超高齢社会の日本では、高齢ドライバーが起こす交通事故が大きな社会問題となっています。しかし、実際には事故件数はほぼ横ばいです。高齢ドライバーの加害事故の現状を見てみましょう。
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篠原菊紀 (しのはら きくのり)
【Profile】
長野県茅野市生まれ。公立諏訪東京理科大学地域連携研究開発機構医療介護・健康工学研究部門長、学生相談室長、茅野市縄文ふるさと大使。専門は脳神経科学、応用健康科学。日常的な行動や変わったシチュエーションにおける脳活動を調査・分析し、社会に生かす試みを続けている。著書に『NHK カルチャーラジオ 科学と人間 中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)、『脳は、あなたにウソをつく』(KAWADE夢新書)、『子どもが勉強好きになる子育て』(フォレスト2545新書)などがある。
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75歳以上の3人に1人が免許を保有
2019年4月、東京の池袋で87歳の男性が赤信号を無視して交差点に突っ込み、死傷者12人を出す事故がありました。この事故以来、「高齢ドライバー=危険」という図式ができあがった感があり、免許を自主返納する高齢者も増えたといわれています。警察庁の調べによると、75歳以上の人口の約3人に1人が免許保有者です。しかも前年末に比べ約35万人増加し、今後も増加すると見られています。
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ハンドル操作ミスとブレーキ踏みまちがえ
75歳以上の高齢ドライバーが起こした死亡事故(原付以上第1当事者)の発生件数は、75歳未満のドライバーと比べると免許人口10万人当たりの件数で2倍以上となっています。また、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の件数自体は、10年間ほぼ横ばいで推移しています。ただし、全体の死亡事故件数全体が減少しているので、高齢者の免許保有者が増えていることで、死亡事故件数における高齢者の占める割合が高くなっていると考えられ、件数自体が横ばいであるなら実質的に高齢者の事故は増えていないといえるでしょう。
では、高齢ドライバーによる交通死亡事故にはどういうものが多いのでしょうか。
まずは、「車両単独事故」の割合が多いのが特徴です。単独事故とは、塀や標識などに激突するといった自損事故のことで、40%を占めています。75歳未満のドライバーがこの事故を起こす割合は23%なので、とても高い割合です。最も多い単独事故は「工作物衝突」で、ハンドル操作を誤って車線を逸れてしまい、何か物に衝突するといったものです。いっぽう、75歳未満のドライバーでは、横断中の事故など、人対車両による事故が相対的に多くなっているのが特徴的です。
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また、高齢ドライバーによる交通死亡事故の人的要因は、「ハンドル等の操作不適」による事故が最も多くなっています。次いで「内在的前方不注意(漫然運転等)」「安全不確認」の順となっています。さらに、「ハンドル等の操作不適」による事故のうち、ブレーキとアクセルの踏みまちがいによる死亡事故は、75歳未満では死亡事故全体の0.7%に過ぎないのに対し、75歳以上では5.9%と高い割合を示しています。
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身体機能や認知機能の衰えによる事故も多く起こっています。たとえば、
1. 視力などが弱まったことで周囲の状況の情報を得にくくなり、適切な判断ができなくなる
2. 反射神経が鈍くなることなどで、とっさの判断が遅れる
3. 体力の全体的な衰えなどにより、運転操作が不的確になったり、長時間、運転することが難しくなる
4. 運転が自分本位になり、交通環境を客観的に把握できなくなる
というのが高齢ドライバーの一般的な特性です。
これらが、75歳以上の高齢ドライバーが死亡事故を起こしやすい要因の一つだと考えられています。もしも、自分がこれらの特性に当てはまっていると少しでも感じるのなら、事故を起こさないためにも運転脳力を鍛えましょう。あるいは、無理して運転する必要がないなら、免許の自主返納をおすすめします。
(抜粋)
TJ MOOK『運転脳力を鍛える! 脳活ドリル』
監修:篠原菊紀
編集・構成:株式会社クリエイティブ・スイート
取材・執筆:和田典子
WEB編集:FASHION BOX
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