」と思っていたところで初音ミクの存在を知って。

―― そこからいわゆる『ボカロ曲』を作り始めたんですね。

そうです。ただ僕はずっとバンド畑だったので、当初ボカロの同人界隈の雰囲気や曲調がよく分かりませんでした。今でこそバンドやギターサウンドのボカロ曲もいっぱいあるんですけど、当時はあんまりなくて、正直最初は居心地の悪さを感じたんです。

けれど、その中でキャプテンミライ(キャプミラP)さんの『カレイドスイミング』や『エンドレス』を聴いたときに「あ、こういう曲もあるんだ。かっこいいな」と思ったんです。「俺もここにいていいんだ」という安心感やチャレンジ精神が生じたというか。そこから本格的にボカロ曲を作るようになり始めました。
バンドを解散してしばらくの間は自分にとってかなり辛い時期だったんですけど、いい音楽に触れたことによってまたやる気が出たんです。

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―― ボカロで初めて作ったメロディを今でも覚えていますか?

初めて作ったのは、最初にニコニコ動画に投稿した『こくはく』という曲の冒頭のメロディです。今でも『春風ひらひら 放課後のベランダ』というフレーズを聴くたびに、当時のことを思い出します。

その頃はバイトも沢山していたので、スキマ時間を活用して曲を作っていました。そのなかで完成した『こくはく』を「せっかくだし、自分の曲も出してみようかな」と腕試し感覚で投稿してみたんです。すると想像以上に反響が少なくて、勝手にショックを受けていました(笑)。

でもそれは学びのひとつでしたね。「無名の人がポンと楽曲を投稿しても、再生回数は伸びないよね」って。だからとりあえず3曲ぐらい投稿して反応を見ようと思って。すると3曲目を出した時期に、友人から「この曲作ったの君じゃない?」と連絡が来たんです。素直に嬉しかったですし、その頃から手応えを感じ始めましたね。比例して、ボカロでの曲作りが楽しくなりつつありました。

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―― ちなみに、みきとPさんが曲を作る際は、作詞と作曲、どちらから取り掛かることが多いですか?

僕は基本的に、作曲と作詞をほぼ同時進行で作っています。メロディを作る作業と並行して、支離滅裂な歌詞みたいなもの、いわゆる“言葉のグルーヴ”を乗せつつ作っていく、という感じですね。最初はぼんやりしているものを、徐々に固めていくというイメージです。テーマなり、メロディなり、何かしらに引っ張られていくうちに楽曲が完成する、というパターンが多い気がしますね。

―― 引っ張られていく、とは、具体的にはどういった感覚ですか?

引っ張られていく、とは、具体的にはどういった感覚ですか?
中華っぽさをイメージした『いーあるふぁんくらぶ』はジャケット&MVもチャイナ風に!

例えば『いーあるふぁんくらぶ』という楽曲は「なんか作んないとなー」という漠然とした気持ちからスタートして、冒頭でドラを1発鳴らしてみたら「お、中華っぽいぞ」と思って「じゃあ中華風の曲にしてみよう」という流れになったんです。つまり“音”に引っ張られて曲作りがスタートした楽曲なんですよね。

僕は学生時代から香港映画が好きで、元々中国語には興味がありました。ひとり旅をしたり、中国語講座にも通ったりしたこともあって、当時はちょっとした日常会話ぐらいなら話せるレベルだったんです。「じゃあその経験をこの曲と結びつけてみよう」という流れで完成しました。

テーマを決めて、それに沿って作品を仕上げていくというのが自分の理想ではあるんですけど、テーマを探すのって案外難しいんです。それに、テーマに縛られて自由に作れないときもある。「よく分かんないけどとりあえずやってみよう」というときの方がうまくいくケースもあります。

 

重要なのは“寝ること”と自分で“締め切り”を決めること

―― 「とりあえずやってみる」ということが大切なんですね。

本当にその通りですね。初心者の方だと「うまくできるかな」「作業が思うように進められないな」「いい曲が作れないな」と悩むことが多いと思うんです。でも、その悩みはずっとあります。僕だって、いまだに悩み続けています(笑)。
でも、やってみないと何も始まらないんですよね。とりあえず完成させる。そして、発表してみる。これが一番大切なことなんじゃないかなって思います。

―― うまくいかないときのみきとPさん流の対処法ってありますか?

寝ることですね(笑)。眠らないとパフォーマンスが落ちたり、判断がつかなくなってくるんです。あと、ぼんやりしていると理想がどんどん高くなってしまって、ドリーマーになっちゃうんですよ。自分が作ったものが理想に追いつかなくて、いつまで経ってもオーケーが出ない状態になってしまう。行き詰まるとかアイディアが浮かばなくなるっていうのは、ハードルが上がりきっているということだと思うんです。

だから、行き詰まったときは一旦寝てリセットする。そしてスッキリした頭で、ハードルを調整してみてはどうかなと。

あとは、自分で締め切りを設定することもすごく大事だと思います。締め切りを決めたら、その日までにどんな形でもいいから曲を完成させる。そこでできたものが今の実力なんだと、自分でちゃんと感じることが重要なんです。

完成した曲を聴いたら、必ず「あそこはもっといい感じにできたかもしれない」「自分の好きなフレーズやメロディラインはコレなのかな?」と課題が見えてきます。
それが次の楽曲制作に活かされていくんです。

―― 締め切りを定めることと同時に、1曲完成させる、ということも重要なのでしょうか?

僕はフル尺で完成させることがとても重要だと思っています。イントロとか、サビとか、部分的なものはいくらでもできるんです。ただ1曲完成させるとなると話が変わってきます。パズル的な要素も必要になるし、自分がどういう構成を美しいと感じるか分かってくる。なので、断片的なものをいくつも作るのではなく“自分で定めた締め切りまでにちゃんと1曲を完成させる”ということを繰り返す方が上達が早くなるんじゃないかな、と僕は考えています。

―― 初心者の方なら、締め切りまでの期間はどのくらい必要ですか?

―― 初心者の方なら、締め切りまでの期間はどのくらい必要ですか?
みきとP氏の楽曲制作部屋

5日あれば充分かな?と。
とはいえ、楽曲制作には段階がいくつもあって、アレンジ、レコーディング、その後にミックス……とやることが多いんですよね。

DTMは細かい作業が多くて、でもそれがすごく楽しいから、凝り性の人だと延々と作業を続けてしまうんです(笑)。だから完全形を目指すといつまでも曲が完成しないので、5日間で「こういう曲です」という大枠を作ることができればいいと思います。清書はそのあといくらでもできるので。

―― お話を聞いていると、1度もDTMに触れたことのない私も挑戦してみたい!という気持ちになってきました。ほかに上達法やアドバイスがあったら教えてください。

まずは、先ほど伝えた締め切りを定めて曲を完成させる、ということをひたすら繰り返してみてください。曲を量産すると、自ずとDTM作業がスムーズになっていきます。

あとは、DTMを駆使している人や、ソフトをスピーディーに扱える人などの動画を見ることをオススメします。作曲法やソフトの扱い方を丁寧に解説している動画がいくつもアップされているので、その人たちの技法を見て学んでください。僕も解説動画はよく見ていますよ。

「そんな方法あるんだ」とか「ここはあのショートカットキーを覚えれば作業が速くなるんだ」と、とても勉強になります。ソフトもどんどん進化しているので、こちらの情報もアップデートしていかないといけないな、と常にチェックしています。

 

10年を超える活動期間ずっと悩みっぱなしです

―― みきとPさんほどの方でも、随時ボカロ界の新情報をチェックしているんですね。

先ほども少し話しましたが、僕は活動を続けてきた10年間ずっと悩みっぱなしです(笑)。ノリノリで「この曲絶対いいだろ!」なんて思ったこともないですし、「どうなんだろう。これでいいのかな」って疑いながらブラッシュアップしていくことしかできません。それは初心者の方も、ベテランの方もみんな同じ気持ちなんじゃないかなって思いますね。

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―― では、活動を続けてきたなかでどんなときに「ボカロPになってよかった、嬉しかった」と感じますか?

よかった、嬉しかったと感じることはたくさんあります。今の自分の状況があるのはボカロがあってこそだし、ボカロを通じて出会った友人も大勢います。なので、なによりまずボカロには感謝の気持ちでいっぱいです。

あと嬉しかったことといえば、親戚から「最近お気に入りのボカロ曲があって」と教えてくれたのが僕の曲だったことです。「それ作ったの僕だよ。僕がみきとPだよ」と言ったらひっくり返って驚いていました(笑)。
それがとにかく嬉しかったですね。僕が作ったとは知らずに聴いてくれてたってことなので。

―― ご家族も喜んでいたのではないでしょうか?

家族は僕がみきとPだとは知っていますが、実際にどんなことをしているかは知らないんじゃないかな。でも、音楽で食べていけるようになった頃に、ようやく認めてもらえたような実感はありました。それまで家族の中での立場があまり強くなかったので「どうだ!」という気持ちも少なからず生じましたね(笑)。

―― 最近は、楽曲提供やコラボレーションなど、同業者の方からのラブコールも増えています。今後チャレンジしてみたいことはありますか?

自分が知らないジャンルや、至っていない境地に辿り着いている方となにかしたいという気持ちはあります。もっともっと知りたいこと、学びたいことがあるので、そういうのを教えてくれるような人とコラボレーションしてみたいですね。

―― ライブで人気 YouTuberの方々と楽しそうに歌っている姿がとても印象的でした。ライブ活動はこれからも精力的に行う予定ですか?

実は、僕は“アーティスト・シンガー”の部分で前に出ようとはあまり思っていないんです。サウンドメーカーの自分を自分自身で重要視しているというか。僕が作った原曲を最大限パーフェクトに表現できることに注力したいと思っています。だから原曲をちゃんと表現できる人であれば、ゲストボーカルに歌ってもらうのも全然アリなんです。
アーティストではなく“ボカロP”という裏方のポジションが性に合っていると実感する機会が最近増えましたね。

―― ボカロPの魅力を、さまざまな角度から教えていただきました。最後に、ボカロ初心者の皆さんにメッセージをいただけますか?

最近はボカロ曲のジャンルやバリエーションがかなり増えていて、可能性もどんどん広がりつつあります。なので、ぜひ、あなた自身が「好き」「美しい」と感じる音楽を作って、投稿してみてください。

ボカロPの魅力を、さまざまな角度から教えていただきました。最後に、ボカロ初心者の皆さんにメッセージをいただけますか?
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みきとP「最新情報は常時Twitterでお知らせしています」

 

(抜粋)

TJ MOOK『ボカロPになりたい! 一番やさしい作曲入門』
TJ MOOK『ボカロPになりたい! 一番やさしい作曲入門』

TJ MOOK『ボカロPになりたい! 一番やさしい作曲入門』
監修:gcmstyle(アンメルツP)

 

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[ライティング]堀田孝之、牧五百音、シブヤタカミチ
[編集]町田貢輝

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