繊細な気質は、生まれつきのものなので個性ともいえます。これまで、その繊細さゆえに人間関係に振り回されたり、刺激によるストレスで疲れ果てて、「こんな自分をなんとかして変えたい」と思ったりしたこともあったでしょう。
しかし、繊細な気質が生来のものであるなら、それを封じ込めたり無理に変えようとするほうが不自然です。おそらく、そっちのほうがずっと苦しいのではないでしょうか。
ここでは繊細さを持った自分のままでいてもいいと思えるようになる、幸せのコツを紹介します。自分のありのままを受け入れて、まるごと愛することができれば、繊細さが苦痛ではなくなり、楽に生きられるようになるでしょう。
はみ出し者の経験からいい人でいようとしてきた
繊細な人は、自分よりも他人に認められたいという思いが強いので、「いい人でいなければならない」と、自分に完璧を求めて、たくさんの高いハードルを設けています。
なぜそうなるのかというと、繊細な人は、親からは「育てにくい」と思われたり、学校でも「神経質で扱いにくい」「集団行動ができない」など、面倒な存在として周囲から浮いたり、子ども時代から、集団のルールからはみ出した存在として扱われてきた経験があるからです。
面倒な存在として扱われるのは誰だってつらいことです。繊細な人は、そう扱われないための手段として、優秀ないい人でいようとします。そうすることで、自分は周りから必要とされ、仲間に入れてもらえると信じて、高すぎるハードルを設定し、過度なルールで自分を縛ってしまうのです。
しかし、高すぎるハードルは越えられないこともあり、失敗すると自己嫌悪に陥り、自分を責めたり否定して、結果的にどんどん自尊心が低下するという悪循環を生みます。
【「いい人」でいようとして繊細な人が陥りやすい思考の悪循環】
自尊心が低いと「いい人なら好かれる」「優秀なら必要とされる」と、過剰な努力を続け、結果的に自尊心にはマイナスの影響を与えます。
1. 自尊心の低さから自分は価値のない人間だと思い込む
↓
2. いつでも優秀でいなければ、周りに好かれず認められないと過度にがんばろうとする
↓
3. 完璧でいるために自分の能力以上の高い自分ルールを課す
↓
4. ルールどおりにできないことがあれば自分を責め、さらに自尊心が下がる
(1.に戻り繰り返し)
【この悪循環から抜け出すためには】
自分ルールのハードルを下げ「いい人」でいようと過度にがんばるのをやめる
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自分を客観視すると高すぎるハードルは下がる
自分を認められるようになるには、まず、自分に課した高すぎるハードルを下げて、この悪循環を断ち切らなければいけません。そこで役立つのが「自分ノート」です。自分ノートを繰り返し読み返すと、自分の能力の限界や弱点などが見えてきます。等身大の自分が見えると、今まで自分に課していたルールは、とても厳しいものだったこともわかるでしょう。すると、おのずとハードルを下げざるを得ません。
これと並行して、ハードルを下げたときの周りの反応を自分ノートに書き込んでいきます。また、課していた自分ルールをあえて破るというミッションも遂行してみましょう。ルールを破ったら「嫌なやつだ」と思われるのではないかと思いきや、周りの人の自分に対する評価は変わりがないことに気づけるはずです。
それまで、いい人でいることに過剰にこだわっていたことがバカらしく感じるかもしれません。こういう気づきが増えることで、自分自身がどんどん楽になり、自分を認められるようになっていきます。
【自分ルールの例】
・どんなときもベストを尽くさなければならない
・困っている人がいたら助けるのは当たり前
・人に迷惑をかけてはいけない
・頼まれたら絶対に断らない
・いつでも周りを楽しませなければいけない
・自分に失敗は許されない
……など
「がんばりすぎ」をやめて「ありのまま」の自分を認めるための4つのステップ
自分を認めるには、「自分はいい人でいなければ」と自分に課した高すぎるハードルを下げることが大事です。そこで、自分を見える化し客観的に見つめられる「自分ノート」(自分の取扱説明書)を作って活用しましょう。
【STEP 1】 何がうまくできないのか自分の弱点を見直す
自分ノートから自分の弱点を抜き出して分析します。自分が苦手なこと、できないこと、限界点などの弱点を正確に把握すると、自分で課したハードルは下げざるを得ません。
【STEP 2】 自分ルールを「自分ノート」に書き出してみる
繊細な人は「いつもいい人でいなければいけない」という考えから「自分はこうすべき」というルールで自分を縛っています。自らを振り返って、自分ルールを書き出してみましょう。
【STEP 3】 少しずつ自分ルールを破り結果を記録
「頼まれたら絶対に断らない」という自分ルールがあるとしたら、試しにそのルールを破り、頼みごとを断ってみましょう。そのときの相手の反応や結果を具体的に自分ノートに記録します。
【STEP 4】 「自分ノート」を繰り返し読み返す
自分ノートを読み返すと、自分にどれだけ高いハードルを課していたかや、自分ルールを破っても自分への評価は変わらず、自分も楽でいられることに気づくはず。その気づきが重要です。
自分:「この仕事を手伝ってもらってもいいですか?」
周りの人:「はい、喜んでお手伝いしますよ」
自分ルールのハードルを下げても周りの人に受け入れてもらえた!
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教えてくれたのは……
新宿ストレスクリニック名古屋院院長 本 将昂(もと・まさたか)
【Profile】
精神保健指定医。日本精神神経学会認定精神科専門医。2011年、京都大学医学部卒業。京都大学医学部附属病院精神神経科、大阪赤十字病院精神神経科、関西青少年サナトリューム、新宿ストレスクリニック梅田院勤務を経て、2018年8月より新宿ストレスクリニック名古屋院院長に就任。患者一人一人の悩みと向き合うていねいなカウンセリングと診療に定評がある。近著に『「繊細な人」の心がすーっと楽になるヒント』(宝島社)がある。
新宿ストレスクリニック
https://www.shinjuku-stress.com
https://www.shinjuku-stress.com/clinic/nagoya
(抜粋)
TJ MOOK『「繊細な人」が楽に生きられる本』
監修:本 将昂
構成&文:大橋美貴子
イラスト:サキザキナリ、ニシヤママイ、関根美有
編集:入江弘子
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Web編集:FASHION BOX