辛酸なめ子の覗き見 OL妄想劇場
『steady.』で連載中の「辛酸なめ子の覗き見 OL妄想劇場」。世界的スターのレディー・ガガが来日し、ツアーを観にいったなめ子さん。そこで遭遇した、若いカップルの行動に衝撃を受けたそうです。いったいどんなことがあったのでしょうか。
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久しぶりの世界的スターの来日。埼玉のドームに数万人が集結。
このところ、海外セレブの来日が立て続いています。9月には、ついにレディー・ガガも来日。2020年の予定がコロナで延期になっていた待望のツアーが、所沢のベルーナドームで開催されたのです。埼玉出身としては光栄に思いながら、直前にチケットを取って行って参りました。もちろん、ガガ様が「SAITAMA～!!」と叫ぶわけはなく、「TOKYO～!!」です。
今回のコンサートでは、8年前の28歳の時よりもパワーアップしたガガ様のパフォーマンスに感動。コロナ禍のステイホームで体力温存されていたのでしょうか。来日してからもほぼ夜遊びには出かけず、食事に行くくらい。あとは来日翌日、メガドンキで、コアラのマーチやフォンデュマシーンなど約10袋分も買い込んだ食べ物などをホテルで消費していたようです。かつては華やかなアフターパーティを繰り広げていましたが、この頃は、持続可能な歌手活動のために、体力も省エネしています。
だからこそ、コンサートでは約2時間、エモーショナルな生歌を披露できたのでしょう。最初から最後まで音程も喉の調子も最高レベルでキープしていて、ダンスもキレキレで、世界のガガ様の才能を目の当たりにしました。
衣装や演出も派手で、ステージからはたびたび火焰が噴出。衣装もモード系から血を思わせるグロ系の赤い衣装、昆虫風コスプレ、レザーのレオタードなど、何でも着こなしていました。昆虫の衣装で登場した時にはさすがに客席がざわざわして笑いも起こっていましたが、そんな姿でも圧倒的な歌唱力で感動に持っていけるのがさすがでした。まだあまり歓声を上げるのははばかられるご時世ですが、観客は衝動的に叫びまくっていました。
妙なセレブ感を漂わせた観客。客席で意外な行動に……。
熱狂の渦の中、さめたヴァイブスを漂わせた男女のお客が。30分以上も過ぎてから、余裕を漂わせて入ってきた若いカップルです。ガガ様を少しでも多く目に焼き付けようと、ほとんどの客がスタンド席で立っているなか、前半ちょっと立っていましたが、あとは客席に深々と座っていたふたり。「Put your hands up TOKYO！」とたびたびガガ様が叫んでもスルーしていました。せっかく8年ぶりのガガ様の来日公演なのに、あまり楽しんでいない様子……と他人ながら気になったのですが、女性を見て驚きました。なんと、コンサート中なのにインスタをチェックしていたのです！ 数歩ゆずって、自分がガガ様のコンサートの様子を撮ってアップしている、というのなら良いですが、全然関係ない友人知人やセレブのインスタを眺め出していました。そして彼氏の方も、靴のショッピングサイトなどをチェック。彼女の方はあろうことかインスタをタップして音まで出していました。かつて、海外アーティストの公演で、ステージに背を向けてアーティストを背後に自撮りした人が炎上していましたが、コンサートをちゃんと観ていたぶん、そちらの方がまだましなのでは……。アーティストの立場になって考えるとSNSを見られることの方がショックです。
目の前の生のコンサートも、インスタの投稿も、同じコンテンツとして淡々と消費しているのかもしれません……。あくまでも、選ぶのは消費者である、という上から目線が感じられます。最近は若い世代の「倍速視聴」も話題です。イントロや間奏に耐えられず、スキップしたり倍速で音楽を聴いてタイパ（タイムパフォーマンス）を上げたりするとか。彼女も、ガガ様の曲の間奏などダルくて聴いていられなかったのでしょうか。1万8000円もするチケットを買って、ながら観とはもったいないです。
SNSに依存しがちな人は、つながりや絆を求めていて実は孤独を感じている、という説があります。ガガ様がステージで「アイシテマス！」「アイシテマス so much！」「I feel so much love！」と日本への愛を何度も叫んでいたのは、彼らには届いているのでしょうか……。もしかしたらあとで誰かがSNSにアップした、ガガ様の動画なら真剣に見るのかもしれません。現実ではないSNS次元に生きている男女には、独特の浮世離れ感が漂っていました。
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PROFILE／辛酸なめ子（しんさん・なめこ）
漫画家、コラムニスト。皇室、セレブリティ、スピリチュアルなどの分野に精通。著書は『女子校育ち』（筑摩書房）、『セレブマニア』（ぶんか社）、『辛酸なめ子のつぶやきデトックス』（宝島社）など。『辛酸なめ子の現代社会学』（幻冬舎文庫）は、日本のカルチャー要素をキーワードに、漫画タッチで構成されています。ツイッターのシュールボイスもお見逃しなく。@godblessnameko
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WEB編集／FASHION BOX
