まもなくむかえる出産に向けて産休をとり里帰りしたり、自宅でのんびりくつろいだりと思い思いに過ごしています。開放感が得られるせいか、ついつい夜更かしや食べ過ぎてしまうことも…。安心したお産になるように、産休時期の過ごし方について伺います。
基本の生活習慣をいかに崩さないかが肝心
――産休中に気を付けることは何ですか?
「いちばんは生活リズムを崩さないことですね。妊婦さんの話を聞くと、最初の3日間が本当に嬉しいようで、『睡眠時間を削って2泊3日で韓国ドラマをみました!』とか、『ドラマを夜通し見てたら、夜中にお腹がすいてきておやつ食べちゃいました』など、今まで気を付けていた食事や睡眠などの生活リズムが崩れる場合が多いです。気持ちはわかりますけど、基本の生活習慣をいかに崩さないかが重要です」(三井先生)
――とくに食事に関してはコントロールするのが難しそうですね。
「働いているときは、規則正しい生活と仕事への多少の緊張もあるせいなのでしょうか、コントロールできる人がほとんど。ですが、産休に入った途端に急激に増えてしまう人が時々いますね。運動不足による体重増加も考えられます。臨月でもご自身のペースに合わせ、無理のない範囲で1日8000歩前後は歩くようにしてください。朝晩各1時間の散歩を目安にするといいですよ」(三井先生)
臨月の急な体重増加は様々な産科の病気の引き金に
――里帰りしている妊婦さんへのアドバイスは何でしょうか?
「実家に帰られる方は、食事や家事は自分でやらなくなってしまう方が多いので、お姫様のような存在に。お腹が大きくなっていますから、周りの方も“動いてはいけない”と思ってしまいがちですが、そんなことはありません。無理のない範囲でからだを動かすこと、そして食事のコンロールは律してください」(三井先生)
――臨月の体重増加はお産に影響しますか?
「臨月の体重増加は、両足(特に太股)の内側に脂肪が必要以上について産道に影響したり、妊娠高血圧症候群などリスクの高い状態が起こりやすくなります。1週間で2kg以上増えるのは要注意です。お腹に赤ちゃんがいるからといって、二人分食べる必要はありません」(三井先生)
いつも違う環境では料理の食材に気を付けて!
――里帰りすると普段あまり食べないものにも注意が必要だとか?
「久しぶりの帰省などいつもと違う環境で過ごしていると、普段食べない料理を出されることもあります。例えば親戚が集まって食卓を囲むと、ローストビーフや生ハムなどの料理が並ぶことがありませんか? みなさんおいしく食べていますが、これらの生の動物性の料理は、妊婦さんは食べられません。今まで気をつけていたのに、環境の変化によって忘れてしまうこともついありますから、食べ物はとくに注意しましょう」(三井先生)
産休中は食事や睡眠、運動など基本的な生活習慣がゆるみやすくなります。楽しむこと、くつろいで過ごすことはもちろん大事ですが、今までの生活と変わらないことを意識しながら、過ごしえてくださいね!
教えてくれたのは…国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 不育診療科 診療部長 三井真理先生
【PROFILE】日本大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。日本周産期・新生児医学会認定 周産期(母体・胎児)専門医・指導医。日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医・指導医。
取材・文=夏目 円
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