自分の子どもがほかの子どもと少し違うかもしれない……。繊細な子ども(HSC)でも発達障害でも、親なら誰もが悩む問題です。ひと一倍敏感な感覚と繊細さを合わせ持つ人を、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字を取って『HSP』、子どもの場合はHighly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)の頭文字を取って『HSC』と呼びます。生まれつきの気質ですが、「発達障害」と混同されやすいため、専門医にわかりやすく解説していただきました。
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繊細な子ども(HSC)と発達障害の子どもの違い
繊細な子どもと発達障害は、似たような気質も多く、混同される場合がありますが、相違点もたくさんあります。レッテルを貼ることなく温かい愛情を持って接しましょう。
繊細な子ども(HSC:ハイリー・センシティブ・チャイルド)
・空気を読みすぎる
・片づいていないと落ち着かない
・細部まで注意深いが、強い刺激があって気になる場合は不注意になることもある
・衝動的にはならない
・人の気持ちがわかる
発達障害の子ども
・空気が読めない
・片づけや整理整頓が苦手
・注意力が散漫になることがあるが、興味のあることには集中力を発揮する場合もある
・衝動的
・人の気持ちがわからない
集団の中で体調不良を起こしてしまう
HSCは、子どもの頃からその繊細な気質のため、幼稚園や保育園など集団生活の中で浮いた存在になりやすく、親が「自分の子どもがほかの子どもと少し違うかもしれない……」と思い始めるのもこの頃です。ADHD(注意欠陥・多動性障害)やADD(注意欠陥障害)など発達障害の子どもと勘違いされて扱われることもあります。
発達障害の子どもは、1クラスに2人はいるといわれています。発達障害は、脳機能の発達バランスが人とは違うため、生きづらさを感じる「障害」です。黙って座っているのが苦手で落ち着いて授業を受けられない、忘れ物が多いなど、集団での生活に困難を生じる特徴をたくさん持っています。
一方、HSCは、感受性が強すぎてコミュニケーションが困難になる「気質」です。クラスの中で集団に入ると圧倒されて苦しくなったり、周りが騒いでいること自体に耐えきれず、体調不良を起こして保健室に駆け込んだりすることもあるでしょう。
園児の場合は、保健室に駆け込むということはないようですが、集団から離れて一人で黙々と遊ぶほうが性に合っているという子もいます。「発達障害の特徴と自分の子どもの特徴が似ている」と多くの親が心配するように、確かに発達障害との共通点も多いようです。
しかし、よく観察していると、友達の状況をよく見て手助けできたり、泣いている子の気持ちを自分のことのように受け止めて一緒に泣いてしまったり、祖父母に優しい気遣いをしたりする子どもであることに親も気づくことができます。
繊細な子ども(HSC)も発達障害の子どもも接し方の基本は同じ
ほかの子どもと違うからと、特別扱いするのではなく、子どもが自分で自分の価値を認められるように、共感し、見守り、理解する姿勢が大切です。
3つの好環境で、成長とともにHSCと発達障害の気質は目立たなくなる場合も
●共感
子どもと悩みを共有し、悩みに共感しましょう。共感を得られると子どもも安心します
●見守り
過剰な手助けは、繊細な子どもが窮屈に感じてしまいます。できるだけ見守りましょう
●理解
繊細な気質を理解してあげましょう。自分をわかってもらえるだけで不安が和らぎます
悩みを聞き、困りごとに一つずつ対応していく
発達障害の場合は、相手の気持ちや立場を考えるようなことはありません。空気を読んで周りに対する気遣いを見せるようなことも苦手なので、空気を読んで周りを気遣う子どもは、おそらくHSCの可能性が高いといえます。
ただ、子どもの場合は、曖昧なことも多いため、HSCか発達障害かを躍起になって診断をつける必要はありません。決めつけることで子どもにレッテルを貼り、「この子は、こういう特性が見受けられるから、こういうふうに対応したほうがいい」と、型にはめてしまうこともあります。それをして安心するのは周りの大人たちだけです。
特に、HSCの場合、子どもの頃から物事の本質を見抜くところがあるので、「嫌なところを突いてくる扱いにくい子、厄介な子」と、大人から邪険に扱われることも。そういう経験が続くと、自分の価値を自分で認められなくなり、成長するに従って繊細な気質はどんどん強くなってしまいます。まずは、今の環境の中で、困っていることがないかを真剣に聞き、その困りごとに一つずつ対応していくことが大事です。HSCには、環境要因が強く気質に表れます。上記のように共感、見守り、理解のある環境で、自分の価値を認められるような子ども時代を過ごすことができれば、繊細な気質は薄まっていくこともあるのです。
また、HSCにきょうだいがいる場合、自分たちの間に公平な扱いを求めるため、公平ではないと感じると不満が強く出ます。HSCであることを意識せず、公平な対応を心がけましょう。
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教えてくれたのは……
新宿ストレスクリニック名古屋院院長 本 将昂(もと・まさたか)
【Profile】
精神保健指定医。日本精神神経学会認定精神科専門医。2011年、京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神神経科、大阪赤十字病院精神神経科、関西青少年サナトリューム、新宿ストレスクリニック梅田院勤務を経て、2018年8月より新宿ストレスクリニック名古屋院院長に就任。患者一人一人の悩みと向き合うていねいなカウンセリングと診療に定評がある。近著に『「繊細な人」の心がすーっと楽になるヒント』(宝島社)がある。
新宿ストレスクリニック
https://www.shinjuku-stress.com
新宿ストレスクリニック名古屋院
https://www.shinjuku-stress.com/clinic/nagoya
(抜粋)
TJ MOOK『「繊細な人」が楽に生きられる本』
監修:本 将昂
我が子の気質はどのタイプ? 子育ての参考に! キッズコーチングの竹内エリカ先生による赤ちゃんの気質診断
構成&文:大橋美貴子
イラスト:サキザキナリ、ニシヤママイ、関根美有
編集:入江弘子
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(TJ MOOK『「繊細な人」が楽に生きられる本』)
Web編集:FASHION BOX