アンナヤリーサのシンプルで幸せな暮らし フィンランド西海岸の12か月
『リンネル』で連載中の「フィンランド西海岸の12か月」。フィンランドでの暮らしは、華やかでも特別なものでもなく、自然とともに、毎日を丁寧に生きるだけ。毎号、フィンランドからの歳時記をお届けします。今回はフィンランドの夏休みの様子をたくさんの写真とともに教えてもらいました。
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イージーリビングな夏休み
サマーハウスの特別な夏
フィンランドでは、6月下旬のミッドサマーの後、約6週間の夏休みシーズンが始まります。日常を離れ、家族と一緒にサマーハウスで過ごす夏休み、と聞くと、優雅なバカンスを想像してしまいますが、実はなかなかの重労働。というのは、サマーハウスには水道がなく、飲み水は車に積み込んで家から持っていかなければなりません。便利な日常に慣れてしまっていると、不便を感じることもありますが、豊かな自然と暮らす喜びはひとしおです。自然の原点に返った生活はとにかく自由気ままで、時間に追われる普段の暮らしから解放されます。「サマーハウスで何するの?」と質問すると、「食べる、寝る、サウナに入る、この3つの繰り返しかなー」と笑って話してくれました。
家族みんなで時を共に
サマーコテージはだいたい30~40平米ぐらいの広さしかないので、キッチンとリビングルーム以外には小さなベッドルームが1部屋か、せいぜい2部屋程度。みんな一緒に、自然のなかで集団生活を満喫する時間です。「サマーハウスでの生活にプライバシーなんてないわよ。でもそれが楽しいの」と、タニヤ。一年の中で一番気温が高い7月は、あたり一面がお花畑のように美しく、ときには庭にテントを張って寝ることもあります。
サマーハウスでの食事はいたってシンプル。夏の典型的なレシピは、ケサケイット、直訳すると「夏スープ」です。旬の野菜が入ったミルクベースのスープですが、この季節ならではの皮付きの新ジャガで作るのがアンナヤリーサのお気に入り。新ジャガは、水辺に座って、海や湖の水で泥を落とします。バルト海北部は塩分濃度がとても低いので、海の水でも野菜を洗うことができます。
シンプルな夏の食卓
フィンランドでは、食器の種類をあまり増やさず、お気に入りのシリーズをそろえて、毎日同じお皿やカップを使うことが多く、テキスタイルや卓上の小物に変化をつけてテーブルコーディネートを楽しみます。サマーハウスでもそれは同じですが、よりシンプルでナチュラルなテーブルセッティングが好まれ、テーブルクロスは、無地とチェックと花柄の3枚があれば十分とのこと。そして、お花屋さんに行かなくても、色とりどりの美しい草花がすぐそばにあるので、お花のバリエーションは無限大。グラスに入れるだけで食卓が明るくなります。少し薄暗くなってくると、卓上のキャンドルにも火をともします。
デザートにはアイスクリーム
フィンランド人のアイスクリーム好きは有名ですが、夏休みのアイスクリーム消費量は相当なものです。子どもたちは、どんなにお腹がいっぱいでも、食後のアイスクリームは絶対に外せません。ときには、家族でわざわざボートに乗ってアーキペラゴ(群島)まで出かけ、地元の小さなカフェやショップでアイスクリームを買うこともあるとか!? 時間がたっぷりある夏休みならではの楽しい経験です。
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教えてくれたのは……「アンドフィーカ」代表 今泉幸子さん
【PROFILE】
7年前に初めてこの地を訪れ、自然の美しさと人々の温かさ、そしてデザインのある暮らしに感動。以来、毎年のように現地に通い、デザイナー4人との心の通い合いがアンナヤリーサ誕生のきっかけとなりました。デザイナー4人とともに、アンナヤリーサの12か月の暮らしについてお伝えします。
About……Anna ja Liisa(アンナヤリーサ)
アンナヤリーサは、フィンランド西海岸オストロボスニア地域に住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド。
ヘルシンキの北西約500km。起伏がない広大な大地の向こうには、真っすぐな地平線が広がっています。普通の暮らしのなかに、必ず喜びや楽しみがあり、小さな感動からデザインが生まれます。
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photograph:Anna ja Liisa
edit & text:Sachiko Imaizumi
(リンネル 2021年9月号)
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