[南果歩]乳がんを公にすることで繋がった仲間「Can友」が心の支えに

[南果歩]乳がんを公表してできた「Can友」山吹祥子さんとのエピソード

南果歩さん『大人のおしゃれ手帖』連載「I am Here!」

『大人のおしゃれ手帖』で連載中の南果歩さんの「I am Here!」。果歩さんは2016年に受けた乳がん手術をきっかけに、「Can友」という新しい繋がりができたそうです。Can友の素晴らしさについて綴ってくれました。

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【南果歩】「Breast Cancer 2」

2016年3月に乳がんの手術を受けた直後から、私は自身の病気を公にしてきました。

やはり、がんというのは誰にとっても人生の中の大きな出来事であり、同じ経験をした人と繋がったり、また自分の経験したことを伝えることで少しでも検査の大切さを広めていきたいと思ったからです。病気というのはネガティブなことだと思われていますが、ネガティブなことこそ情報を共有しあい、仲間を持つことが何よりの励みになるのではないでしょうか。とても一人では持ちこたえられないこともあります。

自身のがんを公にしたことにより、色んな方から「実は私も……」という言葉をかけていただく機会があります。それは知り合いだけでなく、街を歩いている時やSNS上であったりもします。

がんは辛いことだけでなく、今まで関わりのなかった心強い仲間を繋げてくれていたのです。

私はがんを通じて知り合った友を「Can友」と呼んでいます。これは私が作った造語なのですが、「Cancer(がん)」のCanでもありますが、「できる」のCanでもあるのです。

Can友とは色んな話をします。もちろん治療や薬の話、体調の話、同性同士きたんのないぶっちゃけトークも!
今は、結婚前の仕事に燃える20代・30代、親の介護の悩みが出てきた40代、そして同世代の50代に至るまで、さまざまなCan友と繋がり、色んな相談を受けたりしています。それはきっと、ある人との出会いが私に大きな影響を与えたからだと思います。

私が退院してすぐに、懇意にしている編集者の女性から、是非会わせたい人がいると言われお会いしたジュエリーデザイナーの山吹祥子さんは、私の初めてのCan友です。

祥子さんに初めてお会いした時、私は手術をすれば全てが元通りになると思っていたのに手術のダメージは想像以上に大きかったこと、そして投薬が身体に合わず、メンタルまでもやられてしまったと愚痴をこぼし、誰にもわかってもらえない心の内を吐露しました。祥子さんはひとしきり私の話を穏やかな笑顔で聞いてくださり、励まし、「大丈夫よ。悪いところは全部取り切ったのだから。この病気はステージによっても違うし、人それぞれで、治療法もさまざまだからね」と言われたのです。

祥子さんは術後どうだったんですかと私が質問すると、「私の場合は、2014年にがんが見つかった時にはステージ4で、すでに肺に転移をしていたから、手術は受けてないんですよ。放射線治療とホルモン療法をやっているんです。だからがんとは長いお付き合いなのよ」と、まるで小さな子どもに説明するように優しくご自身の病状を話してくれたのです。私は驚きを隠せませんでした。そして術後の辛さを滔々と話していた自分の愚かさを恥ずかしく思いました。

本当にこのがんという病気には人それぞれの病状があり、同じ病気であっても同じではないのだと、私はこの時に祥子さんに教えられたのです。

病巣を持ちながら生活し仕事を続けることは、私の苦しさとは比べものになりません。

それからは私の舞台をお嬢さんと観に来てくださったり、私も祥子さんのジュエリーブランド「Quellechance(ケルシャンス)」の展示会などがあると訪ねて行ったりという関係が続いています。
抗がん剤治療にも前向きに取り組まれている祥子さんは、ピンクリボン活動にも積極的で、乳がんと戦う全ての人々を素敵なアクセサリーで応援しています。

「Quellechance」のアクセサリーは、祥子さんのお人柄そのままに、優しくしなやかに私を引き立ててくれます。

乳がんを経験した後の私は、目には見えない多くの仲間達と生きている気がします。私が頑張ることで、きっと同じ病気を経験したCan友は何かを感じとってくれていると信じています。もちろん私自身もCan友からたくさんの勇気をいただいていることは言うまでもありません。祥子さん、これからも私の大事なCan友でいてね! あなたの笑顔が大好きです!

[南果歩]乳がんを公にすることで繋がった仲間「Can友」が心の支えに
ブラウス¥47,300、パンツ¥49,500/ともにボグナー(三喜商事)、イヤーカフ(上)¥13,200、(下)¥13,200/ともにシルバースプーン、リング¥110,000/カラットアー(イセタンサローネ東京)

[南果歩]乳がんを公にすることで繋がった仲間「Can友」が心の支えに

山吹祥子さんがデザインする「Quellechance」。インスタグラムでも作品を見ることができます。
Instagram:@quellechanceshoko


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PROFILE/南果歩(みなみ・かほ)

兵庫県出身。短大在学中に映画『伽倻子のために』(小栗康平監督、1984年)のヒロインオーディションに応募、主役に抜擢されてデビュー。第62回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した、ブリランテ・メンドーサ監督最新作『GENSAN PUNCH~(義足のボクサー)』(日本、フィリピン合作映画/邦題は仮)、ダニエル・デンシック監督『MISS OSAKA』(デンマーク・日本・ノルウェー合作映画)がそれぞれ今年公開予定。

 

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photograph:Takashi Noguchi(San Drago)
styling:Kuniko Sakamoto
hair & make-up:Kei Kokufuda
text:Kaho Minami

大人のおしゃれ手帖 2021年7月号

※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください

web edit:FASHION BOX

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