taraさんと考える 私と地球に心地よい暮らし
地球と私たち生物のサステナブルな未来のために、今何ができるのか。モデルのtaraさんと一緒に学び、実践する連載です。今回は自然酒醸造元「寺田本家」の24代目当主の寺田優さんと寺田聡美さんに、さまざまな菌を活かした自然酒造りの魅力について詳しく話をお聞きしました。
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<キーワード>生物多様性と酒造り
お酒の原料は、お米と水。そして腸を健やかにする乳酸菌や酵母菌などの「菌」。自然酒造りを行う「寺田本家」では、酒蔵にすんでいる菌たちを活かす方法をとっているそうです。
明治時代に建てられたレンガ造りの酒蔵の入り口で、24代目当主・寺田優さん、妻の聡美さんと。
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「寺田本家」の24代目当主、寺田 優さんにお話を伺いました。
――「寺田本家」が造る自然酒は、工業的なお酒造り(人工成分を入れて培養する速醸造り)とどう違うのでしょう?
お酒はお米と水と菌、この3つを用いて発酵させればできるんです。これ以外に何もいらない。「寺田本家」では、お米は化学肥料を使わず無農薬で栽培したもの、水は敷地内の井戸水を使い、他の添加物は一切入れないのが特徴です。
そして、お酒に必要な主な「菌」は、お米を分解する「麹菌」、雑菌が入らないようバリアを張る「乳酸菌」、糖分を食べてアルコールをつくる「酵母菌」の3つ。うちは人工的な菌を使わず、酒蔵にすむ菌たちを活かした製法なので、この3種以外にも酪酸菌や硝酸還元菌などさまざまな蔵の菌たちが関わり合って、お酒になっていくんです。逆に工業化された酒造りの中にはこの3種しか使わず、他の菌はシャットアウトする方法も。
――菌は少ないほうがいいと?
主には雑菌が混入して腐敗するリスクを避けられるからですね。酵母菌も、他から買ってきて「バナナのような香り」「りんごのような香り」といったマーケティング上人気の味わいを造り分けることもできるんです。
それをせず、自然の力に任せることはリスクも大きくときに失敗することもありますが、味が単調にならず複雑に、深くなっていく。時々、自分の想像つかないような味になって、それが自然酒造りのおもしろいところです。
――スピードを求めた造り方だと、蔵人たちがお米に一切手を触れない場合もあるそうですね。
うちも以前はその方法だったんですが、人間だって菌だらけなので、蔵人たちの菌の力もふくめてお酒を造っていこうと手作業に変えました。蒸したアツアツのお米を手でもみながら冷ましたり、蒸し米に手で麹菌を混ぜながら温度管理をしたり……。赤ちゃんを抱っこして育てるように、お米も毎日触れてあげると、どんな状態かが伝わってくるんですね。多くの菌と人が関わり合うほどに影響し合い、毎日まいにち変化し、同じ味にならない。でもそこには確かな生命力があって。それが発酵である、と思うんです。
<できること>寺田本家の発酵道を知る
菌たちの力を借りてうまれたその年だけの風味、味わい。その生命力を口にして、感じてみましょう。体にやさしいは、おいしい。体が「うふふ」となれば、心も「うふふ」。
No. 1:発酵を体験する
酒蔵の隣にある「カフェうふふ」では、お酒はもちろん、醸造過程で出る酒粕や麹などを使った発酵料理を味わえます。また、酒造りを行う1月中旬頃〜2月の間は蔵見学も可能(指定日・要予約/6月20日時点では休止中)。実際に蔵の中に入って、お米を蒸す大きな甑(こしき)から、麹を造る麹室、酒母室、もろみタンクなど醸造の工程を追って案内してもらえます。今回はシーズンオフの清掃中に特別に見学させてもらいました。
「カフェうふふ」では、「寺田本家」で生まれ育った寺田聡美さんが、「発酵」の楽しさを伝えたいとレシピ開発した無農薬野菜中心のメニューを展開。写真は「酒粕タンドリーれんこん」や、「車麩の甘酒バーベキューソース」などがおいしい日替わりランチ「うふふごはん」。
本日は「お茶の甘酒パフェ」も。抹茶甘酒クリームや甘酒きなこアイスに、麹あんこやグルテンフリーの甘酒ビスケットがオン。食べごたえがあるのに、後味軽やか!
木桶に蒸米・麹を入れ、櫂棒(かいぼう)でなめらかに摺りつぶし、蔵内の酵母菌を呼び寄せるための「酛(もと)」を造る作業。蔵人たちは摺りながら 声高らかに「酛摺(もとす)り唄」を唄って菌たちを喜ばせます。江戸時代は多くの酒蔵で唄われていたそう。
No. 2:寺田本家のお酒を飲んでみる
「カフェうふふ」では「寺田本家」のお酒を飲み比べすることができます。ラインナップは日替わりで3種。今日は、先代が自らの病を経て“人の役に立つお酒を”と自然酒に目覚め造った第一号「五人娘」、鎌倉時代にお寺で造られていた、どぶろくを再現した「醍醐のしずく」、伊勢神宮の古い文献にあった、お神酒の造り方をヒントにした「発芽玄米酒むすひ」。同じ日本酒といえども、三種三様。HPのオンラインショップからも購入できます。
普段から「五人娘」を愛飲しているtaraさん、飲み比べの感想は?「五人娘はさらっと、飲みやすくておすすめです。醍醐のしずくは、甘くてフルーティ。むすひは、酸味と少し発泡性があり、野性味を感じました」
No. 3:発酵料理を作ってみる
醸造の過程でうまれる副産物、酒粕や、麹、発酵甘酒なども販売。「発芽玄米酒粕」は形状が粒粒で、炒め物や煮物のアクセントに。化学肥料、農薬不使用の米からうまれた「天然白米こうじ」は、手前味噌や、塩麹、発酵甘酒づくりなどに。甘酒「発芽玄米のうふふのモト」や、粉チーズのような「酒粕ちいず」、米麹と醤油でつくられた「バーベキューソース」はいずれも無添加で、乳製品不使用。おいしく、腸活を。
タラのまとめ
蔵見学で再現していただいた「酛摺り」の儀。杜氏寺田さんが唄った圧巻の民謡は、普段私たちが五感で感じるもの以外の「見えない世界」と意思を通わせるような不思議な力がありました。菌を「善い」「悪い」に分けないからこそ余計な手は加えず、闘わず、信じ委ねる寺田本家の酒造りは「見えない世界」に対する敬意そのもので、私たちは姿かたち問わず皆同じ理(ことわり)のもと影響し合って生かされているということを教えてくれました。
「酛摺り」の民謡のように、私たちが普段、ただ心のままに唄ったり踊ったりして生み出される力も、もしかすると、想像以上の影響力でよりよい明日のために作用しているのかもしれません。
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教えてくれたのは……
寺田本家 寺田 優さん
【PROFILE】
340年以上続く自然酒醸造元「寺田本家」の24代目当主。学生時代にバックパッカー、その後動物の動画カメラマン、農業経験を経て婿入り。
寺田聡美さん
【PROFILE】
酒粕料理家。「寺田本家」に生まれ育ち、酒粕、麹を活用した取り入れやすい発酵レシピや“うふふで発酵調味料シリーズ”の商品開発を手がける。
寺田本家/カフェうふふ
住所:千葉県香取郡神崎町神崎本宿1964
ホームページ:https://www.teradahonke.co.jp/ufufu
都内から車で2時間ほど、千葉県香取郡神崎町にある酒蔵、寺田本家。その隣にある「カフェうふふ」では、寺田本家のお酒はもちろん、酒造りの工程でうまれる酒粕や麹を使った野菜中心の発酵料理やスイーツを提供。
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PROFILE/tara
5歳よりバレエを始め、15歳で単身渡米。ヒューストンバレエの研修を経て、チェコ、クロアチアの国立劇場でソリストとして踊る。2016年拠点を日本に移しモデルとしての活動をスタート。雑誌、カタログ、TVCMやPVなど多数出演するほか、絵本の翻訳(『チュチュをきたトラ』:文化出版局)、エッセイの執筆、ヴィーガン料理のレシピ開発など幅広く活躍している。
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model:tara
photograph:Miho Kakuta
text:Nao Yoshida
(リンネル 2021年8月号)
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