だから、応援したい人/柳楽優弥さん
『大人のおしゃれ手帖』で連載中の「だから、応援したい人」。今回のゲストは俳優の柳楽優弥さんです。30歳の節目の年を迎えた2020年、俳優としてもまた新たなスタート地点に立った気持ちだという柳楽さん。そんななかで出合った作品のひとつが、日本・モンゴル・フランス3か国の合作映画『ターコイズの空の下で』。約3週間におよぶモンゴルロケからも、今後の糧になるような多くの刺激を受けたようです。
その場で台詞を作るやり方は『誰も知らない』以来でした
2017年の夏。柳楽優弥さんは青い空の広がるモンゴルの地で、3週間を過ごした。
「モンゴルへ行ったのは初めて。飛行機でウランバートルに着いてから、車で9時間くらいかけてロケ地まで移動しました。人もみんな優しくて、ウォッカが大好き。寒いから、体を温めるために撮影中でもとりあえず飲むんです(笑)」
旅の目的は、映画『ターコイズの空の下で』の撮影。日本・モンゴル・フランスの3か国による合作映画で、俳優としても活躍するパリ在住のアーティスト、KENTARO氏が監督を務めた。柳楽さんが演じたのは、裕福な家に生まれ、自堕落な生活を送る主人公のタケシ。祖父の生き別れとなった娘を探すためにモンゴルへ向かったタケシが、カルチャーショックを受けながらも雄大な自然に魅了され、成長していく過程が描かれる。
「台本通りではなく、カメラを回しながら台詞が作られることも多くて。そういう即興的なやり方は『誰も知らない』以来でしたけど、僕は結構好きなんです。監督からは『撮影中は鏡を見ないように』と言われていて。『コマーシャルっぽい演技をしないで』というのも、繰り返し言われました」
見知らぬ土地に多国籍のスタッフ、普段とは異なる撮影方法。そんな状況もタケシと同じように、驚きつつも楽しんだ。
「僕、到着したときに携帯を落として割ってしまって。日本では何が起こってるんだろう?と最初は気になりましたけど、日常と切り離された環境がだんだん面白くなってきて。普段は情報過多というか、必要以上の情報を得ている気がするんですよね。そうじゃなくて、いろんな場所に行って直接人の話を聞くことで、より深い体験ができるんだと実感しました」
30歳を迎える、節目の年となった2020年。「そもそも30歳まで演技の仕事ができればラッキーだと思っていた」という柳楽さんは、今後どんな俳優を目指していくのか。
「あまり囚われたくはないけど、僕にとって『誰も知らない』って、どうしても切り離せない大きな出来事なんです。大きな賞をいただくと、かえって使いづらいと考える監督もいて。そう思われたくなくて、10代、20代は舞台、ドラマ、映画……といろいろやらせてもらいながら右往左往してきたんですよね。そんな中で、参考にする人が必要だと感じて、同じ賞(カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)を取った人を調べたら、トニー・レオンさんがいて。勝手に僕は先輩だと思ってるんですけど(笑)、30代で『恋する惑星』『花様年華』に出て、今も精力的にいろんな作品に関わっている姿は励みになります。僕も、世界三大映画祭にもう一度行きたい、という思いがあります」
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INFORMATION/映画 『ターコイズの空の下で』
監督:KENTARO
脚本:KENTARO、アムラ・バルジンヤム
出演:柳楽優弥、アムラ・バルジンヤム、麿 赤児ほか
2月26日(金)新宿ピカデリーほか、全国順次ロードショー
大企業の経営者・三郎(麿赤兒)を祖父に持つタケシ(柳楽優弥)は贅沢三昧の生活を送っていた。ある日、三郎の所有する競走馬を盗んだ罪で、モンゴル人の男が逮捕される。第二次世界大戦終了後、モンゴルで捕虜生活を送っていた三郎には、現地の女性との間に娘がいた。タケシは祖父の娘を探すため、モンゴルへと旅に出る。
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PROFILE/柳楽優弥(やぎら・ゆうや)
1990年生まれ、東京都出身。2004年、初主演映画『誰も知らない』で、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を日本人初、かつ史上最年少で受賞。近年の出演作に映画『ディストラクション・ベイビーズ』『銀魂』シリーズ、『散り椿』『夜明け』『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』など。待機作に映画『HOKUSAI』『太陽の子』、ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」がある。2021年冬、W主演作「浅草キッド」がNetflixで全世界同時配信予定。
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photograph:Yusuke Shirai
styling:Tetsuro Nagase
hair & make-up:Satori Asako
text:Hanae Kudo
edit:Kaori Suzuki
(大人のおしゃれ手帖 2021年3月号)
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