失恋ハイからのダウン。ボロボロになった私を支えたもの【ここからは、オトナのはなし】

女性の心の代弁者、人気作家LiLyの連載「ここからは、オトナのはなし」。赤裸々に語られる等身大の女性の結婚、恋愛、仕事、夫婦、セックス……。キラキラしたものとは違ったリアルなオトナの女性の姿がここに。

☆前回の記事はコチラ→「結婚を前提に同棲を始めた彼との新生活へのホンネ【ここからは、オトナのはなし】」

 

「だからいいのよ、今はそれで」と、私は続けた。

人生に変化が訪れるタイミングがくれば嫌でも自分が勝手に動いちゃう

「だって、どっちみち問題に直面せざるを得ない事件が起きたり、もうこのままでは心が限界だ!って感じる瞬間がくれば、状況は絶対に変わるから。と、いうかそういう時って火事場の馬鹿力みたいな“エネルギー”が湧き出てきて、気づけばそれに突き動かされるように自分が状況を変えているのよ。必要に、迫られて。
だから今は、流れに身をまかせる時期なのかも。モヤモヤしながらも、彼が家にいることで寂しさが癒されている部分も、経済的にたすかってる部分も今はまだ少なからずあるわけだから。その証拠にCは疲れてはいても、ちゃんと仕事にも行けているわけだし」

「うん、そうね、そこよね。ちゃんと朝起きて、電車に乗って、仕事には行けているってのは、私には本気で大事な基準ラインだな。鬱と診断されたわけではないけど、精神的なストレスから会社を休んじゃっていた時期が去年あるから、それはすごく思う。心と体って、本当に繋がってるんだよね」

本当に、本当にそうなのだ。でも、心と体は、反応に時差があることも多い。
「実は、さっきの“人生に変化が訪れるタイミングがくれば嫌でも自分が勝手に動いちゃう”という話にも繋がるんだけどね」と前置きしてから私は続けた。

あの破局は思っていた以上にとっても傷ついていたし悲しかったんだなって

「私、この夏、突然40度の高熱を出して倒れたでしょ?その時に心と体のつながりと、その時差を全身で感じたの。恋人と別れた後、ずいぶんとハイになってたのよ。徹底的に傷つけ合い終わった直後には、もう一時的になんだかものすごく元気になっちゃって。濃厚な恋愛から解放された数年ぶりの精神的な自由も、とても新鮮で。会ってはいないけど夜に時々電話をしている元恋人が、“ん?リリィ、カレシできた?”ってなるくらいケロッと破局を“秒”で乗り越えていたの。

で、その数カ月後に突然の高熱。40度なんて、オトナになってから初めてだったと思う。死ぬかと思うほど辛い中、病院で点滴されている状態になって初めて気づいたの。
あぁ、あの破局は私にとって、一時的にハイになってしまうほど大きな出来事で、実際は思っていた以上にとっても傷ついていたし悲しかったんだなって。衝撃が強い出来事が起きた時、アドレナリンだかドーパミンだかが出ちゃう時ない?私はそういう体質みたいで、ハイになったことで疲れや痛みの感覚が麻痺していた。倒れるまで気づかなかった。体は、悲鳴をあげていたみたい。

そこからはもう、普段からあまり人に会わない私が徹底して引きこもり。子どもたちも夏休みだったから、学童にも行かせずにずっとみんなでダラダラくっついて過ごした。
改めて思った。私の基準ラインは子どもなんだね。なんだか気づけば私自身はボロボロになっていたけど、子どもたちは今日も笑顔で生きている。私も笑顔で彼らに接することができている。だから大丈夫!私は大丈夫!って、自分に言い聞かせるように1日に何度も何度も思ってた……」

「あぁ、その自分に言い聞かせる感じも含めて、すごくわかる。今の私たちって、決して踏み外してはいけないラインを持ってるんだよね。それが大変でもあるわけだけど……」

〈続く〉

 

LiLy/作家

出典: FASHION BOX

81年神奈川県出身。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。この連載からの最新刊『目もと隠して、オトナのはなし』が好評発売中!プライベートでは2児の母。

(otona MUSE編集部)
text:LiLy
illust:ekore
edit:SATOKO ISHIKAWA[vivace], FASHION BOX
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