いつ死ぬか、なんて誰にもわからないけれどキリが良いというだけの理由で100年に設定――してみると、30代の後半なんて、人生グラフ上ではとっても前半。だけど、もっと前半地点にいた頃よりはもちろん、それなりに知識がついている。
☆前回の記事はコチラ→「仕事、恋愛、結婚、子育て、そして離婚…お疲れ30代女子の深夜トーク【ここからは、オトナのはなし】」
人生グラフのほとんどはグラデーションでできている
たとえば、人生の“流れ”というものがどんなものなのか、をここまでくるまでの体感を持って学んでいる。だからそのグラフの書き方自体が、子どもの頃とは変わっている。
小学生の頃に人生グラフを書くことを趣味としていた私は当時、横に伸びるグラフの所々で縦の線を強く引いて時期を区切っていた。「小学生時代」「中学生時代」と分かりやすく人生を区切る感覚の延長線上に、「結婚」や「育児」や「仕事」もあったのだろう。
だけど、今脳内に想像する人生グラフの中に、仕切りはない。「結婚」や「離婚」などのターニングポイントはもちろんある。だけど、それらは点であり、人生の時期と時期を分ける間に強く引かれた線はない。青春時代がブルーなら、今はオレンジ?というように“時期”は色を変えてカラフルに分かれている。だけど、色と色は、線によってハッキリと隔てられているのではなく、グラデーションを描きながらゆるやかに時間をかけて新たな色へと繋がっている。
冒頭で私がCに伝えた「人生が動く時には勝手に動くから、それまでは流れに身を委ねる時期があってもいい」というのはまさに、色と色とが移り変わるグラデーション期と言えるだろう。そして、もしかしたら人生グラフのほとんどはグラデーションでできていて、単色がハッキリと見えている時期のほうがずっと短いのかもわからない。
今世でやり残したことを来世にパスするのもアリ
人生のありとあらゆることに対しての白と黒をハッキリつけなきゃいられない性分である私も、少しずつだけど人生というものを学んできている気がする。
もっと言えば、いや、言えば次元が飛びすぎだと笑われるかもしれないけれど、今生きているこの人生グラフの次のページにあるかもしれない「来世」までが視野に入ってきた。
「30歳」までに全てを手に入れる準備を完了させるために焦り狂っていた、過去の超コントロールフリーク(全ての物事のコントロールを自分でしたがる人)な私が聞いたら、鼻血を出して後ろに倒れてしまうかもしれないけれど、今世でやり残したことを来世にパスするのもアリだと思い始めている。
だって人生って、ただの人間である自分ごときには決められない不思議に満ちている。
ならば、欲しいもののために自己ベストで努力をした後は、運命に委ねて力を抜こう。
「私たちは大丈夫。だって私たちは強いから」
恋人が家を出て行ったという報告がCから入ったのは、まさかの翌日のことだった。正確には、「このままではきっと貴女に迷惑をかけ続けてしまうから、自分は出て行ったほうがいいか?と聞かれたので頷いた」とのことだった。
彼は、アルコール使用障害。彼のことを心から心配するガールフレンドがするようなことは、もちろんCも全てした。リハビリ施設もすすめたが彼にそこまでの意志はなく、恋人とはいえ他人の助言などでは力が及ばないのが“アルコール使用障害”の恐ろしさなのだ。
「大丈夫?」と聞いた私にCは言う。
「大丈夫だよ。ありがとう」。
あんなに「疲れた」ってため息をついていたのに、Cの声には凛とした強さがあった。状況があまりにも過酷すぎると、人は切り抜けるために必要なスイッチが入る。
「私たちは大丈夫。だって私たちは強いから」
おまじないのような合言葉を優しくかけて通話を切ったら、窓から入る夜風がいつのまにか冷たくて、一瞬鼻の奥がツンとなった。彼女の切ないタフさに、泣きそうになった。
本当にピンチの時、人は弱音を吐かない。口に出す言葉さえも味方につけて自分を奮い立たせなきゃ、明日会社に行けないからだ。
窓の外では、季節が秋へと、1年の中で最もエモーショナルなグラデーションを描きはじめている。
LiLy/作家
81年神奈川県出身。蠍座。N.Y.、フロリダでの海外生活を経て上智大学卒。著作多数。この連載からの最新刊『目もと隠して、オトナのはなし』が好評発売中!プライベートでは2児の母。
(otona MUSE編集部)
text:LiLy
illust:ekore
edit:SATOKO ISHIKAWA[vivace], FASHION BOX
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