血圧を下げるための食生活は、長く続けることが大切です。だからこそ、あまりストイックになりすぎないのがコツ。そこで今、注目したいのが高血圧予防のための食事法「DASH食」です。日本人になじみやすいというこの食事法について、『ズボラでも血圧は下げられる!』(宝島社)など多数の著書をもつ、医学博士・板倉弘重先生に詳しく教えていただきました。
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高血圧対策として今、注目「DASH(ダッシュ)食」のすすめ
厳しい減塩や食事制限は続きません。ですが、普段の食事に選ぶ食材をちょっと変えるだけで、自然と高血圧予防の食生活は実践できます。血管を健康に保ち、血圧を下げるサポートをしてくれる食材をうまく取り入れて、がまんし過ぎずに血圧を上げない食べ方、「DASH食」を実践しましょう。
高血圧に効く理由1. 塩分の排出を促し、血圧を整える
血液中の塩分濃度が高くなると、水分で薄めるために血量が増えて血管を圧迫します。DASH食が推奨するカリウムは、余分な塩分を体外へと排出し、血量が増えるのを防ぎます。
高血圧に効く理由2. 脂肪分の摂取を減らし、動脈硬化を予防する
脂肪分やコレステロールの多い食事は、確かに高血圧の大敵。でも、DASH食では必ずしもNGではありません。意識して減らし、良い食材をより多く食べることで結果として動脈硬化を予防します。
高血圧に効く理由3. 体をつくるもととなるたんぱく質もしっかり摂れる
DASH食では、主なたんぱく源を、肉ではなく魚介類や豆類にしています。とくに魚は、血管を強くするDHAや血栓を予防するEPAも多く含まれているので、理想的な高血圧予防食といえます。
高血圧の食事療法「DASH食」とは?
高血圧の食事療法として、近年注目されているのがDASH食です。DASHとは、Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧予防のための食事法)の略で、高血圧からくる心疾患で亡くなる人が多いアメリカで開発された療法です。
DASH食は、ひとことでいえば、高血圧を助長する塩分(塩化ナトリウム)を排出しやすい体をつくることを目的とした食事法。「増やす食材」と「減らす食材」が示され、毎日の食事にこのルールを当てはめていけば、おのずと高血圧の予防・改善に効果的な食生活を実践できます。
■天然の降圧剤を食べればおのずと血圧は下がる!
DASH食が示す「増やす食材」は、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルと食物繊維、そしてたんぱく質を多く含む食材。具体的には、野菜、果物、低脂肪の乳製品、魚介類、海藻、大豆製品などです。反対に「減らす食材」は、動脈硬化につながる飽和脂肪酸やコレステロール、血液をドロドロにする糖分が多い食材。具体的には、脂肪分の多い肉(赤身は少量ならOK)、揚げ物、加工食品、お菓子、ジュースなど。高血圧の療養食というと、厳しく塩分を制限した食事というイメージがありますが、DASH食は、ガチガチに締めつけることはしていません。「体にいい食べ物>体に悪い食べ物」という考え方を基本に、ほどよい減塩を心がけながら、天然の降圧剤となる食材をしっかり摂ります。そして、続けるうち徐々に血圧が上がりにくい体づくりができるのです。
ただし、アメリカで開発されたDASH食を日本人が実践する場合、ひとつ注意したいことがあります。それは、欧米型の食事に比べて、日本食はたんぱく質が不足しがちだということ。とくに高齢の方はたんぱく質が不足すると、筋肉が減って体を動かしにくくなりがちです。運動量が減って体力が衰えると寝たきりにもなりやすいので、魚や大豆製品、赤身の肉などをしっかり食べるようにしましょう。
DASH食で積極的に摂る栄養素
食物繊維
便通を改善して肥満を予防したり、余分なコレステロールを排出します。さらには、血圧調整機能をもつ腸内善玉菌を増やします。
カルシウム
骨や歯の健康には不可欠なミネラルです。マグネシウムとともに血液の状態を一定に保つなど、高血圧予防にも重要な役割を担っています。
たんぱく質
たんぱく質をしっかり摂ることは、塩分の摂り過ぎ予防につながります。また、植物性たんぱく質を多く摂ると血圧を下げるとの研究報告も。
マグネシウム
体内のさまざまな化学反応に欠かせない重要なミネラル。カリウムの塩分排出をサポートするなど、血圧調整にも深く関わっています。
カリウム
細胞の浸透圧の維持や調整を担うミネラルです。体内の余分な塩分を尿として排出するほか、血管を拡張させて血圧を下げる働きも。
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DASH食の基本ルール
塩分の排出に注目して、「増やす食材」と「減らす食材」を取捨選択していくのがDASH食の基本ルールです。高血圧の療養食というと、厳しい塩分制限があり、食事のたびにこまごまと塩分計算をしなければいけないイメージがありますが、そうした手間がいらず、気軽に実践できることがDASH食の大きなメリットです。
■DASH食は日本人にはなじみやすい!
しかも、増やす食材のラインナップは、魚介類、海藻、大豆食品といった日本の食卓ではよく見かけるものばかり。「ビタミン、ミネラル、食物繊維をたっぷり」「良質のたんぱく質はしっかり」「脂肪分や糖質は控えめに」など、ダイエット食や美容食の基本と共通している部分も多く、健康意識の高い日本人にはなじみやすいメソッドといえるでしょう。
生活習慣病の療養食は、長く続けることが前提です。だからこそ、あまりストイックになっては続けるのがつらくなってしまいます。ある程度の括りのなかで、体にいいものは積極的に、そうでないものは控えめに、そして、時々は好きなものを楽しんでOKというDASH食は、働き盛りで忙しかったり、外食が多い人でも比較的続けやすい方法です。高血圧が気になる人は、上手に取り入れていきましょう。
DASH食で増やす食材
低脂肪の乳製品
牛乳、チーズ、バターなどの乳製品は、たんぱく質とカルシウムを手軽に摂れる食材。ただし、脂肪分が高いものもあるので、できるだけ低脂肪のものを選びましょう。
野菜と果物
野菜や果物は、ビタミン、ミネラル、そして便通を改善する不溶性食物繊維の有力な供給源。実もの、葉野菜、根菜をバランスよく取り入れて、毎食たっぷり食べましょう。
海藻
カルシウムをはじめとするミネラルに加え、余分な塩分やコレステロールを排出してくれる水溶性植物繊維が豊富です。サラダや酢の物など、献立のプラス一品に。
大豆製品
良質なたんぱく源であり、ビタミンやミネラルも種類豊富。しかもコレステロールはゼロ。豆腐、納豆、豆乳など手軽に食べられるので、毎日積極的に食べましょう。
魚介類
たんぱく質やビタミンB群に加え、とくに貝類はミネラルがたっぷり。イワシやアジなどの青魚には、良質な脂肪分のDHAやEPAも。種類が豊富なので献立に取り入れやすい食材です。
DASH食で減らす食材
肉
手軽なたんぱく源ですが、動脈硬化を進行させる飽和脂肪酸が多く含まれています。どうしても食べたいときは赤身を選び、少量をできるだけ脂を落とす調理法で。
高コレステロール食
ファストフードや揚げ物は、血管の負担になる悪玉コレステロールを増やします。加えてハムやベーコン、即席めんなどの加工食品は塩分も多め。できるだけ避けましょう。
糖質
甘いお菓子や清涼飲料には、血液をドロドロにする砂糖がたっぷり使われているので、できるだけ避けましょう。ご飯やパンなどの炭水化物も糖質なので、控えめに。
注意! DASH食が向いていない人がいます
DASH食では摂取が推奨されているカリウムですが、腎疾患の治療などではカリウムの摂取制限を行うことも。高血圧以外にも症状のある人は、始める前に医師と相談することをおすすめします。
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教えてくれたのは……
板倉弘重(いたくら・ひろしげ)先生
【Profile】
医学博士。芝浦スリーワンクリニック名誉院長、品川イーストワンメディカルクリニック院長。東京大学医学部卒業。同大学第三内科講師、国立健康・栄養研究所臨床栄養研究部部長を経て、現職。赤ワインなどに含まれるポリフェノールの抗酸化作用を世界で最初に発見。著書、監修書は『ズボラでも脱糖尿病 血糖値 上がらないのはどっち?』(アスコム)、『日常生活のちょっとした工夫で血圧、血糖値は下がる!』(アントレックス)、『大丈夫! 何とかなります 血糖値は下げられる』(主婦の友社)、『ズボラでも血圧は下げられる!』(宝島社)など多数。
(抜粋)
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監修:板倉弘重
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編集・ライティング:藤田都美子、宇津井恵子
イラスト:藤井昌子
※本文に掲載している食品の摂取量については、目安となります。特定の病気のある方、アレルギーの方など、食品の摂取制限がある方は、医師にご相談のうえ実践してください
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WEB編集:FASHION BOX、株式会社エクスライト