軽症の人も含めると30代以上の2人に1人は発症しているともいわれる下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)。発症の原因がすべて解明されているわけではありませんが、ある程度、下肢静脈瘤になりやすい人の条件はわかっています。健康的に生活するために、病気のリスクを知って予防を心がけてください。
教えてくれたのはこの方
静岡静脈瘤クリニック院長
佐野成一(さの・なりかず)先生
2003年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。2005年に東京慈恵会医科大学病院形成外科に入局し、2009年から岡山大学病院形成外科・リンパ浮腫治療班に加わる。2013年には東京医科歯科大学血管外科にてリンパ浮腫専門外来開設に尽力。2016年、地元である静岡に静岡静脈瘤クリニックを開業、リンパ浮腫と静脈瘤の専門医として治療に当たる。東京医科歯科大学血管外科・非常勤講師、リンパ浮腫療法士、日本医療リンパドレナージ協会認定セラピスト。監修書に『自分で治す下肢静脈瘤の本』 (宝島社) がある。
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下肢静脈瘤になりやすい人&環境
遺伝
両親が下肢静脈瘤である場合は約90%、両親のどちらかが下肢静脈瘤なら約50%の確率で子どもも発症するといわれています。両親とも下肢静脈瘤ではない子どもの発症率が約20%であることを考えると、遺伝がどれほど大きく関わっているかがよくわかります。
中高年
年齢とともに血管の弾力はなくなり、筋肉量が減って筋ポンプ作用も弱くなります。年齢的には50代から増加の傾向が目立ちます。
女性
患者のおよそ70%が女性といわれるほどです。女性ホルモンの影響のほか、男性に比べて筋力が弱く、筋ポンプ作用が働きにくいためだとされています。
妊娠・出産
出産経験者の2人に1人は静脈瘤を発症するというデータがあるほどです。妊娠すると血液量と女性ホルモンが増加し、大きくなった子宮も静脈を圧迫するため逆流防止弁が壊れやすくなります。妊娠回数が増えれば増えるほど、発症のリスクが高くなります。
立ち仕事
調理師、理美容師、警備員、教師など、同じ場所に長時間立ち続ける「立ち仕事」はかなりハイリスクです。立っている時間が長い半面、歩くことが少ないので筋ポンプ作用があまり働かず、血液の逆流が起こりやすくなります。特に1日10時間以上立っている人は重症化する傾向にあります。
デスクワーク
デスクワークなど長時間同じ姿勢で座ったままの人も、足の筋ポンプ作用が働きません。立ち仕事ほどではないですが、発症のリスクは高まります。
便秘
便秘も要因の一つです。排便時に強い腹圧がかかると、おなかの中で静脈が強く圧迫されて血液が上に向かって流れにくくなります。それにより足の血管に血液が滞りやすくなります。同じ理由により、力仕事も発症しやすいです。
肥満
腹部についた脂肪が足のつけ根の静脈を常に圧迫し、逆流防止弁を傷めます。男性より女性のほうが肥満との関連性が強く、BMI値(肥満指数)が30以上の女性の発症率はかなり高くなります。
運動不足
運動不足が日常化すると、すぐさま足の静脈の流れが滞ります。筋肉も衰えるため足の筋ポンプ作用の働きも悪くなります。
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(抜粋)
TJ MOOK『足のボコボコ血管・クモの巣状血管がすっきり! よくわかる下肢静脈瘤の本』
https://tkj.jp/book/?cd=TD295774
監修:佐野成一
編集:入江弘子
構成・文:田中絵真、前原雅子
イラスト:小野寺美恵
撮影:赤石 仁
WEB編集:FASHION BOX
(TJ MOOK『足のボコボコ血管・クモの巣状血管がすっきり! よくわかる下肢静脈瘤の本』)
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