【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方

女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方【ロングインタビュー】

『オトナミューズ』2021年2月号のカバーミューズは、宮沢りえさん

新しい年、新しい時代が始まる。激動の2020年が終わり、新しい年へ。そして占星術的にもこの号が発売される直前には、約220年続いた“土の時代”が終わり“風の時代”へと突入しました。価値観がどんどん新しくなるなかで、私たちはより“個”としてどう考え、どうつながり、生きていくかを問われている気がします。そんな節目にカバーを飾っていただいたのは、憧れの女優・宮沢りえさん。常に迷いなく自分の道を邁進しているように見える彼女の心のうちを今回はミューズのために語ってくれました。

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信念は「自分の直感や感情を信じて進めばいつかパッと道が開ける」

【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方
ロングドレス¥640,000(ヴァレンティノ/ヴァレンティノ インフォメーションデスク)

──2020年は激動の年だったことは前回もおうかがいしましたが、ちょうどこのタイミングでとてつもない転換期があるそうですよ。

2020年12月22日から変わるっていうお話、今日のスタイリングのときにうかがいました。そういうことに詳しくはないけど、すごく興味深いですよね。

──星の位置で決まる転換の節目は20年に一度あるそうですが、2020年のそれは220年に一度起きる大転換で。「土の時代」から「風の時代」に変わり、目に見えることよりも、目には見えない知性が重要になる、とのことです。

何か運命的なものは感じますよね。今私たちが置かれている状況は、本当につらく悲しいこと。私個人としてはやりたかった舞台ができなかったり、つらい現実を受け入れざるをえませんでしたが、そういうことがなかったら気づけなかったことはたくさんありましたよね。今までは曖昧にしていたこと……例えば自分にとって大事なものは何かとかを見つめ直し、大きく考え方を変えないといけませんでした。世の中はまだまだ不透明なことだらけですが、一方で自分の思考はクリアになりましたし、そういう意味では「目に見えないものを大事にする転換期」という考え方は合ってると思うんです。これまでも私は、岐路に立たされたとき、自分の直感や感情を信じて、それに沿って進めばいつかパッと道が開けると信じてたんです。そういう心の中の芯に、改めて向き合うことができた一年であり、そうして過ごすべき一年だったんだ、と思います。

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「私の強さのひとつって、出会いの運がとても強いこと」

【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方
ツイードトップス¥423,000、ツイードスカート¥620,000、パール付きベルト¥154,000、チェーンベルト¥706,000、バッグ[H15×W14×D14㎝]¥495,000(全てシャネル)

──自分の直感を信じることって、誰にでもできることではないと思いますが、そうやって信じられるようになったきっかけは? お仕事上で学んだ?

そうかもしれませんね。でも、今でもお仕事で悩むことはたくさんありますし、挫折してきた経験もいっぱいあります。私のお仕事って、自分の持っている力と、いただく仕事に対する能力が同等であることは、必ずしもないんですよね。それを補うために学ぶし、底力を出すし。若いころは、キャリアが浅い分、何もプレッシャーを感じずに勢いでやっていた部分もあると思うんですが、今はそうはいきません。そういったプレッシャーにはからまれたくないという気持ちがあるから、直感を頼りながらも、私自身は直線を歩んでいるのではなくクネクネしながら進んでいる感じなんです。でも、そんな私が信念を持てるのは、人のおかげです。私の強さのひとつって、出会いの運がとても強いこと、と思っているんですよ。例えば、今はこうすべきでここでこうしないと次は大変、というようなとき。そういうときに素晴らしい人と出会えているんです。それがあったから、私は自分の直感を信じられるようになっていったんだと思います。

──お仕事を選ぶ際も、直感と出会いを頼りにしてるんですか?

そうですね。まずは台本や企画として魅力があるもの、ということは条件になるんですが、それだけじゃない。何かひとつ、とてつもなく魅力があって、私が興味をそそられてしまうものがあったら、そこに直感的に飛び込んでいるんですよ。例えば監督や共演者、台本の中から読み取れるメッセージが社会的なものだったりすると、どんな企画だったとしても飛び込みます。まるで魚釣りのときに、大きな魚がエサに食いついて、シュッと引かれる瞬間のようにね。

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「リスクを考えて行動したことは一度もないんです」

【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方
ツイードトップス¥423,000、ツイードスカート¥620,000、パール付きベルト¥154,000、チェーンベルト¥706,000、バッグ[H15×W14×D14㎝]¥495,000(全てシャネル)

──まさに直感。

そう。昔、蜷川幸雄さんに「リスクを考えないで飛び込むんだね」って言われたことがあるんです。確かに、事前にリスクを考えて行動するということは、私の人生の中で一度もないんですよ。例えば、川で飛び石するときって、子どもはスパッと飛べるんだけど、ちょっと物心ついた年ごろ以上になると「あそこで滑ったら川に流されちゃうかも」っていう恐れを持って飛ぶから、本当にツルッと滑っちゃう。日常生活ではよくやらかしてる失敗ですが、仕事の上では一度もないんですよ。

2020年は「自分のなかにある“芯”を整える年に」

【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方
ドレス¥235,000、シューズ¥109,000(共にジル サンダー バイ ルーシー&ルーク・メイヤー/ジルサンダージャパン)

──直感で道が開け、もちろんそのための努力も必要だけど、自分を信じることから始める。これって、話が戻りますが、例の大転換で言われていることですよね。目に見えないものを信じるっていう。

そうなんですよね。しかも、2020年は誰にでも自分や自分の周りのことを深く考える時間がありましたから、世の中の流れが変わる前に、一度立ち止まりなさい、ということだったのか、とも思ってしまいます。私はワーカホリックとまではいかないまでも、まだまだ学びたいことがたくさんあるし、これまでできなかったことをできるようになりたいという気持ちをずっと持ち続けていて。それが原動力になっている半面、追われてしまうところもあったんです。それが自分に向き合うことで、自分のなかにある「芯」みたいなものを整える年になったんですよね。

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「通り過ぎていく時間をちゃんとつかんで読む」ことが大切

【インタビュー】女優・宮沢りえが語る、岐路に立たされたときの乗り越え方
ドレス¥235,000(ジル サンダー バイ ルーシー&ルーク・メイヤー/ジルサンダージャパン)

──来るべきときに、自分を見つめ直す時間が来てしまった、という感じですよね。でも、先のことも見つめないといけないときも来ています。

改めて立ち止まって振り返ると、小さな幸せはたくさんあるはずなのに、日常に追われてなかなか日常の光みたいなものに焦点を当てられなかった自分がいたんですよね。それはすごく肌で感じたし、人として浅はかなところも浮き彫りになったんです。通り過ぎていく時間をやり過ごすのではなく、ちゃんとつかんで読まなきゃいけないんですよね。流れに乗ることも大事だけど、それだけじゃない。前を向かないと。

──2021年、どんな年になっていくでしょう?

まだハッキリとは分かりませんが、お客様を前に舞台でお芝居をすることが当たり前じゃなくなった時期を経たことで、仕事への向き合い方が変わっていくと思っています。もちろん不安や恐れの拭いきれない2020年ではありましたが、それらの不安に対してどう向き合って、知恵をつけ、スキルを磨くかということが重要だという一年でもあったんじゃないかと。あと、これって世界で自分ひとりが抱えていることではありませんしね。平等に世界中の人、それぞれが感じていることだから、「ひとりじゃない」と感じることも大切ですよね。

 

プロフィール/宮沢りえ

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ツイードトップス¥423,000、バッグ[H15×W14×D14㎝]¥495,000(共にシャネル)

宮沢りえ(みやざわ・りえ)。女優。1973年、東京生まれ。日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、数多くの映画・演劇賞を受賞。圧倒的な存在感を放つ役者として活躍。現在、吉田茂と白洲次郎を描いた映画『日本独立』が上映中。白洲正子を演じている。

starring_RIE MIYAZAWA
photograph_AKINORI ITO[aosora]
styling_KEIKO SASAKI[AGENCE HIRATA]
hair_DAI MICHISHITA
make-up_MIKAKO KIKUCHI[TRON]
interview_MASAMICHI YOSHIHIRO
(otona MUSE 2021年2月号)

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