『steady.』で好評連載中の「辛酸なめ子の覗き見♡OL妄想劇場」。今回は自粛前の新宿のカフェで見かけた、美容トークを繰り広げる男女を目の当たりにして感じたことを綴ります。
≪目次≫
●警察24時から万引き女子まで……都会に潜む治安の罠
●カフェで男女が美容トーク。次第にえげつない展開に……。
●PROFILE
警察24時から万引き女子まで……都会に潜む治安の罠
外出自粛していると刺激を求めたくなって警察24時的な番組を観てしまいます。コンビニでお気に入りの唐揚げが売っていなかったことでキレて暴れた男性とか、なぜか街で全裸で「もうがんばらな~い」と何度も繰り返していた男性とか、世の中にはこんなにやばい人たちがいると思うと、自分がまともに思えてきて少し励まされます。コスメショップに行った時、店内で万引きが発生したらしく、出動した警察官2名とエレベーターが一緒になりました。「トイレに品物を持ち込んだらしい」と報告しているのが聞こえてきてドキドキしました。それにしても気になったのが警察官の人件費です。一人の万引き犯のために2人も稼働して、盗んだものはせいぜい数千円程度だと思うので税金を使いすぎているような気が……。テレビごしに警察番組を楽しんでいましたが、実際の場面を目にすると、盗みはやっぱり許せないという思いが芽生えました。
ただ、人は何かのきっかけでダークサイドに落ちることがあります。先日、そんな危ういシーンに遭遇しました。
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カフェで男女が美容トーク。次第にえげつない展開に……。
自粛前の新宿のカフェでのできごとです。隣の席に座ったのは若い男女。女子はガーリーなスカートに威圧的なスニーカー姿。「軽く匂わせとこ」と言いながら男子がチラッと映り込んだパフェの写真を撮影。女子は、仕事場のおばさん社員がウザいという話をしていました。その合間に、ヒステリックな甲高い声で笑っていて、若さゆえの無敵感というかナメている感じが伝わってきて、隣にいて軽い恐怖を感じました。
「毎日服の感想を言ってきてウザい。パーテーションにスカートをかけてたら『このアコーディオンカーテン、なんなんでしょうね』とか、意味不明。あと『その服はスニーカーに合わない。そこはピンヒールじゃないと』とか言ってきたり」と、女子は小馬鹿にしたように語ります。
「スニーカーはやってるのにね」「マジレスしてもムダだから、『勉強になりま~す』って言ってる」「それは逆に煽ってるよ」。一見地味そうなルックスに見えて強気なのは、彼女が女子力に自信を持っているからかもしれません。
声をひそめて「彼に卒業アルバム見せてって言われたんだけど、整形がバレるから、どうしよう」と男友達に相談し、「卒業アルバム、引っ越しでなくしちゃったって言えば」「それいいね!」と、即解決していました。この2人は友だち同士で美容ネタが共通の話題のようです。ハセンアナを普通っぽくした感じの男子は「プラセンタでほうれい線が消えた」と語っていました。今気になるのは毛穴だそうです。「毛穴を閉じたい。めっちゃコンプレックス。お姉ちゃんにも毛穴開いてるねって言われた」と、溜息。毛穴が完全に閉じると、それはそれで発汗が妨げられそうですが……。「レーザー治療やりたい。クリニックの人も、今なら施術後しばらくマスクしていても目立ちませんよ、って言ってた」「私もやりたい。二重のローンはもう払い終わったから、めっちゃ涙袋入れたい」。整形に対しては何の抵抗もないようですが、何かと罪悪感も薄いようです。彼女は声をひそめて「パパ」という単語を発しました。いわゆるパパ活女子でしょうか。彼氏もいてパパもいるとは……。「パパにどうやって整形代出してもらおう」。すると、また男友達が悪知恵を伝授。「かわいい姿を見せたいって言えば。それか、『◯◯さんとごはん行く時、かわいい子連れてるって思われたい』って言えば。おじさん大興奮でしょ」「うまい。すごいね」。おじさんのことを思うと他人事ながら胸が痛いです。「ついでに、2人分も出してもらってよ。20万。どうせ値段の相場なんて知らないでしょ」と、男性は相談に乗ったかわりに毛穴レーザー代を出させようとしていました。「そうだね、言ってみる」。2人はおじさんからお金をせしめる算段で盛り上がっていて、人が闇落ちしていく瞬間を見たようでした。どんなに整形で表面を整えても、人相からにじみ出てくるものがあるのでは……。でもおじさんは、悪女っぽい子が好きで需要と供給が合っているのかもしれません。闇フェロモンにハマったら身ぐるみはがされる……そんな怖さを実感しました。
PROFILE
辛酸なめ子(しんさん・なめこ)
漫画家、コラムニスト。皇室、セレブリティ、スピリチュアルなどの分野に精通。著書は『女子校育ち』(筑摩書房)、『セレブマニア』(ぶんか社)、『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』(宝島社)など。『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎文庫)は、日本のカルチャー要素をキーワードに、漫画タッチで構成されています。ツイッターのシュールボイスもお見逃しなく。@godblessnameko
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WEB編集/FASHION BOX
(steady. 2020年6月号)
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