『steady.』で好評連載中の「辛酸なめ子の覗き見♡OL妄想劇場」。今回は辛酸なめ子さんが公園で遭遇した数々の出来事を報告します。
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公園が活気づいているこの頃。換気しかないオープンな空間で自然を体感
都内の公園を訪れると、たくさんの人が出歩いていて、かなりにぎわっている印象です。お出かけしたいけれど、密閉された空間は心配……ということでしょうか。秋晴れの上野公園を歩いていたら、大道芸人の周りに70～80人の観衆が集まっていました。大道芸人にこんなに人が立ち止まっているのは珍しいです。イベントが中止になってしまいがちな昨今なので、人々は刺激を求めているのかもしれません。驚いたことに地べたに座っている人が数十人いました。コロナ禍で大道芸人の需要が高まっているのでしょうか。
その大道芸人は、物を高く投げてキャッチするという芸をしたあと、椅子を何脚か重ねてその上で脚を広げたり倒立して、拍手喝采を浴びていました。横で日本人女性と欧米人男性のカップルが見ていて、彼女は彼にこんなときに使う日本語を教えているようでした。「ビーケアフルは、気を付けて。ヘルプは助けて～」と、勝手に救いを求める設定にしていました。2人は密着しながら「オーマイガー」「すごいすごい」と、大道芸をエンジョイして去っていきました。大道芸は語学の勉強にも使えます。そして公園に行けば、何か非日常の体験が期待できます。前に上野公園で、ジョージという名の猿が、飼い主にけしかけられ、周辺の人にいたずらして遊んでいる場面に遭遇したことがありましたが、公園では珍しい動物と出合えることもあります。
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代々木公園で見かけたオウム使いの集団。人が集まるスポットに……
先日は、ベトナムフェスで盛り上がっている代々木公園で、人々が集まっているのを見かけて近づいてみました。「可愛い～」という歓声の中心にいたのは、オウムたちとその飼い主らしき集団。緑のオウム、白いオウム、そしてピンクとグレーの色合いが可愛いオウムなどがいて、集まった人々が撫でたり肩に乗せてもらったりしていました。「ビュルッ」という鳴き声もキュートです。つい私も腕を出して、ピンクのオウムを腕に乗せさせてもらったら、オウムが頭を左右に激しく振りだしました。飼い主のおばさんいわく、このオウムは人間が好きで喜んでいるしぐさだそうです。たしかオウムは寿命が50～60年。飼い主さんは見たところ70歳前後でオウムは14歳だとのことですが……100歳超えてもオウムと共に生き続けるという覚悟を感じさせます。ちなみにオウムはペットとしては高額なので、オウム同好会の皆さんは実は裕福な方々なのかもしれません。
オウムに引き寄せられて集まった若い女性の元に、どこからともなく緑色のオウムが羽ばたいてきて頭に乗っていました。スッと現れた、黒ずくめのオウム使いのおじさん。女子が盛り上がる姿を見てうれしそうです。その中のひとりの女性に、ひまわりの種を渡して口にくわえるように促しました。彼女は無防備にマスクを外し、言われるがままに種をくわえました。幼少期だったら人さらいに遭いかねない警戒心のなさです。「緩んでいます」という小池都知事の声がフラッシュバック。見ていると、彼女がくわえたひまわりの種をオウムがクチバシでくわえて食べていて、また歓声がわきあがっていました。オウムと口移し……そんな芸ができるとはさすが賢い鳥です。と、感心したのもつかの間、よく考えたらこの芸を仕込んだのは横でうれしそうにニヤついているおじさんです。オウムを溺愛していると思われるおじさんは、毎日のように口移しでエサをあげていることは想像にかたくありません。つまりこの女性は、オウムを媒介におじさんと間接キスをしたのです！ 彼女はその事実に気づいていないようで、楽しげな表情でしたが……。このところ「おじかわ」「おじキュン」ブームでおじさんの可愛さが話題になっています。でもおじさんは、相手を油断させておいて下心がたぎっている場合もありそうです。オウム間接キスは、おじさんが一枚上手でした。今、直接的な濃厚接触がしにくい中で、動物ごしの間接キスという新たなコミュニケーションの可能性が提示されたようです。彼女はこれを機に、人間では得られない、オウムとのキスの感触にハマってしまうかもしれません。屋外空間は人の心を開放的にさせます。
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PROFILE／辛酸なめ子（しんさん・なめこ）
漫画家、コラムニスト。皇室、セレブリティ、スピリチュアルなどの分野に精通。著書は『女子校育ち』（筑摩書房）、『セレブマニア』（ぶんか社）、『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』（宝島社）など。『辛酸なめ子の現代社会学』（幻冬舎文庫）は、日本のカルチャー要素をキーワードに、漫画タッチで構成されています。ツイッターのシュールボイスもお見逃しなく。@godblessnameko
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