ナッツと聞いておつまみをイメージする人は、損をしているかもしれません。なぜなら、栄養価が高く、健康効果が期待されているからです。積極的に、毎日摂りたくなるその理由を慶應義塾大学医学部教授の井上浩義先生が解説します。
食物繊維はごぼうの2倍。大腸がん予防に
ナッツには、どのような栄養が含まれ、どんな健康効果が期待できるのでしょうか。
「まずは、食物繊維です。含有量は、アーモンドならごぼうの2倍。ご存じのとおり、食物繊維には整腸作用があり、便秘対策はもちろん、血糖値のコントロールなど、体内の環境を整えるキーとなる栄養成分です。ところが日本人、特に女性は、食物繊維が不足しています。1日の平均摂取量がドイツの40gに対し、日本はたったの16gと、世界的にも稀にみる低さ。一方、日本の女性の死因をみると、大腸がんがとても多い。これは、食物繊維の不足が密接に関係しています。大腸がんを予防するためにも、女性はあと3gは摂りたいところです。そこでおすすめなのがナッツ。アーモンドなら20〜25粒で約3gの食物繊維を摂れるので、3食の食材をあれこれ工夫するより、ずっと手軽ですよね」と、井上浩義先生。
量的にも、これなら無理なく食べられそうです。
「次にオレイン酸。オリーブオイルと同じオメガ9系脂肪酸で、悪玉コレステロールを下げ、血管を若返らせてくれます。抗酸化作用で知られるビタミンEも100g中30.3mgと豊富。体内が酸化すると血管、肌、脳と、あらゆるところが老化するため、アンチエイジング効果が期待できます。さらに、ナッツの皮には強い抗酸化作用のあるポリフェノールも含まれています」
ナッツは太るイメージがありますが、気になるカロリーは……。
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ナッツを食べるほどダイエット効果も期待大
「ナッツの成分の半分は油ですが、先ほどお話ししたとおりオメガ9系脂肪酸。習慣的に食べている人のほうがBMIが低く、ダイエット効果も期待できるという研究結果もあります。アーモンド25〜30粒は、コンビニのおにぎり1個とほぼ同じ約150キロカロリー。おにぎりには含まれない栄養を摂ることができるうえ、嚙み応えもあるので満足度も高い。食物繊維とポリフェノールが豊富な、高カカオのチョコレートでコーティングしたナッツは、理想のおやつですね。
抗酸化を期待するなら朝摂るのがおすすめですが、基本お好きなタイミングで構いません。ナッツの兄弟関係にある豆類のピーナッツは、食物繊維やビタミンEなどの含有量はアーモンドの80%程度と多少劣りますが、アーモンドより安価なのが魅力。ピーナッツの場合はその分、量を増やせばいいのです(目安は35粒)。ただし、ナッツもピーナッツも塩分のあるものは避け、素焼きタイプを選びましょう」
ここだけ注意
開封後は酸化しやすいので早めに食べきりましょう
オレイン酸は酸化しにくい油とはいえ、開封後、2週間程度で食べきるか冷凍するのがベスト。水分が少ないため解凍不要。食感も変わりません。
ピーナッツ、ナッツを食べる頻度が高い人はBMIが低いという結果も!
※米国看護師への調査
出典/JAMA.2002,288(20):2554-60.
ハーバード大学によるアメリカの看護師86,016人を対象にした大規模な調査では、ピーナッツやナッツを食べる頻度が高いほど、肥満度を表す指標(BMI)が低くなるという結果に。
【食べる頻度】ほぼ一度もない
【人数】29,899
【BMI】24.8
【食べる頻度】週1回から月1~3回
【人数】43,948
【BMI】24.3
【食べる頻度】週2~4回
【人数】7,746
【BMI】23.8
【食べる頻度】週5回以上
【人数】4,423
【BMI】23.4
教えてくれたのは……
慶應義塾大学医学部 教授
井上浩義先生
【PROFILE】
医学博士、理学博士。ナッツの有用性研究の第一人者として、メディアでも活躍。『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)など著書多数。
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イラスト/澤村花菜
文/諸井まみ〔TEAM Hi!〕
写真:StockFood/アフロ
(素敵なあの人 2020年12月号)
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WEB編集/FASHION BOX