究極のロングセラー!日本の伝統工芸品が愛される訳

日本には「伝統的工芸品」と呼ばれるものがあり、その数は全国になんと232品(2018年11月7日現在)!職人さんたちが長い年月守り、磨き続けた技と意匠、魅力について、田中敦子さんに案内していただきました。

和の香りと温もりに癒される。日本発のインテリアグッズ特集

ナビゲーターは……

出典: FASHION BOX
photo by Aya Kawachi

田中敦子さん
工芸、きもの、日本文化をフィールドに、書き手、伝え手として活動。関連の編著書多数。工芸、きもの回りのつくり手を応援するトークイベントやセレクト展のプロデュースなど、伝え手活動が増加中。

伝統的工芸品とは

●主として日常生活で使われるもの
●製造過程の主要部分が手作り
●伝統的技術または技法によって製造
●伝統的に使用されてきた原材料
●一定の地域で産地を形成

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浄法寺塗(岩手)

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こんなにある!日本全国の伝統工芸品

※2018年11月7日現在、経済産業大臣指定した「伝統的工芸品指定品目」232品より抜粋。

【北海道】
二風谷アットゥシ(北海道)

【東北】
津軽塗(青森)
南部鉄器、浄法寺塗(岩手)
宮城伝統こけし、雄勝硯(宮城)
樺細工、大館曲げわっぱ(秋田)
置賜紬(山形)
会津塗、奥会津編み組細工、奥会津昭和からむし織(福島)

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大館曲げわっぱ(秋田)

【関東】
結城紬(茨城、栃木)
笠間焼(茨城)
益子焼(栃木)
伊勢崎絣(群馬)
秩父銘仙(埼玉)
房州うちわ(千葉)
江戸指物、江戸からかみ、江戸切子、本場黄八丈(東京)
鎌倉彫、箱根寄木細工(神奈川)

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江戸切子(東京)

【北陸】
小千谷縮、村上木彫堆朱、越後三条打刃物(新潟)
高岡銅器、井波彫刻、高岡漆器(富山)
加賀友禅、九谷焼、輪島塗、山中漆器(石川)
越前漆器、越前打刃物、越前和紙(福井)

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加茂桐箪笥(新潟)

【中部】
飛騨春慶、美濃焼、美濃和紙、岐阜提灯(岐阜)
信州紬、木曽漆器、松本家具、内山紙(長野)
甲州水晶貴石細工、甲州印伝(山梨)
駿河竹千筋細工(静岡)
有松・鳴海絞、常滑焼、豊橋筆、尾張七宝(愛知)

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【近畿】
大阪唐木指物、大阪浪華錫器、堺打刃物(大阪)
西陣織、京友禅、京扇子、京繍、京焼・清水焼(京都)
丹波立杭焼、豊岡杞柳細工(兵庫)
奈良筆、奈良墨(奈良)
紀州漆器(和歌山)
信楽焼、近江上布(滋賀)
四日市萬古焼、鈴鹿墨、伊賀焼、伊勢形紙(三重)

【中国】
弓浜絣(鳥取)
石州和紙(島根)
備前焼(岡山)
熊野筆、宮島細工(広島)
萩焼(山口)

【四国】
阿波正藍しじら織(徳島)
香川漆器、丸亀うちわ(香川)
砥部焼(愛媛)
土佐和紙(高知)

【九州】
博多人形、久留米絣、博多織、小石原焼(福岡)
伊万里・有田焼(佐賀)
三川内焼、波佐見焼(長崎)
肥後象がん(熊本)
別府竹細工(大分)
都城大弓(宮崎)
本場大島紬、薩摩焼(鹿児島)

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博多人形(福岡)

【沖縄】
久米島紬、壺屋焼、首里織、琉球びんがた(沖縄)

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伝統工芸TOPICS

<1>ふたつの県にまたがる結城紬は同じもの?別ものなの?

真綿糸と呼ばれる軽くて暖かい紬糸を原始的な地機で織り上げる結城紬は、国の無形文化財。伝統工芸品としては、茨城県と栃木県の両方で指定されています。古来、鬼怒川流域で広く養蚕が行われ、織物が盛んになったことが結城紬の始まり。そのエリアが近代になってふたつの県に分けられてしまったためで、違いがあるわけではありません。

<2>世界的なアーティストが手がけるあの照明、実は伝統工芸でした

岐阜県の伝統的工芸品である岐阜提灯は、お盆提灯で知られますが、実はイサム・ノグチがデザインした照明AKARIシリーズも岐阜提灯なのです。1951年に観光で岐阜を訪れたノグチが岐阜提灯に関心を寄せたことから生まれたもので、いまもなお伝統的な岐阜提灯の技術により制作されているロングセラーです。

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<3>鉄分摂取や湯味を求めるなら鉄瓶内部の確認を忘れずに

昨今、国内外で大人気の鉄瓶ですが、購入の目的が鉄分摂取や湯味の良さならば、内部の加工を必ず確認してください。手入れの手間が省けるホウロウは便利ですが、鉄瓶ならではの効能は期待できません。伝統的な鉄瓶は、使いながら内側に湯垢の皮膜をつけることで錆を防ぎます。道具を育てる実感があり、なかなか楽しい作業です。

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南部鉄器(岩手)

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豊かな自然があってそれを生かす人がいて
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伝統工芸と呼ばれる品々は、長い歴史の中で技術や造形を磨いてきた、主に手作業によって生み出される道具です。道具、という言葉を使うのは、そこに必ず機能が備わっているからです。一見、生活道具とは考えにくい人形や玩具、仏壇なども、日本人の暮らしの彩りや冠婚葬祭に欠かせない道具として、大切に受け継がれてきました。

変化に富んだ四季のある湿潤温暖な日本は、自然の恵み豊かで、手仕事の素材が身の回りにたっぷりありました。また、日本列島はユーラシア大陸の東のはずれにあって、四方を海で囲まれています。海洋には貿易風や海流が巡り、高度な文化が吹き寄せました。

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箱根寄木細工(神奈川)

産業革命によって画期的な機械が発明される以前、衣食住に関わるすべてのものが、手作業から生まれるものでした。これは世界規模で行われてきた人の営みですが、日本の場合は、恵まれた地理的条件にあったことから、土着文化にとどまることなく、大陸からの高度な文化を受け取り、手に入れやすい素材を使いながら風土になじませ、高品質に仕上げる、順応性と技術力がありました。

そんな日本の工芸技術が極まったのは、実は江戸時代。各藩の大名たちは城下町に職人を集めて、暮らしに必要な道具をつくらせました。また、藩を豊かにするためにも農業や漁業、林業をはじめとした産業に力を入れ、特産物を編み出し、全国に流通させもしました。

和の素材と技で魅了。日本ブランドの麗しジュエリー

様々な生業が発達すれば、生産性を支える道具も必要になります。木工、竹工、陶磁、和紙、金工、染織などなど、今、各県に幅広い素材と技術に支えられた伝統工芸が残っているのは、戦乱の世が終わり、人々がせっせとモノづくりできる平和な江戸時代が長く続いたからです。

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岩谷堂箪笥(岩手)

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使うほどに育つ工芸品は豊かな日常の必需品に
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量産されるファストファッション、安価で扱いが楽なプラスチック製品。それだけでも十分暮らしていける時代です。でも、私たちはなんとなく物足りなさを感じています。

サスティナブルなものへの関心が高まっているのは、環境問題への意識の向上とともに、生活の質を高めたい思いがあるからでしょう。日々使って心楽しく、使うほどに味わいが増すから手入れもまた苦にならない伝統工芸の道具は、そんな時代が求める一つの答えです。

一生愛せる良質バッグ、日本ブランドで見つけました

現在、日本全国にある伝統工芸の現場は、決して安泰ではありません。材料や道具が失われつつあり、職人は高齢化、後継者は足りません。需要の減少も深刻です。そんな中でも、現在の暮らしにふさわしい形を生み出す挑戦が続いています。

長い歴史に裏打ちされた技術でしなやかに時代のニーズに応えてきた伝統工芸の品々には、飽きのこない機能美があります。多く持つ暮らしを卒業し、納得いくものを選び抜こうと考えるとき、伝統工芸は、ぐんと身近な存在になるはずです。

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江戸木目込人形(東京)
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text: Atusko Tanaka
edit_AYAKI ANDO[vivace], FASHION BOX
大人のおしゃれ手帖 2019年9月号
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