インスリン分泌を促すホルモンを増やす! サバ缶納豆
メディアでも多く取り上げられ、話題になっている健康食品「サバ缶」。サバにはEPAやDHAが含まれており、それだけでも血糖値を下げる働きが期待できます。今回はさらに、栄養豊富な納豆を加えた「サバ缶納豆」のレシピと効果をご紹介。2つを一緒に摂ることで、さらなる健康効果が期待できるそう! 血糖値が気になる方必見です。
「サバ缶納豆」で血糖値の上昇を抑えて血流を改善
健康番組で盛んに取り上げられるなど、高い人気を誇る「サバ缶」。これに栄養成分が豊富な納豆を組み合わせた「サバ缶納豆」は、血糖値の上昇を抑えて血流を改善する効果があることから、医師からダイエットを指導されている糖尿病患者におすすめの食材となっています。健康食品としても注目されており、プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎氏も愛食しています。サバなどの青魚には、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)というオメガ3系の不飽和脂肪酸(常温で固まりにくい油)が多く含まれています。
サバ缶の「EPA」の働き
・インスリンの分泌を促すホルモンGLP-1を増やし、血糖値を下げる。
・血糖値を上げる物質グルカゴンの増加を抑制する。
■EPA・DHAのその他の働き
血液中の中性脂肪を減らす、善玉コレステロールを増やす、脳の満腹中枢を刺激し食欲を抑制する……など。
EPAは、「GLP‒1」(グルカゴン様ペプチド‒1)という、すい臓で生成されるインスリンの分泌を促すホルモンを分泌させ、血糖値を下げます。また、血糖値を上げるグルカゴンというホルモンの増加を抑えます。こうした点から、GLP‒1は糖尿病治療薬として診療に取り入れられています。
さらに、GLP‒1には脳の満腹中枢を刺激し、食欲を抑制し胃の働きも抑える作用があります。これは肥満だけでなく、食後血糖値の上昇抑制にも役立ちます。
また、EPAは脂質異常症や閉塞性動脈硬化症(足に生じる動脈硬化など)の治療にも用いられています。これは、EPAやDHAには血中中性脂肪を減らす一方で、善玉のHDLコレステロールを増やす働きがあるからです。そして、血流をよくする作用もあり、動脈硬化の予防・改善に役立ちます。
このように、EPAとDHAには非常に優れた健康作用がありますが、体内では生成できないので、青魚などから摂る必要があります。しかし、EPAは空気に触れると酸化しやすく、煮たり焼いたりすると流出してしまいます。そこでおすすめなのが魚の缶詰、なかでもEPAとDHAの含有量が最も豊富なサバ缶です。サバを新鮮なうちに加工しているので、酸化していないEPAとDHAを手軽にたくさん摂取することができます。
ちなみに、EPAとDHAの1日の摂取目安量は1,000mg以上ですが、サバ缶は1缶でそれをほぼクリアします。手軽に安価で入手できるので、栄養面以外でもメリットがたくさんあります。
「サバ缶納豆」にすれば、骨や筋肉を維持し、健康効果も得られる
サバ缶だけでも十分な栄養効果がありますが、これに納豆を加えて「サバ缶納豆」にすることで、さらなる健康効果が得られます。東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科特任教授の小田原雅人先生も、健康効果をより高める食べ方として、サバ缶納豆をすすめています。
「納豆に含まれる大豆の約30%が必須アミノ酸をバランスよく含む良質のたんぱく質で、糖質が比較的少ないため血糖の急激な上昇を抑制します。また、食物繊維、ビタミンB1、B6、B2も豊富に含み、ミネラルも豊富です。さらに大豆レシチンはコレステロールを低下させ、オリゴ糖は腸内細菌のビフィズス菌を増やす働きもありますし、イソフラボンは、エストロゲン様作用があるとされ、骨粗しょう症や更年期の不調に効果があるといわれています」
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納豆の降糖効果
・大豆たんぱくに含まれる「水溶性ペプチド」が、血液中の糖の吸収を促し、血糖値を下げる。
・「水溶性ペプチド」も、血糖値を上げる「グルカゴン」に働きかけ、血糖値の上昇を抑える。
・納豆を1日2分の1パック以上食べていると、循環器系疾患による死亡リスクが20%減。
また、納豆に含まれるナットウキナーゼという成分には、血管内で血栓を作りにくくする働きもあります。こうした抗血栓作用はサバ缶にもあるので、2つを一緒に摂ることで、ダブルの血液サラサラ効果を得ることができます。また、サバ缶と納豆はどちらも良質なたんぱく質なので、筋肉と骨の強化にも役立ちます。たんぱく質の摂取が不足すると、糖をエネルギーとして消費する筋肉量が減ってしまいますが、サバ缶納豆ならしっかりと補うことができます。
「骨ごと食べられるサバ缶は、納豆と同じくカルシウムが豊富です。サバ缶にはビタミンD、納豆にはビタミンKと、丈夫な骨を形成するのに必要な栄養素も含まれているので、骨密度を高め、丈夫な骨を作って骨折を防ぐのにも役立ちます」
サバ缶納豆では、納豆そのものの健康効果もしっかりと得ることができます。国立がん研究センターによる調査では、発酵性大豆食品を1日50g以上食べる群は、最も少ない群に比べて総死亡リスクが約10%低いことが明らかになっています。また、循環器系疾患に限れば、納豆を1日に2分の1パック以上食べていた群は、死亡リスクが20%低いことが判明しています。
サバ缶納豆の作り方
サバ缶納豆の作り方は簡単で、納豆1パックあたり2分の1缶分のサバを入れ、納豆のタレやしょうゆをかければOK。そのまま食べてもよいですが、ねぎや焼きのり、おろししょうが、酢、卵、キムチなどを入れてアレンジすると、味のバリエーションが増えます。健康効果も増すので、毎日の食生活に取り入れてみましょう。
参考文献:『TJ MOOK 体がよろこぶ感動の缶詰レシピ』小田原雅人監修(宝島社)/『糖尿病 高血糖・ヘモグロビンA1c・合併症 糖尿病治療の名医が教える最高の治し方大全 聞きたくても聞けなかった142問に専門医が本音で回答!』小田原雅人(文響社)
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教えてくれたのは……
東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科特任教授、国際医療福祉大学教授、山王病院内科院長
小田原 雅人(おだわら・まさと)先生
【Profile】
日本内科学会、日本糖尿病学会専門医・指導医。東京大学医学部医学科卒業後、英国オックスフォード大学医学部講師、東京医科大学病院副病院長などを経て2020年より現職。
TJ MOOK『薬いらずの特効法 血糖値を下げる50のコツ』
編集、執筆:株式会社はる制作室、真瀬 崇、坂本夏子、石野宏幸
執筆協力:常井宏平
撮影:中川晋弥
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WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト