女性医療ジャーナリスト増田美加さんがナビゲートする
もっと話そう!! 尿もれのこと
人生100年時代をいつまでも元気に若々しく、自分らしい人生を送りたいですね。閉経以降、私たち女性の活動を大きく妨げるのが「尿もれ」です。でもご安心ください。いまは早期の治療で、尿もれは改善できるようになりました。二宮レディースクリニック院長の二宮典子先生にお聞きしました。
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どうして尿もれ(尿失禁)しちゃうの?
女性泌尿器科医の二宮典子先生に、尿もれの種類や原因など、増えている60代女性の尿もれのリアルな現状を伺いました。
妊娠、分娩経験や肥満、便秘なども原因に!
ひと口に「尿もれ」と言っても、クシャミでもれる、急にトイレに行きたくなるなど症状はさまざまです。60歳以上の男女の約78%は、なんらかの尿のトラブルがあって、ほとんどの症状は加齢とともに頻度も増えてくるといわれています(*)。
「診察にあたっていると、実に多くの女性が尿もれに困っているという実感があります。年々、尿失禁に悩む人は増加傾向で、60代以降の女性はもちろんですが、産後の若い人にも尿もれの悩みは増えています」と二宮典子先生。
女性の尿トラブルで多いのは、どんな症状ですか?
「いちばんは、腹圧性尿失禁といわれる咳やクシャミでもれるタイプです。次に多いのは、切迫性尿失禁。これは突然、トイレに行きたくなり、我慢できずもれてしまうものです。切迫性尿失禁の急な尿意は、自分の意思に反して膀胱の強い収縮によって起こるので、過活動膀胱(かかつどうぼうこう)と言われる状態が背景にあります」(二宮先生)
どんな人が尿もれを起こしやすいのでしょうか?
「尿トラブルの大きな原因のひとつは、骨盤底筋の緩みです。そのため腹圧性尿失禁は、妊娠、分娩経験がある方に圧倒的に多く、肥満、便秘なども骨盤底筋の緩みの原因になります。切迫性尿失禁は、過活動膀胱によって起こりますが、その原因は明確にはわかっていないのです。過活動膀胱は、40歳以上の男女約1千万人以上がかかっていて、その半数に切迫性尿失禁があるといわれています。また、閉経後にデリケートゾーンに乾燥、かゆみ、尿もれ、頻尿、痛みなどがあるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)という疾患とも複雑に関連しているのです」(二宮先生)
(*)女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]より
主な尿失禁の種類
腹圧性尿失禁
重い荷物を持ち上げる、咳やクシャミ、排便時のいきみなど、おなかに力が入ると、もれてしまいます。週1回以上経験している女性は500万人以上とも。骨盤底筋群を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こります。
切迫性尿失禁
頻尿になり、急に尿がしたくなって我慢できない過活動膀胱が起こり、間に合わずにもれてしまいます。多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮し、尿意切迫感や尿失禁が起こります。
尿もれのリスクが高い人はこんな人
□出産して太った人
□便秘している人
□喘息を患っている人
□頻繁に重いものを持つ人
特に腹圧性尿失禁は、妊娠、分娩と大きくかかわっています。産後しばらくすると、一度は治まっても加齢によって再び出現します。重い物を持ち運びする仕事や排便時の強いいきみ、喘息も骨盤底筋を傷める原因です。
覚えておきたい関連キーワード
GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)
閉経後、泌尿器や生殖器の老化によって起こる症状で、尿もれ、頻尿、性交痛、かゆみ、ニオイなどの原因に。GSMは慢性的にどんどん進行し、閉経後の半数以上の女性が悩んでいるといわれています。
過活動膀胱
尿意切迫感があって、頻尿(何回もトイレに行く)や夜間頻尿(就寝後何回もトイレに起きる)があります。加齢、ホルモンの低下、血管や神経の障害でも起こりますが原因が不明なことも。
治療薬や手術にはどんなものがある?
尿もれ、頻尿は、もう我慢する病気ではなくなりました。ひとりひとりの症状に合わせて選べる時代です!
症状に合わせてオーダーメイドの治療が可能に
「昔は、恥ずかしいから、もう年だからと我慢している女性も少なくありませんでした。でも、いまはたくさんの治療法があります。ひとりひとりの症状に合わせて、相談しながら適した治療法を選び、複数の治療を組み合わせることもできるようになりました。まさにオーダーメイドの治療です。ですから、もう我慢しないで!」と二宮典子先生。
クリニックでは、骨盤底筋を鍛える体操の仕方を教わることもでき、薬の種類も豊富です。ほかにも注射や、磁気、高周波、超音波治療など、さまざまな治療法があります。健康保険が使える治療も少なくありません。最終的には手術という方法もありますが、その前にできる治療はたくさんあります。もし、尿もれの不安や悩みがあったら、症状がひどくなる前に受診することで改善しやすくなります。
主な治療方法
□骨盤底筋体操
腹筋に力を入れずに膣や肛門を締める体操。腹圧性尿失禁や過活動膀胱に効果的です。詳しいやり方は、クリニックで指導してもらうことができます。
□膀胱訓練
排尿は我慢せずにこまめにというのは間違い。尿を溜められなくなってしまいます。少しずつ排尿間隔を延ばすことで、膀胱容量を増加させます。2~3時間、排尿間隔をあけられることを目指します。
□排尿日誌
起床から翌朝までの排尿時刻や排尿量などを記録。自分でも排尿状態や失禁タイプを把握、推測できて、治療にも役立ちます。
□薬(西洋薬、漢方薬)
過活動膀胱、切迫性尿失禁には、抗コリン薬、β3受容体作動薬など種類も豊富。症状に合わせて漢方薬も併用可能。腹圧性尿失禁は薬の効果はあまりありません。
□ボトックス注射
薬の治療で改善しない過活動膀胱、切迫性尿失禁に対する、保険適用の治療。顔のボトックス治療と同じ成分を尿道から内視鏡を挿入し、膀胱壁に注射します。
□仙骨神経刺激療法
薬で改善しない過活動膀胱、切迫性尿失禁への保険適用の治療。臀部から針金状の電極を差し込み、臀部の皮下にも心臓のペースメーカーのような電気刺激装置を埋め込み、膀胱を刺激します。
□磁気刺激治療
週2回、約30分椅子に座ることで、磁力によって骨盤底の筋肉や神経を刺激します。腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に対して、いずれも保険適用で効果が高い治療です。
□CO2レーザー
フラクショナル炭酸ガスレーザー治療は、顔に行う美容医療と同じCO2レーザーを外陰部と膣に照射する自由診療の治療。尿もれへの効果は限定的ですが、膣萎縮、乾燥、性交痛などのGSMに有効です。
□高周波治療
デリケートゾーンの粘膜に高周波を当て、乾燥、かゆみ、ゆるみなどの症状を改善します(自由診療)。膣粘膜がしっかりすることで、尿を我慢できるようにする、尿もれの軽い人向け。
□ハイフ(高密度焦点式超音波治療法)
ハンドピースを膣内に挿入し、超音波を粘膜に当てコラーゲンの再生を促す治療(自由診療)。膣に弾力が生まれ、たるみを改善。軽い尿もれにも。
□手術(手術は腹圧性尿失禁のみ)
腹圧性尿失禁への尿道スリング手術(TVT、TOT手術)は85~90%の割合で尿失禁が改善。膣の前壁を小さく切開。網目状のテープを置いて尿道を支える手術です(保険診療)。
二宮先生! 細かいことを質問します!
尿もれの症状は何科に行けばいいですか?
まずは近くの婦人科へ。内診にも慣れていますし、婦人科検診も同時にできます。もちろん女性泌尿器科は、専門ですが数が多くないので、重症度が高いときの受診でも。
クリニックや病院に行くときになにを持っていくといいですか?
3日分の排尿の量と時間を記録したもの(排尿日誌)があると治療に役立ちます。いつから、なににどう困っているか、治療でどうなりたいかなどの希望もまとめてください。お薬手帳も忘れずに。
これってNG行為ですか?
「尿もれをしないように」と、ついやってしまいがちなこんな行動。実はNGだったんです!
×:映画や舞台、お出かけ中に尿意が来る前に「トイレ」に行くこと
尿はできるだけ溜める習慣をつけましょう。先回りしてトイレに行かないで。
×:尿もれパッドやシートではなく生理用ナプキンで代用する
尿もれパッドは消臭や逆戻り防止などの機能が充実。生理用パッドは吸収量が少ない。
×:尿もれパッドを予防のため、つけっぱなし
尿もれを悪化させる危険性があります。かぶれる恐れも。使うときはこまめに取り替えて。
×:睡眠中、トイレに行きたくないので水分を控える
水分は普通に摂ってください。もし寝ている間に2回以上トイレで起きるなら治療を。
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教えてくれた方……二宮レディースクリニック院長 二宮典子先生
【PROFILE】
女性泌尿器科医。漢方専門医。女性のための病院では聞けない情報を発信する『ココシカ診療所』チャンネル開設。日本泌尿器科学会認定専門医・指導医。
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ナビゲーターはこの方!……女性医療ジャーナリスト 増田美加さん
【PROFILE】
約30年以上にわたって女性の健康と医療をテーマに執筆、講演を行う。近著に『もう我慢しない! おしもの悩み~40代からの女の選択』(オークラ出版)ほか多数。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。
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取材・文/増田美加
イラスト/北野 有
(素敵なあの人 2022年7月号)
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WEB編集/FASHION BOX