家の中に常時存在するもののなかで、私たちの体を蝕む主な原因は、悪性ホコリ・カビ・細菌の3つ。さらに、ダニやウイルス 、花粉、細菌が付着しているゴキブリなども健康を脅かす恐れがあります。本記事では、そのなかでもカビに特化して、その発生原因や上手な掃除法、季節別のお掃除テクニックなどをご紹介します。ポイントを押さえた掃除で、家族の健康を守りましょう!
《目次》
教えてくれたのは……
松本忠男(まつもとただお)さん
株式会社プラナ代表取締役、ヘルスケアクリーニング株式会社代表取締役、日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事。東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職。清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントに従事。1997年、医療関連サービスのトータルマネジメント事業を目的として、株式会社プラナを設立。これまで数多くのスタッフを指導してきた経験や、現場で体得したノウハウを、医療、介護施設、清掃会社などに提供している。現在は、スポーツと掃除を融合させたSOZY SPORTSを提唱するなど、健康と掃除に関する新しい取り組みに挑戦している。著書に『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)。
カビが発生する原因とは?
●カビが発生しやすい環境
カビは温度20度以上、湿度60%以上の環境を好み、風通しが悪いところではすぐに増殖してしまいます。私たちは、カビが目に見えるほど増殖して初めてその存在を知りますが、実は目に見えないカビが、部屋の至るところに生息しています。
カビは5マイクロメートル(0.005ミリメートル)という小さい胞子をつくり、繁殖する場所を求めて空中をさまよい落下します。そのとき、水滴や水分を含んだものがあればそのまわりに付着し、目に見えるカビへと成長していくのです。一度黒カビとなって発生するとなかなか取り除くことがむずかしいため、目に見えないうちからの対処が非常に重要です。
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●カビが発生しやすい時期
カビ発生の4大条件は、「温度」「湿度」「水」「栄養源」。温度20〜30度、湿度60%以上の環境で、水と食べカスやホコリなどの栄養源があると大量発生する恐れが。
湿度が高くなる梅雨から夏にかけては、カビが増殖する危険性が高まります。除湿対策でカビを撃退しましょう。
また、冬でもカビが発生する恐れがあることをご存じでしょうか。冬のカビは、窓付近の空気が冷やされて下流に移動するコールドドラフト現象により、冷えた空気が部屋の下部に集まって起こります。さらに、乾燥対策で使用する加湿器がカビを発生させる原因になることも。加湿器内部を洗わずにいると、カビの胞子が部屋全体に飛散する恐れがあるので注意が必要です。
●カビが発生しやすい場所
<キッチン/スポンジラック>
スポンジや台所洗剤がラックと接する底の部分は、なかなか乾かずカビが発生しやすいポイント。こまめに洗って清潔に保とう。
<キッチン/食器棚>
洗ってすぐの食器は、拭いただけでは完全に水気を取り除けないので、すぐにしまうのはNG。よく乾燥させてから片づけて。
<子ども部屋/おもちゃケースの底>
ケース内にものを詰め込みすぎると、風通しが悪くなり、底部分に湿気がたまる。
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健康を守る、松本式掃除の鉄則10カ条を紹介!
これまでの掃除の概念は、「キレイか汚いか」という評価しかありませんでした。しかし、キレイなのかそうでないかは主観でしか捉えられないため、人によって評価軸が変わってしまうという問題がありました。それを解消したのが、「松本式エビデンス掃除術」です。
1. 拭き掃除は一方向に拭く!
拭き掃除をするときに注意してほしいのが、ごしごしと往復がけをして拭くこと。この拭き方では汚れを伸ばしているだけで、取り除くことはできません。布巾をきちんと折りたたみ、汚れが最初に当たる側面が一方向になるように拭くのが正解です。
2. ホコリは舞い上がらせない!
ホコリが舞い上がった状態で掃除をすると、病原菌を含んだホコリを掃除中に吸い込んでしまい、体に悪影響を与えることも。掃除をするときは窓を開けない、ドタバタと動いてホコリを動かさないなど、掃除中にホコリが舞い上がらないようにすることが大切です。
3. 風とホコリが流れる道筋を把握する
気流とともにホコリも家の中を移動しますが、エアコンや窓の位置、人の動きなどにより風の流れは変わるため、どこにホコリがたまりやすいかは変わってきます。まずは自分の家のどこにホコリがたまりやすいかを知ることが、効率よく掃除をするための第一歩です。
4. まとめ掃除より日々のゆる掃除
日本には古くから年末に行う大掃除という文化がありますが、それでは病原菌から体を守ることはできません。1年も放置して汚れがたまる前に、毎日少しずつ掃除をするほうが、健康被害を抑えるのには効果的。数分でもいいので、毎日できる範囲で掃除をすることが重要です。
5. 急がず慌てずゆっくり動く
ホコリや細菌、ウイルスなどはとても軽いので、バタバタと動きながら掃除をするだけで、すぐに舞い上がってしまいます。空気中に浮遊すると取り除きにくくなってしまうばかりか、鼻から吸い込んでしまう恐れがあるので注意しましょう。
6. 上から下に向かって掃除する
掃除をするときは必ず上から下に向かって行いましょう。床掃除をしてから棚の上を掃除するというように、下から上に向かって掃除をすると、せっかく汚れをキレイに取り除いても、棚を掃除したとき再び床に汚れが落ちてしまいます。部屋のどの場所を掃除するときでも、基本は「上から下に掃除する」と覚えておきましょう。
7. 掃くときも拭くときも奥から手前!
掃除をするときは、上から下へ、奥から手前に向かって行うのが基本。このときも往復がけをするのは厳禁です。布や化繊ハタキなど、いずれの道具を使うときも、一方向に動かして汚れを集めるようにして取り除きます。
8. 寝室以外の掃除は朝にやる
日中は人の動きがあるので、常にホコリは空気中を舞っている状態です。そのため、掃除はホコリが床に落ち切った朝にやるのが正解。ただし、寝室は朝起きたときに布団から大量のホコリが舞い上がるため、朝ではなく夜寝る前に行うのがおすすめです。
9. 季節の変わり目に中掃除!
夏から秋にかけては、ダニの死骸を取り除くために布団を洗う、冬場の暖房を使うシーズンが終わったタイミングでエアコンフィルターを掃除するなど、季節の変わり目ごとに、大掃除まではいかない少し大変な中掃除をするのを習慣にして、病原菌や頑固な汚れを取り除いておきましょう。
10. 汚れは吸い取り、広げない
汚れを広げないことは、松本式エビデンス掃除の大原則!ゴシゴシこすると汚れがどんどん広がってしまうので、水や洗剤で汚れを浮かせた後は、乾いた布でスタンプを押すように汚れを優しく拭き取ります。
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重曹&クエン酸掃除のメリットと上手な使い方
重曹やクエン酸といった、自然界に存在する体に優しい素材を使ったナチュラルお掃除術をご紹介。合成洗剤を使わないので、小さなお子さんや年配の方がいるご家庭におすすめです。重曹とクエン酸さえそろえればすぐに始めることができるので、ぜひトライしてみましょう。
重曹は、粉のまま使う、ペースト状にして使う、お湯に溶かして使うという3つの方法があります。クエン酸は、水に溶けやすい性質があるため、主に水に溶かして使用します。それぞれにメリットがあるので、掃除をする場所に合わせて上手に使い分けましょう。
重曹&クエン酸掃除のメリット
重曹粉
重曹粉は水に溶けにくく粒子が細かいので、磨くものの表面を傷つけずに汚れだけを取り除く研磨剤として重宝します。また、水拭きしにくい場所を掃除したいときにも大活躍してくれます。
クエン酸水
弱酸性の性質を持つクエン酸は、水アカや石鹼カスなど、アルカリ性の汚れを中和して落とします。水に溶けやすい性質があるので、水に溶かしてクエン酸水として使用します。
重曹&クエン酸の上手な使い方
重曹粉
粉末をそのまま振りかけて使用
重曹粉は汚れやたわしに直接振りかけて使用します。調味料のケースなどに入れて使うと便利です。
クエン酸水
重曹と合わせて発泡させ、汚れを除去!
重曹粉1に対し、クエン酸粉2の割合で汚れに直接かけて水を注ぐと、化学反応がおきて発泡します。この発泡作用で頑固な汚れを取り除くことができます。
汚れや布などに吹きつけ、広範囲を掃除する
汚れに直接、または布やアクリルたわしなどに吹きつけ、磨いて落とします。主に水まわりの汚れを落とすときに使います。
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キッチン
●排水口のぬめり
できれば直接触りたくない排水口は、重曹とクエン酸の発泡作用を利用して汚れを取り除きましょう。
洗剤の種類:重曹粉、クエン酸粉
お掃除アイテム:計量カップ、ラップ
1. 排水口全体に重曹粉1/2カップを振りかけ、その上からクエン酸粉を1カップ振りかける。
2. 熱湯を注いでからラップで密閉し、1時間ほど置く。
3. ラップを外し、熱湯をかけて汚れを流す。
リビング
●窓のサッシ
サッシは軍手を雑巾がわりに使うと、細かな汚れまで取り除けて便利です。水拭き、乾拭き用に2組用意して。
洗剤の種類:熱湯重曹水
お掃除アイテム:軍手(2組)、布
1. 軍手をはめてサッシをこすり、土汚れを取り除く。
2. サッシに熱湯重曹水を吹きつけ、キレイな軍手で汚れを拭き取る。
3. キレイな布で乾拭きする。
バスルーム
●排水口
水アカがたまるとカビや細菌の温床に。1週間に一度は重曹で掃除をし、仕上げに除菌をして予防しましょう。
洗剤の種類:重曹粉、エタノールまたは電解次亜水(ハイパージア)
お掃除アイテム:アクリルたわし
1. 重曹粉を振りかけて熱湯をかけ、発泡させて3分ほど置く。
2. アクリルたわしで磨く。
3. 消毒用エタノールまたは電解次亜水(ハイパージア)を吹きかけ、除菌する。
洗面所・トイレ
●洗面ボウル
水アカや石鹼カスが蓄積されて白く汚れてしまっている洗面ボウルは、クエン酸水を使ってこすればすっきり!
洗剤の種類:クエン酸水
お掃除アイテム:アクリルたわし、布
1. 洗面ボウル全体にクエン酸水をたっぷりと吹きつける。
2. アクリルたわしで、水アカや石鹼カスをこすり落とす。
3. 水で洗い流し、乾いた布で水気を拭き取る。
玄関・バルコニー
●玄関マット
外からの病原菌が付着する可能性が高い玄関マットは、毎日掃除機をかけて菌が家の中に侵入するのを防ぎましょう。
洗剤の種類:重曹粉
お掃除アイテム:掃除機
1. マット全体に重曹粉を振りかける。
2. 手でもみ込んでなじませ、30分ほど置く。
3. 掃除機を一方向にゆっくりとかけ、重曹粉を吸い取る。
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季節別! お掃除テクニックを公開!
年間を通じて行う掃除のほかに、意識して行ってほしいのが、季節別の病原菌対策。四季がある日本では、季節ごとによって住環境も変わってくるため、その季節に合った掃除をすることが大切です。
「春」は花粉や大気汚染に注意!
冬の終わりから春にかけて多くの人が気になるものといえば花粉です。また、PM2.5や黄砂などの大気汚染も、春にピークを迎えます。これらは、衣類に付着したり換気の際に窓から家の中に侵入し、家の中のホコリと絡み合い、部屋中に拡散していきます。
対策としてはホコリの除去が基本ですが、掃除の手間を省くためにも、まずは家の中に侵入させないことが大切です。
マスクは玄関前で外す、帰宅後の着替えはホコリの多い寝室ではなく、浴室などですぐに着替えるなどを徹底するだけでも効果があるので、実践してみましょう。
「梅雨」から「夏」にかけては湿気対策を万全に!
湿度が高くなる梅雨から夏にかけては、カビが増殖する危険性が高まります。また、カビが増えると、それをエサにしてダニも増殖するため、カビ対策が急務となります。カビは湿度60%以上になると生えやすいので、まずは除湿対策を意識して行いましょう。また、こまめな掃除で、カビの栄養源となる、食べこぼし、ホコリ、フケ、髪の毛などを取り除くことも大切です。
夏から秋にかけて発生する危険性が高まるのが食中毒。主にトイレでウイルスの発生が多く、夏から秋にかけては、トイレの正しい掃除と除菌が重要となります。
「秋」は乾燥によりダニやノロウイルス被害が増加
秋になると、ダニの死骸やフンなどによって、アレルギー症状を引き起こす危険性があります。主な症状に「アトピー性皮膚炎」「気管支喘息」「アレルギー性鼻炎」などが挙げられます。これらの症状を防ぐためにも、秋になって気温が下がってきたら、布団を干すなどしてダニの死骸を家の中から除去しましょう。
また、空気が乾燥すると、ノロウイルス感染症が流行しはじめます。残念ながらノロウイルスを掃除で予防することはできませんが、トイレを中心とした除菌を徹底して行い、家族への二次被害を食い止めましょう。
「冬」は徹底除菌でウイルスを撃退!
冬になると猛威を振るうインフルエンザは、乾燥によって感染リスクが高まります。そのため、予防には乾燥を防ぐことが第一条件。加湿器を使うなどして湿度50〜60%前後を保つように心がけましょう。
また、冬でもカビが発生する恐れがあることをご存じでしょうか。冬のカビは、コールドドラフト現象(前述)により、冷えた空気が部屋の下部に集まって起こります。さらに、乾燥対策で使用する加湿器がカビを発生させる原因になることも。加湿器内部を洗わずにいると、カビの胞子が部屋全体に飛散する恐れがあるので注意が必要です。
どうしてもカビが発生してしまったら……?
便器の黄ばみや浴室の黒カビなどの頑固な汚れの落とし方
黒カビなどの頑固な汚れは、一度発生してしまうと重曹やクエン酸だけでは落とすことができません。これらは専用の洗剤を使って取り除いていきましょう。ここでは、黄ばみと黒カビのお掃除方法を紹介します。合成洗剤に頼らなくてもいいように、日々のゆる掃除で頑固な汚れをつくらないことも大切です。
●便座内部の黄ばみ
重曹で落とすことができない便座内部に染みついた頑固な黄ばみ汚れは、酸性洗剤を吹きつけて3分ほど置いてから、トイレ用ブラシでこすり落としましょう。
洗剤の種類:酸性洗剤
お掃除アイテム:ビニール手袋またはゴム手袋、ビニール袋、トイレ用ブラシ
1. ビニール手袋またはゴム手袋をはめ、汚れがひどい場所に酸性洗剤をつけて3分ほど置く。
2. 厚手のビニール袋をかぶせたトイレ用ブラシで汚れをこすり取り、水で洗い流す。ビニール袋は外して捨てる。
●浴室の黒カビ
黒カビには泡タイプのカビ取り剤が効果大。ごしごしこするのではなく、洗剤を吹きつけて時間を置き、汚れを中和させてから取り除くのがポイントです。
洗剤の種類:泡タイプのカビ取り剤
お掃除アイテム:ラップ
1. カビがついている部分に泡タイプのカビ取り剤を吹きつける。
2. そのままラップで覆い、12時間ほど放置する。
3. カビの状態を確認し、落ちているようなら、ラップを外して水で洗い流す。
記事まとめ
記事を読んで、これまで当たり前に行ってきた掃除方法が、いかに間違っていたかに気づき、驚いている方も多いのではないでしょうか? カビは肺炎や喘息の引き金にもなります。日々のお掃除を正しく行うことで、健康リスクは確実に減少します。正しく掃除を行って、家族の健康を守っていきましょう!
(抜粋)
TJ MOOK『カビ・ホコリ・菌を撃退! 家の「正しい」掃除ワザ』
監修:松本忠男
編集協力/引田光江、齋藤那菜(グループONES)
執筆/上野真依(MANICO)、内田桃孔
撮影/竹内浩務、北原千恵美
WEB編集/FASHION BOX
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