辛酸なめ子、電車内のソーシャルディスタンスから都会人の知恵を学ぶ?

辛酸なめ子、電車内のソーシャルディスタンスから都会人の知恵を学ぶ?

『steady.』で好評連載中の「辛酸なめ子の覗き見♡OL妄想劇場」。今回は日比谷線で見かけた和風美人女性の行動から感じたことを語ります。

≪目次≫
●マスクで小顔アピールしたり、様々な用途に使われるマスク市場
●地下鉄で目撃したマスク女子。スキがないファッションなのに言動に驚き
●PROFILE

マスクで小顔アピールしたり、様々な用途に使われるマスク市場

マスクの価格破壊が止まらない……。アベノマスクはまだ届かないのに、駅前のあやしげな雑貨店で売られているマスクが、前は50枚5000円もしたのに、数週間後は50枚1000円になっていました。安定した供給が持続すると良いのですが……。アベノマスクにも意外な使い道があり、小顔判定できるという説が。小さめサイズのアベノマスクをつけてみて、鼻から顎までカバーできたら小顔ということだそうです。安倍首相のように顎が出てしまったら、大きめということに。アイドルやアナウンサーの方々が、アベノマスクをつけた写真をアップし、小顔をアピールしています。

マスクは感染防止以外にもいろいろと使い道があります。女性としてはすっぴんで出歩けるという便利さがあります。いっぽうで、道でときどきマスクの下でひとり言をつぶやいている人も見かけます。先日は、自分の名前を連呼している男性とすれ違いました。マスクをしていると心が閉じ気味になり、自分の世界にこもりやすいと聞いたことがあります。現に私も、マスクの下でひとり思い出し笑いをしたりしています。外の世界にいても、パーソナルスペースに没入できるのは、メリットとデメリット両方ありそうです。今後、コロナが収束しても、マスクが手放せない人は増えそうな予感もします。自己防衛本能からマスクを外せないというのと、顔の下半身を露出することへの羞恥心が芽生えそうです。現に、マスクがズレて唇が見えた写真を有名人の女性が公開していましたが、モザイクをかけた方が良いと思えるくらいのエロさが……。今まで平気で顔全面を晒していたのが信じられない、という価値観になっていくかもしれません。また、行きすぎた衛生観念の反動で、汚れたものに興奮する人も出てきそうです。汚れたマスクフェチとか、日本人の性がさらにガラパゴス化していく危険性も。

でもとりあえずは、マスクで自分の殻に閉じこもらないように注意したいです。

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地下鉄で目撃したマスク女子。スキがないファッションなのに言動に驚き

先日仕事があり、地下鉄で六本木に行ったのですが、その帰りの日比谷線でのことです。平日の夕方、地下鉄はそこそこ乗客がいました。座席に座っている30代くらいの女性が目を引きました。おしゃれなスカートにトレンチコート着用。赤いアイシャドーでメイクも今風です。ブランドもののバッグを持った、スキがないキレイめ女子ですが、彼女が鏡を手に真剣な顔で励んでいたのは……なんと毛抜きで白髪らしきものを抜いていました。車内でメイクする人はたまに見ますが、白髪を抜く人ははじめてです。たしかに感染拡大防止や外出自粛で美容院に行けなくなって、白髪がレタッチできなくて困っている女性が増えていると聞きます。だからといってなぜ公共スペースである車内で……。マスクを取ったら和風美人っぽい彼女は、真剣な上目遣いで鏡を凝視。毛抜きで一本一本狙いを定め、着実に抜いていきます。

そんな彼女を、周りの人は見て見ぬフリ。それぞれがマスクを着用し、軽く心を閉ざしているようです。そしてその女性も、マスクをつけたことで匿名性を得て、人目が気にならなくなってしまっていました。美容院が閉まっているのが悪い、とばかりに白髪を抜く手を緩めません。白髪を抜くと毛根が傷つくのでやめたほうがいいですよ、と近付いて助言したくなってしまいますが、彼女は次々と4・5本くらい抜いていました。そして、もちろん抜いた毛は、その辺にバラまいていました。おしゃれな美女が、電車で白髪を抜き散らかしているなんて……コロナの影響の恐ろしさを実感します。古式ゆかしい和顔の女性が行っていると、呪術のようにも見えてきます。一本、二本、三本……と四方に白髪をまいて結界を張る儀式です。それによって自らが邪気やウイルスから守られるのかもしれません。そんな彼女の行状に気付いた乗客は、やっぱり近付きたくないので、自然とソーシャルディスタンスが保たれるという結果に。それも計算してやっていたのだとしたら、都会人の生き抜く荒技を教えられたようです。まさか新しい生活様式って、こういうことじゃないですよね?

辛酸なめ子、電車内のソーシャルディスタンスから都会人の知恵を学ぶ?
出典: FASHION BOX

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PROFILE

辛酸なめ子、電車内のソーシャルディスタンスから都会人の知恵を学ぶ?
出典: FASHION BOX

辛酸なめ子(しんさん・なめこ)

漫画家、コラムニスト。皇室、セレブリティ、スピリチュアルなどの分野に精通。著書は『女子校育ち』(筑摩書房)、『セレブマニア』(ぶんか社)、『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』(宝島社)など。『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)は、日本のカルチャー要素をキーワードに、漫画タッチで構成されています。ツイッターのシュールボイスもお見逃しなく。@godblessnameko

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steady. 2020年7月号
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WEB編集/FASHION BOX

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