体調を崩したときに服用する薬。健康を取り戻すためには必要なことも少なくありませんが、病院で処方された薬をなんとなく飲んでいるだけで、実はよく知らないという人も多いのではないでしょうか。そこで薬にまつわるあれこれを、薬剤師の立川靖之さんが教えてくださいました。
教えてくれたのはこの方
立川靖之さん
1975年、神奈川県生まれ。薬剤師。昭和薬科大学卒業後、外資系製薬会社、調剤薬局勤務を経て、横浜市に在宅医療への対応を強化した『あろま薬局』を開局。医薬情報担当者、薬局マネージャー、在宅医療連携などに従事。薬剤師の経験を生かし、東日本大震災の発生直後はボランティアとして被災地支援を行なった。
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高齢者とポリファーマシー
ポリファーマシーとは「Poly(多くの)」+「Pharmacy(調剤)」の造語。単に薬剤の数が多いだけではなく、薬剤が多いことにより、薬害につながる状態や飲み間違い、残薬の発生につながる問題のことを指します。さらに、不必要な処方や過量重複投与など、あらゆる不適切な処方も含まれます。
また、こうした薬剤の害に対して、薬剤で対応していくと、さらに薬がどんどん増えていくという「処方カスケード」という現象が生じます。
一般的に、高齢になるほど複数の病気にかかるリスクが高まり、処方される薬剤数が多くなる傾向にあります。
とくに75歳以上の患者さんでは、約4人に1人が7種類以上の薬剤を処方されているという報告もあり、それだけポリファーマシーや処方カスケードで健康を害することが懸念されているのです。
これに対して日本老年医学会は一般向けパンフレット「多すぎる薬と副作用」を作成して、高齢者と薬の付き合い方を啓蒙しています。
その内容は以下の通りです。
1. 自己判断で薬の使用を中断しない
2. 使っている薬を必ず(薬剤師に)伝える
3. むやみに薬を欲しがらない
4. 若いころと同じだと思わない
5. 薬は優先順位を考えて最小限に
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医薬分業〜病院内調剤と薬局での調剤〜
ひと昔前は病院や診療所で診察を受けた際、薬は診療費の支払い窓口でもらうことが普通でした。これに代わり、医師が処方箋を患者に交付し、薬局の薬剤師に調剤を依頼するシステムを医薬分業といいます。日本では制度上、医師による一部の調剤が認められていますが、医薬品の管理が最も厳しいドイツでは医師による調剤は禁止されています。この医薬分業のメリットはなんでしょうか。
1. かかりつけ薬剤師による薬剤の一元管理
「かぜで診察を受け、並行して虫歯の治療をした」
そんな時、ほとんどの薬の作用が重なることがあります。かかりつけの薬剤師にすべての薬を調剤してもらえば、飲み合わせや同種の薬剤の重複服用を防ぐ提案を受けることができます。
2. ベストな薬剤の選択が可能
医療機関の窓口で薬を受けとることは一見便利なように思われます。しかし、その場合、医療機関の都合で取り揃えている医薬品の中から選ばなければならないので、ベストな選択ができないケースがあります。その点、医薬分業制度においては、幅広く最良な医薬品の選択が可能になります。
3. 高齢化社会に対応
医療機関へ通院し、薬局で調剤を受ける――。年齢や病気によっては、そんなあたりまえのことができなくなることがあります。在宅医療という自宅で定期的な医療サービスを受けるには身近な薬剤師の存在が不可欠です。
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ジェネリック医薬品の市場拡大
「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」は、「新薬(先発医薬品)」の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分、同じ効き目の価格の安い薬のこと。わが国では、昨今の急激な少子高齢化により、医療費を一層効率化し、現在の医療保険制度を維持するための施策として、ジェネリック医薬品の使用が政府により推進されています。
ところで、どうしてジェネリック医薬品は新薬に比べて安いのでしょうか。その理由は、新薬の開発が10~15年ほどの歳月と数百億円以上の費用がかかるのに対して、ジェネリック医薬品はすでに安全性・有効性が確認された有効成分を使用しているため、約3年という短い期間での開発が可能だからです。そのため、新薬に比べて少ない費用で開発することができるのです。
ジェネリックに対する誤解として多いのは、価格が安いゆえに原料も粗悪ではないか、効き目も新薬に比べて乏しいのではないかという疑問です。しかし、これは大きな間違いです。ジェネリックには新薬と同じ有効成分が使われており、効果も同等です。こうした誤解が生じるのはジェネリックに対する知識がうまく国民に浸透していないからです。ジェネリック医薬品への疑問や不安などは、ぜひ薬剤師に相談し、正しい知識を身につけてはいかがでしょうか。政府は2020年9月までにジェネリック医薬品のシェアを80%とし、できる限り早く達成できるように促進策を講じるとしています。ジェネリック医薬品市場は国の後押しもあって市場拡大を続けています。
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(抜粋)
宝島社新書『医者からもらった薬がわかる実用ガイドブック』
監修:立川靖之
WEB編集/FASHION BOX
(宝島社新書『医者からもらった薬がわかる実用ガイドブック』)
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