妊娠・出産をしてからというもの、くしゃみや咳をすると尿が漏れる……。
人知れず、そんな悩みを抱えていませんか? 急に尿意をもよおし、トイレまで間に合わなかった……なんていう経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
そんな尿漏れの原因は、骨盤底筋群の筋力が低下しているせいかもしれません。
骨盤底筋群とは骨盤の中にある臓器や膣、尿道、肛門の周りにある筋肉を指します。この、骨盤全体を支える大切な筋肉は、妊娠することで弱くなってしまいます。出産の準備段階において、ホルモンのバランスが変化する影響を受けているのです。
産後も筋力が弱まったまま、何もケアせずに放っておくと、骨盤底筋群が緩んだままとなり、尿漏れを生じることがあります。
今すぐ骨盤底筋群を鍛えたい。そんな方のために、自宅でできるおすすめの尿漏れ対策、いま話題の「膣トレ」について現役の医師に教えていただきました。
≪目次≫- 1.産後の尿漏れは骨盤底筋の緩みが原因
- 2.骨盤ケアの先進国、フランスの膣ケア
- 3.産後におすすめ! 膣トレ方法
- 4.別の病気のせいで尿漏れしている可能性も
- 5.膣トレを成功させてハッピーな産後ライフを!
- 6.教えてくれたのは……
1.産後の尿漏れは骨盤底筋の緩みが原因
赤ちゃんがお腹の中にいる妊娠中は、膀胱が圧迫されるため尿漏れしやすくなります。しかし、赤ちゃんがお腹の中からいなくなったのに、尿漏れが治らないということもあります。この「産後の尿漏れ」は出産後によくある悩みです。これは、骨盤底筋の緩みが原因です。
10カ月間もの間、お腹の中で大切に育てた赤ちゃんは体重約3kg。胎児を支えるために大切な働きをしているのが骨盤底筋群です。長期間、赤ちゃんの重さを支えたり、分娩の時には骨盤を開いたりするため、骨盤底筋群は妊娠・出産によって大きなダメージを受けます。
そのため、出産後の骨盤底筋は伸び切ったゴムのように、筋力が低下しきった状態になっています。
そうすると、くしゃみや咳などのちょっとした衝撃を受けても、そのはずみに膀胱から尿が漏れてしまうのを防ぐことができなくなってしまうのです。
「時間が経てば治るのかな」「まだ若いのに、このまま続いたらどうしよう」などと不安になってしまう女性も多いのではないでしょうか。
2.骨盤ケアの先進国、フランスの膣ケア
骨盤底筋の筋力が弱まって尿漏れになるのであれば、骨盤底筋群を鍛えることで改善できるはずです。
骨盤底筋を鍛える対策としては「膣ケア」が有効だといわれています。最近話題のキーワードでもある「膣ケア」「膣トレ」。これは骨盤底筋を鍛えること、骨盤ケアと直結しています。
フランスでは、骨盤底筋群を含めた骨盤全体を「ペリネ」という言葉で表します。保険適応のリハビリとして「ペリネケア」が一般的に行われており、産後は誰しもが医療者の指導の下で、ペリネケアを行うことができます。「ペリネケア」は医学とヨガを融合させて骨盤をケアし、尿漏れや骨盤機能にまつわる不調を軽減するという考え方です。産後の膣ケアは、それほど大切だということですね。
残念ながら日本では、骨盤ケアについての産後の指導は現在行われていません。けれども、自分でできる骨盤底筋群の膣トレを実践することで、尿漏れの改善だけでなく、産後の性生活の回復も目指せます。
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3.産後におすすめ! 膣トレ方法
3-1.骨盤体操で骨盤底筋群を鍛えよう
骨盤体操は骨盤底筋群を鍛えるのに非常に有効です。今日からできる、おすすめの簡単エクササイズを2つご紹介します。
骨盤底筋群を鍛える! 膣トレ その1
背筋を伸ばして立ち、数秒程度ギュッと肛門と膣を締めるように力を入れ、その後ゆっくりと緩めましょう。このとき、肩はリラックスして、下腹部を意識します。
通勤中や家事をしているときに「ながらエクササイズ」として繰り返し行うのがおすすめです。
骨盤底筋群を鍛える! 膣トレ その2
仰向けに横になり、両膝を骨盤と同じくらいの幅を開いて立てます。かかとを少しだけお尻に近づけ、手の平は床に優しく置きましょう。リラックスして息を吐きながらゆっくりと腰を持ち上げます。このとき、どれだけ高く腰が持ち上がるかではなく、下腹部を意識することで骨盤底筋が刺激されます。膝は両側に広がらないようにしましょう。
排尿時に途中で止める訓練をすると膣トレになる、という説を耳にしますが、これはおすすめしません。尿を途中で止めることで雑菌などが入りやすくなり、膀胱炎などの原因になる可能性があるためです。
いずれも一朝一夕に骨盤底筋が鍛えられるわけではありません。膣トレは日々の生活のなかで、習慣化して無理なく継続するのが理想です。
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3-2.漢方で体調を整える
骨盤底筋の筋力低下は物理的なダメージだけでなく、産前産後のホルモンバランスの変化も原因だとお伝えしました。出産時に大きく変化したホルモンバランスを整えることは、産後の骨盤ケアにつながります。そのホルモンバランスの調整に役立つのが漢方薬です。
漢方薬は、自然の植物や鉱物を用いた生薬を組み合わせた薬です。そのため人体に無理のない作用で、なおかつ服用者に合っていれば高い効果を得られます。
漢方薬は、体に備わっている「内なる治癒力」を高めることが得意。体質を変え、根本的に健康になるように目指せるのです。服用するとたちまち改善、というような劇的な効果は期待できませんが、毎日続けて服用することで、長年、悩み続けてきた症状がすっかり消えてしまった!という日がやってくるずです。
また、漢方薬の中には過活動性膀胱に効く成分が含まれるものもあり、尿失禁対策として使われることも多々あります。尿漏れの改善におすすめの漢方薬は以下の3つです。
尿漏れの改善におすすめの漢方薬
1) 冷え、若い女性の尿漏れに:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
産後や更年期など女性ホルモンの変動により引き起こされる症状を緩和してくれます。
2)冷えだけでなく便秘にも困っている方に:桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
桂枝茯苓丸と同じ系統の薬で、便秘もある方に向いています。
3)体力がなくてむくみも気になる方に:牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
体力が低下し、下半身の冷えが多い方に向いているため、高齢者の排尿障害などで多く使われます。
ただ、漢方薬はその人に合っているか否かが重要なポイントです。うまく合っていないと、効果が見込めないだけでなく、副作用がおきることもあります。どの漢方薬が自分に合っているのかを判断するのはなかなか難しいものですが、最近はA Iを活用した「あんしん漢方(オンラインA I漢方)」などのサービスも登場しているので、こうした信頼できる専門的なサービスを利用するのもよいでしょう。
4.別の病気のせいで尿漏れしている可能性も
おしっこが我慢できないという症状には、予期せぬ病気が隠れている可能性もあります。尿をするときに痛みのある「排尿痛」や、一回の尿量は少ないのに何度もトイレにいきたくなる「頻尿」がある場合には、膀胱炎が考えられます。その場合、抗生剤の内服などが必要になるため、泌尿器科医療機関を受診してください。
また、尿意を感じてから我慢するのが難しいという場合には「過活動膀胱」という病気も考えられます。この場合、膀胱を緩める抗コリン剤という種類の薬を飲むことで症状を改善することができます。こちらもご自分で判断せず、医療機関の受診をおすすめします。
5.膣トレを成功させてハッピーな産後ライフを!
尿漏れなんて高齢になってからの心配事だと思っていたのに、産後に「あれ?」と戸惑う女性は少なくありません。産後に限らず、老後の生活の質を維持するためにも、日々の生活に膣トレや漢方をぜひ取り入れてみてくださいね。
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6.教えてくれたのは……
医師 木村 眞樹子
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。
妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならない身体をつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。
臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットを活かしつつ漢方の処方も行う。
また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp
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