最近ヒットしている商品の中には我々の想像をはるかに超えたモノも存在。開発担当者はいかにして斬新なアイデアを大ヒットに導くのでしょうか? 今回は、出張族の間で話題になったネックピローになるジャケットの開発エピソードを紹介します。
枕になるとは思えない! 伸縮性に優れたおしゃれなニットジャケット
シンプルなデザインにパッチポケットを装備したニットジャケットは、ビジネスだけでなくカジュアルにも着回せる。軽量で伸縮性にも優れ、家庭で洗えるウォッシャブル機能も付く。
クリスチャン オラーニ
ネックピロージャケット
¥12,000 洋服の青山 池袋東口総本店
TEL03-5952-7201
わずか約1分でネックピローにフォームチェンジ!
1.袖を裏返し、背裏の収納部分から手を入れて、袖口と前身頃の裾をつかむ
2.つかんだまま引き出すように裏返す
3.反対側も同じように行い、スナップボタンを留めるとネックピローに変身!
開発担当者に聞いてみた! ネックピローになるジャケット誕生の裏側!
答えてくれた人
瀧定名古屋株式会社 紳士服53課 主任 金田将二郎さん
青山商事株式会社 第一商品部 マネジャー 宮園考大さん
<パッカブル+移動中に脱いだジャケットがヒントに>
アイデアが浮かんだのは「パッカブルジャケットを応用して新しいものができないか」と、雑談しながら考えていたときです。出張で新幹線や飛行機に乗ったとき、脱いだジャケットを棚の上に置いたり、フックに吊るしたり、置き場がなければ畳んでカバンに収納したりしていることを思い出しました。脱いだジャケットがネックピロー(枕)になれば、置き場に困らないし、快適にくつろげる。わざわざネックピローを持って行く手間も省ける。「あれっ、これって超便利かも」「このアイデアを製品化したい」と思い立ったのが始まりです。
背裏部分を利用してネックピローにする、というゴールは初めから決めていました。完成までにたくさんの試作品を作りましたが、当初は、収納はできてもネックピローの形状にはほど遠く、座布団にしか見えませんでした(笑)。一番時間を費やしたのは、ネックピローになるくりの形状と背裏の形状のバランスを考慮することでしたね。
ターニングポイントとなったのはテキスタイルの国際展示会で、縦横に伸縮性があり、独特なふくらみ感と、肌触りのいい素材を見つけたことです。素材の伸縮に追随できるよう糸をストレッチ糸に変え、背裏を留めるボタンをスナップボタンに変更しました。ネックピローにしたときに汗をかくことを想定し、背裏部分に抗菌加工も施しました。こうして一歩ずつ試作品をブラッシュアップしている途中に、洋服の青山さんに興味を持っていただき、「ぜひ商品化しましょう」と言っていただけたときは本当に嬉しかったですね。
すぐに社内にチームを作り、製品化に向け本格的に始動しました。洋服の青山のジャケット部門バイヤーの宮園さんと打ち合わせを重ねて、ウォッシャブルや防シワなど様々な問題を解決していき、試作品第10号目前で、ようやく商品化に至ったのです。
<誕生までに10種近くの試作品が!>
完成までに何度も試作サンプルを製作。試作品第1号では座布団にしか見えなかったというネックピローも、写真の第3号ではネックピローにすることを前提に背裏をデザインし大きく前進したという。
(MonoMax編集部)
取材・文/岡藤充泰(ライトアウェイ)、横山博之、髙橋政喜、金山 靖、富山英三郎
撮影/村本祥一(BYTHEWAY)、木村武司(BASK)、 中村圭介、尾島翔太、松岡 誠
スタイリング/小孫一希、近澤一雅
編/FASHION BOX
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