軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」 障がいのある人たちがアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

taraさんと考える 私と地球に心地よい暮らし

地球と私たち生物のサステナブルな未来のために、今何ができるのか。モデルのtaraさんと一緒に学び、実践する連載です。今回はアートとデザインで障がい者が自立するための就労移行支援を行っている、軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」に注目。クリエイティブディレクターの須長檀さんとアトリエリスタの塚元恵さんに、アトリエでどんなことをしているのかお聞きしました。

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障がいのある人たちがものづくりをする、軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」。アートとデザインを用いて、障がい者が自立するための就労移行支援(※1)を行うその意義とは。

※1 就労移行支援とは、障がい者総合支援法に基づく就労支援サービス

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

RATTA RATTARR[ラッタ ラッタル]
長野県北佐久郡軽井沢町にひっそりと建つ、白い平屋の「ラッタ ラッタル」。クリエイターが通うアトリエにショップも併設。小さな庭を挟んで、一般の人も利用できるイタリアンレストランも。

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ラッタ ラッタルに在籍する約30名の障がい者(クリエイター)を支援員(アトリエリスタ)として支える塚元恵さんと、ディレクションを担当する須長檀さんにお話を伺いました。

――どんなふうにものづくりをされているのでしょうか?

塚元さん(以下敬称略):「ラッタ ラッタル」は、発達障害や統合失調症、ダウン症などの障がいのある方々が通いながら、就職活動をする前段階の、自身のリズムを整えるための施設です。アトリエでは商品になる原画を描いたり、ポットマットを織り機で織ったり、あとは封入などの軽作業に対して、工賃が支払われています。ほかに、作品が商品になった場合、作者にロイヤルティが還元されるようになっています。

須長さん(以下敬称略):実は作品に対して僕は “いいね”を言うくらいで(笑)。みんなが描いている横でデザインするようにしているんですが、すごくいい空気なんですよ。誰かが描いているとみんな集まってきて“どんなふうに描いたの?”って。ラッタ ラッタルの世界観は、こうしてみんなで喜んだり刺激を受けたり、日々積み重ねることで生まれているのかなと。一方で、調子よさそうにしていたのに1週間後には家から出られなくなってしまう場合も。不安定で、難しい側面もあるんです。

塚元:そう、ちょっと進んで戻っちゃうときもある、でもそれをよしと思っています。大事なのは絵を上手に描くことではなく、コミュニケーションをとって“今日は描けません”とSOSを出せること。ダメな日もあればいい日もあると、自分の体調と向き合いながら、ものづくりの経験がないみんなで一緒に取り組んでいくことに、ラッタ ラッタルの魅力があるのかなと思います。

――アートは障がい者にとってよい支援になるのですね。

須長:極端な例かもしれませんが、社会では赤で描いてくださいと言われたのに、青で描いたら間違いとされますよね。アートの世界は、むしろそこにおもしろみがあって、障がいのある人の弱みだったものが強みになる。僕らが支援しているだけでなく、彼らの想像力によって、僕らも成り立っていて。そこにあるのは上下関係ではなく、イコールの関係なんです。

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

筆を使った絵が得意なクリエイター・阿久津さんをアトリエリスタ・塚元さんが見守ります。技術や身体的な特徴から、皆それぞれ描く世界を持っています。

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

白樺かごの材料づくりも支援のひとつ。白樺細工の作家さんより白樺を預かり、薄皮をはがしているところ。

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目

クラフトの時間に、スウェーデンの織り機でポットマットを制作中。菱形のような模様は「グースアイ」というスウェーデンの伝統的な織り。

<できること>ラッタ ラッタルのクリエイティブにふれる

作品から生まれたプロダクトの数々は、枠にとらわれない魅力を持っています。ダイナミックな絵が得意な人、緻密な絵が得意な人。表現に正解なんてないのだから。

Fashion:大人の遊び心をかきたてる自由奔放な柄のウェアとソックス

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
レディースボートネックブラウス¥22,000、手に持ったソックス各¥1,800/ともにラッタ ラッタル、その他/私物

まぶしいイエローに、はねるような水滴柄のブラウス。レディースは約2年前からスタートしたばかりで、それまでの商品づくりと異なり、クリエイターの特性をどのように柄に活かすかを考えるようになったのだとか。ソックスは、ユニセックスではけるサイズフリーのデザイン。ソックスは柄で遊んで、アクセントに。

Kids Fashion:テキスタイルを全身で子どもがまとい、輝く魅力

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
(左)KIDSバックボタンワンピース[80・90・100cm]¥11,000、(中)KIDSギャザーブルマ[80・90・100cm]¥9,400、(右)KIDSキャミワンピース[80・90・100cm]¥9,400/すべてラッタ ラッタル

クリエイターが描いた多くの作品の中から、子ども服にぴったりなものを選び、テキスタイルに。美しい総柄は、一枚の絵をそのまままとったような印象。この秋メンズと男児の展開がスタート。

Stationery:「十人十色」が心を豊かに 二つとない模様を雑貨で味わう

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
(右)レターセット¥1,400(左上)有田焼小丸プレート¥2,000、有田焼三角プレート¥2,000(左下)ノート各¥1,320/すべてラッタ ラッタル

右:クリエイター22名が描いた作品、22柄がアソートになったレターセット。便箋を折るとそのまま封筒になり、定形外郵便で送ることができます。
左上:方眼紙を使ったワークショップから生まれた柄。
左下:半透明の蝋引きのカバーをはずすと、クリエイターが描いた美しいテキスタイルが表紙、裏表紙になっています。

Umbrella & Handkerchief:洋服と合わせる楽しみ 色柄とりどりのお出かけ小物

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
ハンカチ各¥2,800、雨傘¥19,800/ともにラッタ ラッタル

コットンサテンが肌触りのよいハンカチは、ブランド開始の頃から続いている商品で、制作した柄は200以上にもなるそう。大判なので、好みの色や柄を見つけてスカーフ代わりに巻くのも素敵。

京都の職人さんに組み立ててもらっているという丈夫なつくりの傘。UVカット加工はされていませんが、日よけに使っても。竹製の持ち手と、テキスタイルが相まって、レトロな雰囲気。

タラのまとめ

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
レディースボートネックブラウス¥22,000/ラッタ ラッタル、その他/私物

もらって嬉しい!と思う以上に、“プレゼント”は贈る側のほうが実はたくさんのしあわせをいただいているのかもしれないと、ふと感じることがあります。相手を想って選ぶワクワクや、渡したときの喜びと笑顔。アートを通じてまっすぐ人と向き合うことで、日々インスピレーションを受けていると話してくださった須長さんと塚元さん。私たちは皆いつだって与え受け取り合っていて、ありのままの存在を認め合う先に広がる世界は誰もが創造の可能性を秘めているということを自覚させてくれます。そんな素敵な活動が、“福祉=特別なもの”という枠から外れ、よりナチュラルに根付いて……と、想った私の内側には既にあたたかな光のギフトが灯ったようでした。

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教えてくれたのは……

軽井沢のアトリエ「ラッタ ラッタル」で障がい者がアートでものづくり! 雑貨などプロダクトにも注目
左:クリエイティブディレクター 須長 檀さん 右:アトリエリスタ 塚元 恵さん

左:クリエイティブディレクター
須長 檀さん

【PROFILE】
ラッタ ラッタルのデザインのほかに、軽井沢にある北欧家具の店「NATUR」のオーナーや、舞台美術なども手がける。今年8月にオリジナル家具の店「LAGOM」をオープン。

右:アトリエリスタ
塚元 恵さん

【PROFILE】
ラッタ ラッタルを運営する、チャレンジドジャパン ラッタラッタル軽井沢センターの支援員として福祉とデザインの両面からクリエイターを支える。商品開発も担当。

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PROFILE/tara

5歳よりバレエを始め、15歳で単身渡米。ヒューストンバレエの研修を経て、チェコ、クロアチアの国立劇場でソリストとして踊る。2016年拠点を日本に移しモデルとしての活動をスタート。雑誌、カタログ、TVCMやPVなど多数出演するほか、絵本の翻訳(『チュチュをきたトラ』:文化出版局)、エッセイの執筆、ヴィーガン料理のレシピ開発など幅広く活躍している。

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model:tara
photograph:Miho Kakuta
text:Nao Yoshida
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