グンゼ主催 東大産婦人科医に学ぶ「女性のカラダの変化と困りごと」

乳がんの術後など医療現場の声を反映して開発した『メディキュア』や、月経中も快適に過ごせる吸水ショーツ『Tuche』など、長年女性のカラダについて深く研究し、寄り添った商品を開発してきたインナーメーカーの「グンゼ」。
女性の健康課題についてもっと理解を深めるため、東京大学医学部附属病院産婦人科医の甲賀かをり先生を講師に迎えて社内セミナーを開催。全国の社員のほか多数メディアなど、のべ80人が参加したオンラインセミナーの様子をお届けします。

甲賀かをり先生

甲賀 かをり先生
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 准教授。千葉大学医学部卒、 東京大学大学院修了。武蔵野赤十字病院などを経てプリンスヘンリー研究所・イエール大学留学。帰国後は、東京大学医学部講師、2014 年より現職。日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内分泌学会専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医など。

まずは知っておきたい!女性の4つのライフステージ

女性のライフステージは、女性ホルモンの変化によって4つのセクションに分けられています。初経を迎えるまでが「思春期」、月経が安定している「成熟期」、閉経を迎える頃を「更年期」、その後が「老年期」です。

「私の更年期はいつなのでしょうか? という質問を受けることが多いのですが、更年期は用語的には閉経前と後の5年間合わせて10年間、と定義されていますね。閉経とは月経が来なくなって1年経ったこと。ですので、閉経してからようやくあの時は更年期だった、と分かることなんです。ちなみに、日本人の平均の閉経は51歳です」

またその4つの他に覚えておきたい言葉がある、と甲賀先生は続けます。

「『プレコンセプション(Preconception)期』です。プレ(Pre)は「~より前の」、コンセプション(Conception)は「妊娠」を意味しますので、妊娠を考える時期、という意味で使います。42歳で妊娠を考えた方は、思春期から42歳までがプレコンセクション期、ということになります。『プレコンセプションケア』は『将来の妊娠に向けて』のような意味で使われていますね」

女性の社会進出や晩婚化は、女性にどんな影響を与えている?

次に、「現代のライフスタイルは昔と比べて女性の体にどんな変化がある?」という質問にお答えします。

「女性の労働力率を昭和50年で見た場合、20〜24歳の時にピークを迎え、25〜29の時に下がり再び上がる、いわゆるM字カーブを描いています。これはその年齢で女性が結婚・出産で退社し、子育てが落ち着いた頃再び働き出していたことがわかりますね。ところが平成26年ではMのカーブの底が浅くなり、ピークも全体的に右にズレてきています。30歳の女性を1950年と現代で比較すると、1950年はすでに3人の子どもを産んでいた、ところが現在の第一子出産年齢は30.7歳。つまりこれからお子さんを持とうとしている女性となります。70年間で、子どもを産む年齢が遅くなってきているのが分かります」

これは女性の体にどのような変化をもたらすのでしょうか?

「ひとつに、月経の回数が挙げられます。生涯を通して経験する月経の回数が、昔は40〜50回だったところ、今や400〜450回の約10倍にも増えているんです。昔の人は子どもを多く産んでいて、妊娠中や授乳中には生理がありませんので、その分生理(月経)の回数は少ないです。ところが現代では、子どもを産む人数も少なく、さらに栄養状態の改善によって初経の年齢も早まってきていることもあり、これほどの数に増えているのです」

昔と比べて10倍にも増えた月経。これによって起きる健康問題は?

次に、約1ヶ月の間に子宮内で起きていることに移ります。

「よく赤ちゃんのベッドに例えられる子宮内膜。これが厚くなり、妊娠しなければ剥がれ落ちて子宮外に排出されます。これが月経です。子宮内膜が剥がれ落ちるのをコントロールしているのは、卵巣。卵巣から卵が発育し、2種類のホルモンが上がったり下がったりすることで子宮内膜に働きかけているんです。そして、その卵巣に指令を出しているのは、脳の下垂体から出ている下垂体ホルモン。これが卵巣に司令を出して、巧妙なシステムで動いています。月経中にMRIで子宮の動きを見ると、月経血を膣のほうに押し出そうとして、子宮がまるで分娩の時の陣痛のように動いているのがわかります。月経期に起きる月経困難症、いわゆる月経痛の原因となります」

生理痛以外に最近よく耳にするようになったPMS(月経前症候群)。これも現代の女性を悩ませる症状です、と甲賀先生。

「月経前の約10日間に起こるのがPMS(月経前症候群)。胸が張る、お腹が張る、体重が増える、頭が痛いなど。情緒的にはイライラする、不安になる、鬱々として気分が落ち込むなどの症状があります。生物学的に解説すると、月経前は妊娠したばかりでこれから赤ちゃんが育っていく、という時期になるので、妊娠に対して体が有利になるようにできているんです。卵が無事に育つように栄養や水分を体に蓄えておく、巣穴にこもって他のオスを寄せ付けないようにする。とはいえ、毎月妊娠の準備が必要ない現代女性からすると、不快な症状として出てしまっているのです」

働きながら更年期を迎える上で知っておきたいこと

甲賀先生は、月経とともに考えなければならないのが、働きながら迎える更年期と指摘します。

「更年期障害は、この1ヶ月のリズムが乱れることで起きます。下垂体は卵巣だけに作用するのではなく、体温を調節したり心拍数を整える役割も担っているので、変なところが刺激されて自律神経が乱れます。その結果、月経不順、ホットフラッシュ、イライラなど起きるんです。老年期に差し掛かると、骨密度が下がる、高脂血症になる、なども増えてきます」

調査では、「更年期の症状によって仕事に影響がある」と答えた人は40代で7割、50代で8割6分いるそう。月経前・中や更年期では、労働生産性が落ちることが明らかになっています。

不妊症以上に問題が?晩婚化による妊娠・出産のリスクを考える

甲賀先生は約25年間産婦人科医として多くの女性を見てきて、妊娠を希望する年齢が年々遅くなっている、と感じているそう。

「年齢が上がることのリスクの1つに、不妊症が挙げられます。体外受精の治療を受けている患者さんのデータを見ると、妊娠を希望する年齢は40代がピークとなっていますが、成功率は40歳にはかなり低くなっていることがわかります。またもっと問題なのが、子宮内膜症や子宮頸がんといった子宮や卵巣できる病気が妊娠希望年齢と重なってしまうこと。これらの病気は最近になって増えてきているわけではないのですが、昔は発病しても出産後だったので子宮を取るなどの処置ができました。現代では妊娠を希望する時期と重なってしまうので、治療も難航し、また妊娠を希望していても叶えられなくなってしまうことも。また、年齢が上がると妊娠したとしても高血圧、糖尿病など罹患率が上がる、早産、流産、など妊娠合併症が増えるなどさまざまなリスクがあります。年齢が上がると妊娠もしにくく、妊娠したとしても合併症が増えるということを、皆さんにはぜひ知っておいていただきたいです」

月経に伴う不快な症状。どうやって乗り越えられる?

「月経に関する問題にどう対処して行けばいいのでしょうか?」という質問に対し、一番大切なのは自分の1ヶ月を知ること、と答えます。

「PMSの時は、なんだか分からないけどイライラする、鬱々とする。それで大事な人と喧嘩したり、大事な仕事でミスしてしまって自己嫌悪に陥ってしまう。これを防ぐために、認知医学療法と言うのですが、自分がいつPMSか、どんな症状なのか知ることが重要です。手帳やアプリに体の調子を記録しておき、痛みや不快の時期がいつ頃か客観的に見られるといいでしょう。PMSの時は心地よい下着を着て自分のご機嫌をとるなどして、女性であることを慈しめたらいいですね。また、ピルを飲むのも解決策となります。ピルを飲むことで1ヶ月のホルモンのアップダウンがなくなるのでPMSもなくなり、月経も軽くなります」

女性はもちろん男性も「知る」ことから始めてみよう

「先ほどプレコンセプションケアについて少し説明しましたが、今はこの時期がとても長いです。子どもが欲しいと思った時に初めて産婦人科を受診して病気が分かり、手の施しようがなくなっている方もたくさん見てきました。病気の早期発見はもちろんのこと、何歳くらいで子どもが欲しいかなどを考えてキャリアデザインをする、など今後も医療従事者として啓蒙をしていきたいと思っています。海外に比べて、ピルの内服率や子宮頸がんワクチン、行きつけ産婦人科医を持つ率などまだまだ日本は低いです。ただ、ヘルスリテラシーが高い人の方が、月経中に仕事のパフォーマンスが下がらない、また望んだ時に妊娠できるなどのデータが出ています。健康に関するいろんな知識を満遍なく持ち、常にアンテナを立てておく。こういった姿勢が、長い目で力になると思っています」

「知識は力」と、甲賀先生は力強く答えます  

最後に「女性が月経痛やPMS、更年期で苦しんでいる時、周囲(特に男性など)はできることがありますか?」という質問に答えます。

「素晴らしいご質問ですね。何かアクションができるかどうかは、環境やその人との関係によるので一概には申し上げられませんが、知識を持っているか持っていないかで大きく変わってくると思います。例えば部下の女性が「月経痛がひどいので、産婦人科へ行ってこようと思います」と言った時に、こういった知識があれば狼狽えずに冷静に答えらます。あるいは家族など身近な人にもフラットに声をかけられますね。知識を持っていること、それは必ず何かの力となって生きてきます」

女性のリズムに寄り添う「cherish moon」が新登場!

気分が上がる総レースのデザインに、女心をくすぐるカラー。「本当にサニタリー用?」と思わず聞きたくなってしまう可憐なデザインの「cherish moon」。多くの女性の声を反映し、月経前や月経中に締め付けがキツくないブラトップや、見た目が可愛く超吸水型のショーツなど機能面もこだわりのライン。発売中。https://www.gunze.jp/tuche/inner/cherish_moon/

cherish moon

宝島社では女性誌11誌男性誌2誌、計13誌合同によるフェムテック・フェムケア啓発プロジェクト「もっと話そう! Hello femtech」を2021年12月25日(土)より始動しました。
フェムテックの認知度向上を通じて、女性の健康問題に係わる具体的な話題を話す機会を増やすことで、女性がより活躍できる社会に繋げ、ひいては男女関係なくヒトが生きやすい社会を目指すための活動です。

HelloFemtech 特設ページはこちら

https://fashionbox.tkj.jp/femtech

取材・文=吉田彰子

RELATED CONTENTS

関連コンテンツ