老化速度にブレーキをかける12の新習慣
いつまでも元気に若々しくいたい。そのために続けている習慣も、実は間違っていたり、「悪い習慣」と考えられてきたことが、最近の研究で「体にいい」とわかってきたものもあります。あなたの習慣、もう一度見直してみませんか? 白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生にお話をお聞きしました。
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食生活
『大人のおしゃれ手帖』世代にとって、体にいい食生活は基本中の基本。研究は日々進み、もっと手軽に効率的に老化を防ぐ方法がわかってきています。情報をアップデートしてできることから取り入れてみましょう。
1:空腹の時間に“若返り遺伝子”が活性化!
「若返り遺伝子」という夢のような遺伝子が近年発見されました。この遺伝子は誰もが持っていて、体をサビつかせる「活性酸素」の働きを抑えたりするのですが、普段は働いてくれません。スイッチがオンになるのは空腹時。飢餓状態になると体を守るためにこの遺伝子が活性化するのです。週に一度の「プチ断食」などはおすすめです。
2:プチ断食時の朝食はコーヒーにココナッツオイルを溶かして
1でおすすめした「プチ断食」ですが、手軽にできるのは、食事の間を15時間空けるというもの(下図参照)。ただ、朝食を抜くと、空腹で昼食をとるために血糖値が急激に上昇。体に悪影響も。そこで朝食代わりにココナッツオイルコーヒーをとることをおすすめしています。ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸は、肝臓で分解されて良質なエネルギーになるので、体に負担をかけず、空腹感も感じにくくなります。
食事の間を15時間空ける
[PM 9:00]夕食 就寝3時間前までに食べ終える
↓
[AM 0:00]就寝
↓
[AM 7:00]起床・朝食(ココナッツオイルコーヒー)
↓
[PM 0:00]昼食(野菜から食べ始め、大豆や卵、肉などのタンパク質もとる)
↓
[PM 3:00]おなかが減ったらココナッツオイルコーヒーを
↓
[PM 9:00]夕食
作り方は簡単で、ブラックコーヒーに大さじ1杯のココナッツオイルを溶かすだけ。中性脂肪をつきにくくするのでダイエットにも◎。
3:体によい食材は色でわかる!「レインボーフーズ」を取り入れて
最近耳にするようになった「フィトケミカル」。野菜や果物に含まれる「色・香り・苦み・辛み」などのことで、植物が紫外線や有害物質から身を守るために作る成分です。「β-カロチン」や「イソフラボン」、「ポリフェノール」などが有名で、わかっているものだけで約1万種類! 何をとったらいいか迷う人は「色」で考えてみて。赤、黄、緑、茶、紫、黒、白の7色で、組み合わせてとることでより効果が高まります。
ブロッコリーの「スルフォラファン」、紫キャベツの「アントシアニン」などもよく知られるフィトケミカル。
4:糖質のとりすぎに注意。「糖化」は老化の原因に
老化の原因として注目を集めているのが「糖化」。小麦や白米、白砂糖など精製された食材に多い「糖質」はとりすぎると高血糖状態が続き、血管などを傷めます。そればかりか、体内でタンパク質と結びつき(糖化)、進行すると変性してAGEs(終末糖化産物)となって体内に蓄積されます。糖質のとりすぎに注意するほか、血糖値を上がりにくくするよう、食べる順番を工夫したりするのが◎。最初に野菜やきのこ、海藻など食物繊維が豊富な食品、次いでタンパク質、最後に糖質とするだけで、血糖値は急激に上がりにくくなります。
5:「毎日パン」は見直しを 全粒粉のタイプも注意が必要
「朝食は食パン」も見直したい習慣。パン類は血糖値が上がりやすい食品であるうえ、「グルテン濃度」が高いためです。グルテンとは、麦などの穀物の表面にあるたんぱく質の一種ですが、グルテンのアレルギーで腸に炎症を起こしたり、脳の働きが鈍くなる、という報告もあります。「全粒粉ならヘルシー」と思われがちですが、最近の品種改良された麦類はグルテン濃度が高いので全粒粉でも要注意。パンは常食を控えたほうがいいでしょう。
6:「糖類ゼロ」でも血糖値が上がるものがある
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった食品をよく目にします。糖質のとりすぎや肥満が気になる人は手が伸びそうですが要注意。たとえば、スクラロースという人工甘味料は血糖値が増えるというデータもありますし、そのほかの人工甘味料も腸内細菌に悪影響を与え、太ることもわかってきています。甘みは、人工甘味料や白砂糖ではなく、きび糖や黒糖、天然のハチミツ、料理ならば甘酒やみりんで足すとよいでしょう。
7:肉や油は“生活習慣病のもと”ではない。選び方次第で“健康のもと”に
「一汁一菜」の粗食が理想の食と推奨されてきました。ところが長寿の研究が進むにつれ、健康で若々しい高齢者は、肉をしっかり食べ、油を積極的にとっていることがわかりました。また「油は太るからとらない」のもNG。『大人のおしゃれ手帖』世代が“油抜き”すると、肌に弾力がなくなったり、便通が乱れがちに。油はこめ油、ごま油、オリーブオイルなどを、酸化させないように使いきれる少容量のものを選ぶように心がけて。
8:気を付けたいのは塩分より市販のドレッシングやタレ
「塩分のとりすぎに注意」。もはや常識と思われる減塩の習慣ですが、実は一概には言えません。確かに「精製塩」はやめるべきですが、近年の研究では天然塩ならば血圧上昇には影響せず、海水のミネラルが豊富で体によいので神経質にならなくてもよい、という説も。むしろドレッシングやタレなどに含まれるアミノ酸や甘味料のほうが、血糖値を急上昇させるなどの心配があります。購入時は成分表示をきちんとチェックしましょう。
9:スパイスと発酵調味料で“おいしく”ヘルスケア
料理の味わいをランクアップさせるスパイスには、老化シグナルを遠ざける働きもあります。たとえば、にんにくやショウガ、唐辛子など体を温めるスパイスは、消化を促して代謝をアップ。ヒハツ(こしょうの一種)は血圧を下げ、シナモンは血糖値をコントロールする効果も期待できます。塩麴には活性酸素を中和させる成分が含まれていて、体内のサビつきを防止。料理の下味に使ったりして、上手に取り入れて。
10:日本が誇るスーパーフード“納豆” ごはんは冷ますとなおよし
「1日1パック食べるだけで医者いらず」と言わしめる納豆。朝食は毎日納豆ごはん、という人も多いと思いますが、ちょっとした注意が必要。それはごはんの温度です。炊きたてのごはんの温度は一般的に65~80℃ですが、血液をサラサラにする納豆の成分「ナットウキナーゼ」は65℃で変性、70℃で死滅します。ごはんを冷ましたり、溶き卵を先にごはんに加えて温度を下げれば、納豆のパワーをより生かせます。
温度で栄養価が変わるそのほかの食品
[しめじ]
冷凍保存がおすすめ。凍らせることで血中コレステロールを下げる「グアニル酸」などが活性化。
[梅]
梅干しに含まれる「バニリン」という成分は脂肪燃焼や肥満防止に効果あり。加熱によって効果もアップ。
[卵]
卵黄に多いビタミンB群やレシチンは加熱に弱く、生の卵白に含まれる「アビジン」は、肌や髪によい「ビオチン」の吸収力を下げる。卵白には火が通り、卵黄は生に近い温泉卵は理想的。
11:玉ねぎは切り方次第で体によい成分が活性化する
夏バテなど、疲れたときにおすすめの食材が「玉ねぎ」。玉ねぎの辛み成分である「含硫化合物」は、体内でビタミンB1と結びついて「アリチアミン」という疲労回復成分になるからです。この含硫化合物は、玉ねぎの細胞を切断するように薄く刻むと活性化してより力を発揮。なお、辛みを抜くために水にさらしたり、塩でもんだりは×。成分が流れ出ないようそのまま15分ほど置いて。辛みは気にならなくなります。
切り方などで栄養価が変わるそのほかの食品
[ごま]
食前にするのがおすすめ。硬い皮に覆われているため、そのままだと栄養素が吸収されず排出される。
[ピーマン]
縦に切るのが◎。輪切りにすると細胞がつぶれて「クエルシトリン」という高血圧を予防する物質が逃げてしまう。
[だいこん]
おろすと、特有の辛み成分「イソチオシアネート」という成分が活性化。殺菌効果や抗酸化作用が期待できる。時間がたつと蒸発するため、おろしたてが◎。
12:熟したトマトのほうがリコピンは豊富。水煮缶も吸収率がいい
抗酸化物質として有名な「リコピン」。赤い色素なので、トマトを選ぶときも「赤く熟れたもの」を選んだほうがベター。熟れていない場合は、冷蔵庫や野菜室ではなく19~25℃の室温で追熟を。リコピンは熱しても成分が壊れることはなく、火を通すと吸収率がアップします。なので、水煮缶やトマトジュース、トマトピューレなどでもOK。生のトマトにはビタミンCなどもたっぷりなので、上手に使い分けて。
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教えてくれたのは……白澤抗加齢医学研究所所長 白澤卓二先生
【PROFILE】
抗加齢学、長寿研究、認知症が専門の医学博士。お茶の水健康長寿クリニック院長。各メディアで活躍し、近著に『「一生老けない」にいいこと超大全』(宝島社刊)ほか著書は300冊におよぶ。
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photograph:Shin Kimura
styling:Asuka Ishii
text:Sachiko Tamura
thanks:UTUWA
(大人のおしゃれ手帖 2022年7月号)
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