中谷美紀|映画『総理の夫』では初の女性総理役に! 現場で心がけていることは?[インタビュー]

映画で女性総理を演じた中谷美紀が考える、各国の女性リーダーのスゴさとは? インタビュー

【中谷美紀】人と集い、旅をする。美しいものに触れ続ける未来を、決して諦めない

逆風の中から立ち上がり、たくましく、美しく生きる人。そんな女性像を、中谷美紀さんはいつもしなやかに演じています。新作映画で究極の「リーダー」に扮し、考えたこと。そして、困難な時代に向き合い、あらためて胸に抱いた願いとは?

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感情の抑制と温かい目配り。リーダーという存在、その資質とは

中谷美紀|映画『総理の夫』では初の女性総理役に! 現場で心がけていることは?[インタビュー]

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大人と呼ばれる年齢になるまでに、私たちはいくつ夢を叶えてきたでしょう?

仕事のこと、家庭のあり方など、それぞれに願ったことを実現させた先にあるのは、社会における大きな目標の達成。長年、その筆頭課題とされてきた女性の地位の向上を、今秋、俳優・中谷美紀さんがスクリーンで叶えてみせてくれます。

公開中の新作映画『総理の夫』で中谷さんが演じる役は、なんと日本初の女性総理。優しく理解のある夫(ファースト・ジェントルマン!)の存在を支えに、福祉法案成立に向けて立ち上がる政治家・相馬凛子は、役名の通り麗しく、凛々しい佇まいです。
「ご高齢者が多くの票を持ち、一方で若者があまり政治に関心を持たない今の日本の状況で、万人に支持される総理像とはどんな存在だろう?ということを、撮影中、監督と何度も話し合いました。国の長として政治を司るのは本当に大変なことだと拝察しますが、私はあくまでそう描かれた物語を演じる立場。タフな女性総理に見えるように、衣装を身に着け、メイクをし、カメラや照明など大勢の皆さんの力を借りて……。ですから、ありがたいことにそう大きなプレッシャーは感じずに済みました」

花がほころぶように笑う中谷さん。さらに、時代の追い風も吹いています。原作の小説が出版された2013年には、国のトップに女性が就任するのはまだまだ稀有な例でしたが、現在は世界各国で続々と女性リーダーが誕生。ニュージーランド、フィンランドでは30代の若い首相が誕生し、さらに在任中に出産をして子育てと仕事を両立させる例も登場しているのです。
「ニュージーランドのジャシンダ・アーダーンさんは、ファッションひとつとってもこれまでのように保守的な印象ではなく、アバンギャルドなアクセサリー使いなどが素敵でしたね。なんといっても、子どもを寝かせた後で自宅からスウェット姿で国民に呼びかける様子は鮮烈でした。しかも、その言葉がいつも感情的にならず、伝えるべきことを自分の言葉で、シンプルかつ克明に伝えていらして……。各国の女性リーダーの方々を見ていて感心するのは、アンガーマネージメントに長けているところ。普段は決して感情的にならず、ただし、ここぞというところではあえて言葉を荒らげることもしながら、国民の心を動かしていく……そのコントロールがお見事だな、と」

思い描いた未来は、いつか現実になる。そう信じて俳優という仕事に向き合ってきた中谷さん。大作や大カンパニーの首座に座る機会もしばしば訪れますが、その際に心がけるのは、「関わるすべての方々が安全で健康な状態で仕事ができ、かつ、居心地のよい現場である」こと。プレッシャーのかかる立場でありながら、目配りを心がける責任感に、頭が下がります。
「私にできることは限られたことですが、時間的にも仕事の負担も過重になりがちな現場ですから、せめて『ここにいられることが楽しい』と思えるような現場にはしていきたいな、と。とくに若いスタッフの方々には、この先1年、3年、5年、10年と経験を積んで、それぞれの分野でトップランナーになれるよう頑張ってほしいという願いを込めて、お声がけをしています」

〈未来をあきらめない〉は、政治家として凛子が掲げる信条。そのフレーズに、思わずハッとさせられます。私たち大人は、年月を重ねるなかでいろいろなものを諦めてもきたのではないか? そしていつしか、諦めることが大人の賢さであると自分に言い聞かせてはいないだろうか、と。
「諦めたくはない、ですよね。時にはいい意味での諦めも必要ですが」と中谷さん。コロナ禍で不自由を強いられる日々が未だ続いているなか、中谷さんにとってのそれは、いつか旅に出たいという気持ちを捨てないことだと言います。
「ついこの間、仕事で、久しぶりに京都を訪れる機会があったんです。日帰りだったのですが、お花や設え、美術など、日々の暮らしのなかに美しいものが当たり前にある環境に久々に触れて、いいなぁ、もっとゆっくり、何度も行きたいなぁとあらためて思いました。日本にも海外にも、まだまだ知らない場所や未知の美しいものがたくさんあるので、もっともっと旅をして、より多くのものに触れたい。そういう気持ちは、諦めず持ち続けていたいと思います」

そういえば、今年の初夏に中谷さんが開設した公式インスタグラムへの投稿写真も評判を呼んでいます。住まいのあるオーストリア・ウイーンの風景や、旅で訪れた街でのワンシーン、匂い立つような自然の息吹が伝わる1枚……。中谷さんの目にとまった「美しいもの」の数々が、ひととき、心を潤わせ、和ませてくれます。
「ありがとうございます。でも、本当はあまり写真に頼らないようにしたいんですよ。これも京都での経験ですが、若かりし頃、乗り合わせたタクシーの運転手さんに『この街では写真を撮らないほうがいい』と言われたことがあるんです。風景にしても建物にしても美術品にしても、目の前に本物があるのだから、それを見てきちんと自分の心に焼きつけるように……と。ですから、写真を撮ることが目的にならないように、ということは、つねづね胸に置いています」

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INFORMATION/映画『総理の夫』

原作:原田マハ『総理の夫 First Gentleman』
監督:河合勇人
脚本:松田沙也
出演:田中圭 中谷美紀 貫地谷しほり 工藤阿須加 松井愛莉 片岡愛之助 余貴美子 岸部一徳 ほか
9/23より全国ロードショー

〈もしも私が総理大臣になったら、何かあなたに不都合はある?〉才色兼備で志の高い妻が日本初の女性総理に……。政界の荒波に立ち向かう夫婦の格闘と周囲との共闘をコミカルに描いた、(おそらく)近未来の物語。田中圭さん演じる、気弱だが心優しい夫・日和は「妻に嫉妬やライバル心を抱かない、働く女性にとって理想的な存在だと思います」と中谷さん。貫地谷しほりさん演じるシングルマザーの秘書、ゴッドマザーとして君臨する義母役の余貴美子さんとの女性同士の連携も見どころ。

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PROFILE/中谷美紀(なかたに・みき)

1976年東京都生まれ。近年の出演作に、Netflixオリジナルシリーズドラマ『Followers』、TBS金曜ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』など。オーストリアでの日々を綴った日記エッセイ『オーストリア滞在記』(幻冬舎文庫)も好評発売中。公式インスタグラムアカウントは@mikinakatanioffiziell

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絢香「『I believe』でデビューできてよかった」15年間を振り返る|インタビュー

photograph:Akinori Ito(aosora)
styling:Miho Okabe
hair & make-up:Eri Shimoda
text:Michiko Otani
大人のおしゃれ手帖 2021年10月号

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web edit:FASHION BOX

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