「疲れた時は甘いものが食べたくなる」という人は多いのではないでしょうか。肉体的な疲れもそうですが、とくに頭を酷使した時などは甘いものを食べると脳がスッキリするという人は少なくないようです。しかし、それは危険だと、高雄病院理事長の江部康二先生は言います。詳しくうかがいました。
≪目次≫
●人間はブドウ糖をつくることができる。疲れた時の甘いものは危険度大!
●糖新生を活性化させる
●教えてくれたのは……
人間はブドウ糖をつくることができる。疲れた時の甘いものは危険度大!
糖質をもとにつくられるブドウ糖は確かに脳細胞で大量に消費されます。脳細胞以外でも酸素を運ぶ赤血球や目の網膜細胞もブドウ糖を使いますし、そもそも全身の細胞はブドウ糖をエネルギー源としています。このことから「疲れたら甘いもの」という考えが生まれたと思われますが、そんなことをすればグルコーススパイク(※)を生じさせてしまうだけ。じつは人間の体はみずからブドウ糖をつくることができるため、甘いものをわざわざ摂る必要はないのです。そのしくみを「糖新生(とうしんせい)」といいます。
そもそも、人間の体は急激な変化を好みません。血糖値に関してもそれはいえることで、つねに一定の範囲内に収まるようにしているのです。頭を酷使するなどの理由でブドウ糖をたくさん使うと、それを補充するために糖新生が行なわれます。
(※)グルコーススパイク……空腹時と食後の血糖値の差が大きい高血糖状態を、その形状から「グルコーススパイク」と呼んでいます。スパイクとは「とがったもの」という意味。
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糖新生を活性化させる
糖新生を行なうのは肝臓。もともとこの肝臓にはエネルギー源の予備としてグリコーゲン(ブドウ糖の集合体)が備蓄されています。ブドウ糖が使われ、血糖値が下がると、この備蓄されたぶんが放出されます。
ただ、肝臓に蓄えられているグリコーゲンは少量なので、それではカバーしきれないことも。そういう時、肝臓はグリセロール(脂質の代謝物)やアミノ酸、乳酸などを使ってブドウ糖をつくり出すのです。これが糖新生のしくみです。
糖新生では脂肪が燃焼されることによって大量のカロリーを消費します。したがって肥満防止にもなるのですが、外部から糖質が摂り入れられると糖新生そのものが行なわれません。「自分でつくらなくても済むのなら、わざわざカロリーを使ってまで働くことはない」と肝臓が甘えてしまうのかもしれません。
逆に、糖新生の活性化をつね日ごろから意識すれば(糖質制限食を摂れば)、糖質のもたらす脅威から脳を守れることになります。
※糖質制限食が適さない人、および医師に相談が必要な人→
■血糖値を下げる薬を飲んでいる人や、インスリン注射をしている人は低血糖発作を起こす可能性があります。実施する場合は必ず医師に相談してください。腎機低下・機能性低血糖・糖質依存症がある人も医師に相談してください。
■肝硬変、急性または慢性すい炎の診断基準を満たす人、長鎖脂肪酸代謝異常症、尿素サイクル異常症がある人には、糖質制限食は適していません。
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教えてくれたのは……
江部康二 (えべ・こうじ)
【Profile】
1950年、京都府生まれ。京都市右京区・高雄病院理事長。数多くの臨床活動の中からダイエット、糖尿病克服に画期的な効果がある「糖質制限食」の体系を確立。ブログ『ドクター江部の糖尿病徒然日記』にて糖尿病や糖質制限食にまつわる情報を日々発信している。『「糖質オフ!」健康法 主食を抜けば生活習慣病は防げる!』(PHP文庫)、『内臓脂肪がストンと落ちる食事術』(ダイヤモンド社)など、多数の著書がある。
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(抜粋)
書籍『名医が考えた 認知症にならない最強の食事術』
著者/江部康二
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編集/株式会社クリエイティブ・スイート
編集協力/柚木崎寿久(オフィスゆきざき)
WEB編集/FASHION BOX
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