知っておきたい60代の「フェムテック」
数年前に私たちの耳に飛び込んできた「フェムテック(※1)」という言葉は、女性特有の健康に関わる新しく誕生した造語です。若い世代の雑誌やSNS などで話題になっているので、知っている方もいるでしょう。
また、『素敵なあの人』読者世代には関係ないわ! なんて方もいらっしゃるかもしれません。
でも「関係ない」なんて思わないでください。実はとても役に立つものなのです。
宝島社ではフェムテックプロジェクトを発足しました。
『素敵なあの人』でも、今後何回かにわたり、より快適に過ごすための「フェムテック」を取材します。
ということで、第1回目を始めます。ドキドキわくわくしながらお読みください。
※1 Female(女性)+Technology(技術)の造語で、女性特有の健康問題やライフステージの課題を、技術で解決するアイテムやサービスのこと。日本では、女性のための商品やサービスだけではなく、ムーブメントを指してフェムテックと言われることもあります
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60代の女性の体になにが起こる!?
「フェムテック」という言葉が誕生する前から、女性特有の健康に関わってきた女性医療ジャーナリストの増田美加さん、女性医療クリニックLUNAグループ理事長の関口由紀さん、美容家・メノポーズカウンセラーの吉川千明さんの3名に集まっていただきました。フェムテックについて、さらには閉経後の60代女性の体に起こるあれやこれやを鼎談形式でお届けします。
ところで「フェムテック」ってなんのこと?
60代の私たちにどう関係しているの?!
閉経後の女性の不調はGSM(※2)に注目!
※2 閉経後の女性の2人に1人が悩む、泌尿器と生殖器にさまざまな不快症状が多岐にわたって起こる疾患がGSM(Genitourinary Syndrome of Menopause=閉経関連泌尿生殖器症候群)。代表的な症状は、尿もれ、頻尿、再発性膀胱炎、外陰部や膣の乾燥、かゆみ、痛み、性交痛など
増田 人生100年時代のいま、フェムテックがすごく注目されていますね? 女性の健康問題をテクノロジーで解決する新しいアイテムやサービスがたくさん出てきました。
吉川 フェムテックは月経がある若い世代のものだという印象を持っている人もいると思いますが、私たち閉経以降の女性の不調を解決するものもありますよね?
関口 そのとおり! まだ主流は、月経がある世代の月経トラブルや妊娠・出産、不妊、セクシャルウエルネス系のものですが、閉経後の尿もれ、頻尿や膣の乾燥、かゆみ、痛みなどのGSM関連も増えてきていますね。
増田 女性は、閉経すると女性ホルモンが一気に減少するので、これまで女性ホルモンが守ってくれていた部分のバリアが外れて、以前とは違う不調や病気が出てきますよね(下記のグラフ参照)。泌尿器や生殖器系のさまざまな不調が起こるGSMは、まさに私もいま、経験しています。でも、閉経後の女性の不調は、それだけではないですよね?
関口 エストロゲンが少なくなることで、更年期障害に代表されるほてり、発汗、のぼせなどの自律神経失調症状やメンタル症状(うつ、不眠)もそうです。さらに、閉経後は骨(骨粗しょう症や関節痛)、血管、筋肉、脳にもさまざまな影響が出てきます。
吉川 血流が落ちて体温コントロールが難しくなって、すぐに冷えたり。すると肩こり、腰痛が起きやすくなったりします。それから、お肌や粘膜が乾燥して弱くなったり、髪の毛が細く抜けやすくなるのも、爪が脆くなるのも、閉経以降ですね。
増田 血糖値、悪玉(LDL)コレステロール、中性脂肪、血圧が上がってくるのも、閉経してからです。健康診断でこれらの数値が悪くなっていると、「いままでと同じ生活習慣をキープしているのになぜ?」とおっしゃる方がいますが、閉経前と同じだと、どうしても生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、高血圧、メタボリックシンドローム)のリスクが上がってしまいますね。
閉経後に起こる不調は、フェムテックで解決できることも多い!!
気象病予報や生活習慣病予防アプリも
関口 私は今後、閉経後の女性の不調や健康問題を解決するエイジドフェムテック(※3)はすごい市場になる!とワクワクしています。女性は気圧の変化で不調が出る気象病の人もいて、気象病対策アプリ(※4)もあって注目しています。
※3 更年期、閉経以降の女性向けのフェムテックのこと。月経周期のある女性向けのフェムテックだけでなく、今後、エイジドフェムテックのマーケットが拡大していくことが、人生100年時代の女性の健康問題を解決するために重要
※4 気圧の変化が引き金になり、頭痛など体調を崩す気象病。「頭痛ーる」は気象予報士が監修する気圧予報アプリで、予報を通じて頭痛が起こりそうな時間帯を確認したり、痛みや服薬の記録ができるので、日々の体調管理に役立ちます
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増田 生活習慣病リスクが上がると、脳卒中や心筋梗塞という命にかかわる怖い病気になってしまいますから、食事と運動でケアしたいです。生活習慣病予防アプリや血糖値を自分で測れるアプリなどもありますね。
吉川 私はホルモン補充療法(HRT)や漢方薬で、閉経以降に起こる不調をケアしています。骨粗しょう症やメンタル系の病気の予防にもなりますし、肌や粘膜にもいいですよ。
関口 GSM関連で言えば、セックストラブルを訴える人は、スペインでは約80%、米国では約50%。日本では約5%と国別・文化別で極端に数字が違います。ですが、いくつになってもセックスを楽しみたい女性向けのプレジャートイなどのアイテムはいろいろ販売されていますね。
増田 だから海外のフェムテックグッズは、セックストラブル解消系が豊富なのですね。日本は尿もれ、頻尿系が多いですね。
吉川 私の尿もれは、一時深刻でした。膣を緩めたり締めたりする「骨盤底トレーニング」や尿を溜める「膀胱訓練」も行ったけれど、2年前は、厚めの尿もれパッドをしないと心配になっちゃうくらい。でも、「β3刺激薬」と「抗コリン薬」という尿もれのお薬を一緒に飲んでだいぶよくなりました。もしも、これ以上悪くなったら、関口先生にボトックス注射を膀胱壁に打ってもらおうと思っています。
関口 尿もれ治療に、「ボトックス膀胱壁注入療法」は、保険適用になっていますから、吉川さん、ぜひ来てください。
増田 「尿もれパッド」や「吸水ショーツ」も改良型でいいものがたくさん出ていますね。
関口 尿もれ対策のパッドやショーツは、いつもつけるのではなく、映画やコンサートのときだけとか、自分でルールを決めて使うといいと思います。ケアや治療と組み合わせることをおすすめしたいです。
吉川 婦人科や女性泌尿器科、女性内科など、女性外来のかかりつけ医を持っておくと、すごくいいと思います。私も閉経以降のフェムゾーンの相談にのってもらっています。
膣が萎縮して乾く人と緩んで広がる人
増田 私のGSMの症状は、頻尿と、膣や外陰部の萎縮と乾燥、ヒリヒリ感です。サドルが痛くて自転車に乗れなかったり、トレーニングウェアが食い込んで痛かったり、とても不便でした。乳がんを経験しているから、ホルモン補充療法(HRT)はできないので、「モナリザタッチ®」(※5)というCO2レーザー治療をしました。3回行ったら、腟萎縮による乾燥や痛みがかなりよくなっています。それから、「フェムゾーン用オイル」を使って保湿と「膣マッサージ」を入浴後、毎日しています。
※5 GSMなどの女性特有の不快症状を緩和するために開発された膣レーザー治療。顔のリフトアップやたるみ改善に使われているフラクショナルCO2(炭酸ガス)レーザーを膣壁に照射。ふっくらとした潤いのある膣になり、膣萎縮による不快症状を軽減すると言われています
吉川 磁気の椅子に座って骨盤底の筋肉に刺激を与える「磁気刺激療法」も頻尿、尿もれにいいですよね。自宅でできる「骨盤底を鍛えるクッション」もいろいろ市販されていますね。
関口 増田さんはGSMで粘膜が弱い萎縮タイプだけど、もう一方で、骨盤底の筋肉や靭帯が弱い骨盤底障害タイプの人もいて、膣が緩んで締められないので、骨盤臓器脱(※6)になってしまう人が10人に1人、いるんです。
※6 経膣分娩をした約3割の人が起こすと言われています。子宮、膀胱、直腸、小腸などの骨盤内の臓器が下がってきて、膣から出てきてしまう病気。尿もれ、頻尿、排尿困難などが合併することもあり、立っていると下腹部に引っ張られるような不快感や痛みがある人も
吉川 膣から子宮や膀胱、腸が出てきてしまうんですよね。
増田 子どものころ、お風呂屋さんでおまたからマンゴーの小さいのがぶら下がっている年配の女性を見たことがあります!
関口 出産や加齢、肥満で骨盤底筋群の深層筋やじん帯、筋膜が傷つき、緩むことが原因です。重いものを持ち上げる仕事や慢性便秘で、腹圧をかけて骨盤底に強い負荷が加わるのも原因になります。
増田 臓器が膣から出てくる前に、気づくことはできないのでしょうか?
関口 初期は無症状ですが、膣口に指を入れて触れる感じがあれば、落ちてきている可能性大です。まずは自分で押し戻す。そして便秘を解消し、骨盤底トレーニングをする。それでも改善しなければ、女性泌尿器科や婦人科を受診してください。「骨盤底サポーター」や膣に入れる「リングペッサリー」、手術という方法もあります。
増田 寿命が延び、閉経後不調と向き合う時間が長くなったけど、さまざまなエイジドフェムテックが助けてくれそうですね。
吉川 昔は人生60年だったのですから、私たちはいまおまけの人生を生きているんです。フェムテックに助けてもらいながら、ケアを怠らずに自分らしい人生を楽しく生きていきたいですね。
取材をもとに編集部が選びました
フェムテックアイテム
顔からデリケートゾーンまで保湿ケアできるオイルセット
<乾燥対策>
関口先生監修。女性ホルモン様抗酸化物質を配合したLUNA PRIDEスキンプレミアム。皮下組織のコラーゲン量を維持するエストラジオールを配合したホルモードモアゴールドミニ。
緩んだ骨盤底筋群を座りながら引き締める
<筋トレ>
骨盤底筋の筋力トレーニングに。椅子の上にポールを置いてまたがり、骨盤を立てるように座るだけで正しい姿勢に導きます。エクササイズを取り入れるとより効果的。
頻尿や骨盤臓器の下垂が気になる骨盤臓器脱の症状対策に
<骨盤底筋サポート>
緩んできた骨盤底筋を支えて、骨盤臓器の下垂を防ぐ一般医療器具。メッシュのストレッチ素材で動きやすく、下着の上からはける手軽さも人気のサポーターです。
水分をサッと吸水するシートがおしゃれに進化
<尿もれ対策>
下着に響きにくい薄さ1.5㎜で、防臭効果を備えたちょいもれ用シート。買いにくさを解消したデザインも嬉しい。微量用のほかに少量用と中量用もあります。
教えてくれたのは……
増田美加さん(写真右)
【Profile】
女性医療ジャーナリスト
当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、がんの啓発活動を行う。著書に『もう我慢しない! おしもの悩み~40代からの女の選択』(オークラ出版)ほか。
関口由紀先生(写真中央)
【Profile】
女性医療クリニック LUNAグループ理事長
女性泌尿器科医としてフェムゾーンケアの第一人者。医学博士、横浜市立大学客員教授、日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本性機能学会専門医、日本排尿機能学会専門医。著書に『女性の劣化をくいとめる ちつのケア』(PHP研究所)、『セックスにさよならは言わないで』(径書房)ほか。
吉川千明さん(写真左)
【Profile】
美容家・メノポーズカウンセラー
コスメのみならず、女性医療、植物療法、漢方、ファッション等、女性達のナチュラルでヘルシーなビューティとウェルネスをサポート。更年期と加齢のヘルスケア学会認定メノポーズカウンセラー。
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撮影_古家祐実[SORANE]
取材・文_増田美加
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
(『素敵なあの人』2022年3月号)
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