シングルマザーの止まらぬ負の連鎖|日本のひとり親世帯の貧困率は50%超え?

シングルマザーは平均年収223万円!貧困生活の辛い子育ての現実に迫る

日本国内の母子家庭は約123万世帯に及び、その貧困は深刻な社会問題となっている。日本のシングルマザー世帯貧困率は、世界でも異常だとノンフィクションライターの中村淳彦さんは言う。母子家庭の抱える問題や、子供に続く負の連鎖の可能性について中村さんにうかがった。

日本のシングルマザー世帯の貧困率は国際的に見て異常

全国で約123万世帯にのぼる母子家庭(シングルマザー)の貧困は、最も深刻な社会問題のひとつである。全国母子世帯等調査(厚生労働省)によると、母子家庭の平均年間収入は223万円(平均就労所得は181万円)。全世帯平均所得545万円(国民生活調査)、児童あり世帯の平均所得707万円を大きく下回る。

近年、子供の貧困が問題視されるが、相対的貧困に該当する親の元で暮らす子供たちが“子供の貧困”といわれる状態になる。現在、6人に1人の子供が該当するとされるが、母子家庭の子供たちが貧困に該当する確率は高い。

シングルマザーの止まらぬ負の連鎖|日本のひとり親世帯の貧困率は50%超え?
出典: FASHION BOX

養育費をもらっているのは15%

30人クラスで5人が貧困に該当することになるが、貧困者の取材を続ける私から眺めても本当にそのとおりという数値だ。多くは近隣に親や親戚がおらず、誰も助けてくれる人がいない環境(関係性の貧困)を抱え、老朽化した団地やアパートに住み、一家を支える母親は無理してダブルワーク、トリプルワークをしている。企業はシングルマザーに対しては最低賃金程度しか払う気がないので、生きていくためには必然的に長時間労働になる。

そして子供はネグレクト状態になる可能性がある。必要な時期に母親がいないので、子供たちは精神的な問題を抱えたり、学習が遅れたり、非行に走ったりする場合もある。

「養育費をもらえばいいじゃないか」とよく聞くが、元夫から養育費が滞りなく支払われる人は15%程度しかいない。多くのシングルマザーは経済的な貧困、関係性の貧困、情報の貧困と貧困のすべての要素を抱えているので、本当に深刻な問題である。

日本のシングルマザーの貧困は、国際的にも異常な水準に達している。日本のひとり親世帯の貧困率は50.8%(『平成26年版 子供・若者白書』内閣府)と、常軌を逸した水準となっていてOECD各国のなかで圧倒的な最下位である。デンマークやノルウェー、スウェーデンなどでは数%(3~5%)を推移していて、激しい格差社会になっているアメリカでも35%弱である。

日本は先進国とは到底呼べない悲惨な事態になっているのだ。もはや手遅れ、といった状況である。

そしてシングルマザーの貧困は、子供に連鎖する。親が貧しいということは、満足にご飯を食べることができない、子供が修学旅行に行けない、給食費が払えない、進学できないという問題だけでは終わらない。

文部科学省が行っている「全国学力・学習状況調査」で、保護者の世帯収入と子供の学力が比例することが発表された。とくに算数でその傾向が顕著で、親が年収200万円未満と1500万円以上の世帯の子供とでは100点満点中20点の差がついたという。大人と同じく、子供もまったく平等ではなく、年収が少ない母子家庭に生まれた子供は未来も暗くなりがちなのだ。

精神疾患に悩まされるシンママ

私はたくさんのシングルマザーの取材を経験しているが、精神疾患を患っている母親は多い。うつ病から始まり、双極性障害、統合失調症と症状はさまざまで、先日はセックス依存症の母親を取材した。不安と寂しさからセックスしていないと精神が安定しなくなり、フェイスブックで男性を誘っては肉体関係を結んでいた。

貧困母子家庭の母親のほとんどは夫によるDVやモラハラに耐え切れず離婚し、結婚生活と離婚時に精神的なダメージを受けている。離婚をすれば問題が解決するわけではなく、その後に貧困レベルの生活苦を強いられる。お金と子供の悩みに明け暮れ、大抵は稼がざるを得ないので長時間労働も強いられる。

子供をネグレクトしながらダブルワーク、トリプルワークすることで、多くの母親は精神の限界を超え、精神疾患になってしまう。最後の砦(とりで)である自分の健康も壊してしまうのだ。

精神疾患を患った母親は、まともに働けなくなり、さらに生活は苦しくなる。そうなると、職場や子供との人間関係にも亀裂が入りがちで、子供を虐待したり、藁(わら)をも掴む思いや焦燥が原因で、さらに悪い男に引っかかったりする。

生活保護を受けることができれば助かるが、まだまだ公的扶助は周知されていない。救済制度を知らずに悩み続けて、無理な就労を継続する。この段階で夜の世界や風俗を考える母親も多いが、女性の供給が圧倒的に増えている裸の世界はデフレであり、最後の手段である性を売っても貧困は解決しない。

また、市場原理主義を徹底している日本社会もシングルマザーたちの貧しさにつけ入る。深刻な人手不足に陥る飲食業界や介護業界はシングルマザーを積極的に雇用するが、彼女たちは低賃金でも文句を言わずに一生懸命働くので、その都合のよさを見抜いた一部の業者は彼女たちにブラック労働を強いる。規定どおりに給与を支払わない、違法労働させるという事業所は膨大にあり、一度、貧困に足を突っ込んでしまうと負の連鎖が止まらないのだ。

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このコンテンツの監修者は……

中村淳彦(なかむら・あつひこ)さん

【Profile】
ノンフィクションライター。貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)は第2回Yahoo! 本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネート。最新刊は『日本の貧困女子』(SB新書)。『日本の風俗嬢』(新潮社)、「名前のない女たち」シリーズ(宝島社)など著書多数。
Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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(抜粋)

シングルマザーの止まらぬ負の連鎖|日本のひとり親世帯の貧困率は50%超え?
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宝島社新書『証言 貧困女子 助けて!と言えない39人の悲しき理由』
監修:中村淳彦

WEB編集:FASHION BOX
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