防災対策って、完璧にはできないし、大変そう……、と思っていませんか? でも、難しく考えなくて大丈夫。家を片付ける、食品を多めに買い置きする、といった日常的なことこそが実は対策につながるんです。普段の暮らしプラスαで取り組める“ゆる防災”、はじめてみましょう。そんな災害対策を危機管理アドバイザーの国崎信江さんに教えていただきました。
《目次》●防災対策は思い込み・勘違いだらけ
●「一気に完璧に」よりも「ついでに」&「コツコツ」
●今、この瞬間からすぐにできる、防災7つの習慣
●自宅の危険度がわかる! 緊急時に役に立つ! 便利な防災アプリ
●教えてくれたのは……国崎信江さん プロフィール
防災対策は思い込み・勘違いだらけ
みなさんは「防災」というと、どんなことを思い浮かべますか?
「非常用持出袋を作れば安心という人や、避難所に行かなければならないと勘違いしている人が少なくありません」と言うのは、危機管理アドバイザーの国崎信江さん。
「命や建物に危険が迫っている状態でなければ、冷静に避難の必要性を考えてみましょう。地震のときに安全を守れるよう家を整えたり、食料品を備蓄したり、“在宅避難”ができるようにすることを目指すべきです」(国崎さん)。
「一気に完璧に」よりも「ついでに」&「コツコツ」
今まで防災対策をしていない人は、「あれもこれも買わなければ」「家の点検や片付けも早くやらなくては」と焦ってしまうかもしれません。そこで国崎さんがおすすめしているのが「コツコツ防災」と「ついで防災」です。国崎さんご自身も、毎月3~5千円と決めて防災用品を揃えていったそう。「今月はヘッドライトを買おう、来月は冷蔵庫を固定しよう、次は本棚……と少しずつ進めます。すると、だんだん防災対策していないところが気になるようになって防災が習慣に。一気に完璧にしようとすると、経済的にも負担になりますし、賞味期限なども同時に切れて続けにくくなります」。
災害時、ひとり1日3Lの水を1週間分用意しておくことが推奨されますが、負担が少なくできる方法もあります。
「わが家では、普段も飲んでいる豆乳や野菜ジュースなどを“ついでに多めに”買ってストックしています。水分摂取は水に限らなくてもよく、災害時こそ、飲み慣れたもののほうがよいのです」。そのほかにも、「役所に行ったから、ついでにハザードマップをもらう」なども◎。
「“防災対策は日常とは別もの”と切り離して考えるのではなく、“日常の延長”として捉えると、手軽にできることが増えていきます。下で紹介する“ゆる防災7つの習慣”などを参考に、さっそくはじめてみてください」。
非常時に用意する「一次持ち出し品」の厳選チェックリスト! あなたは防災グッズの準備はできてる?倉庫やロッカーにストック! 自然災害が起こっても1週間は過ごせる備蓄品
今、この瞬間からすぐにできる
ゆる防災7つの習慣
[1]「今地震が起きたら?」と想像する
例えばレストラン。漫然と座るのではなく、周囲を一瞬チェックして。「シャンデリアが落ちてくるかも」「花瓶が倒れたり、窓が割れるかも」など気にかけるだけで、地震時のとっさの行動に違いが出ます。
[2] 防災アプリを使ってみる
ラジオや気象情報など、緊急時に役立つ情報源のアプリ、緊急時に助けを呼べるアプリ、災害をシミュレーションできるアプリなど、無料のものも多数。使い勝手のよいものを選んで。
[3] 携帯は常にフル充電
いざというときスマートフォンや携帯電話の充電が切れてしまわないように、自宅や会社ではフル充電の状態にしておく習慣を。外出時にはモバイルバッテリーを持ち歩けばさらに◎。
[4] トイレは我慢しない
災害時に困るのがトイレ。水道や電気が止まるとトイレが使えなくなることも。食事は1日食べなくても過ごせるけれど、トイレは我慢できないもの。行けるときに済ませておいて。
[5] 備蓄は「好きなもの」を箱買い
備蓄用の飲食物は、非常食にこだわらなくてもOK。自分が好きなものでよいので、食べ慣れた食材を多めにストック。普段もそこから使って、残りが少なくなったら買い足して。
[6] フルーツは3種類用意する
果物はそのまま食べられて、ビタミン、ミネラル、果糖、水分などを補給できるので、実は災害時にも役立ちます。普段から3種類の果物を欠かさないようにして、食べきる前に補充しておいて。
[7] インテリアの新調時は“柔らか素材”に
割れやすいガラスや陶器、重さのある金属のインテリアは、大地震の際にケガの原因に。たとえばフォトフレームでも、革や布などの柔らかい素材を選ぶなどすると、災害時に安心で、かつおしゃれに。
【災害時救命マニュアル】地震が起きたときどうすれば? に答えます!大人の女性こそ災害ボランティアへ! 力仕事だけじゃない現地事情とは
自宅の危険度がわかる! 緊急時に役に立つ!
便利な防災アプリ
東京都防災アプリ
東京都公式の防災アプリ。防災の基礎知識と対策を学べるとともに、避難情報・災害情報の配信、都内の防災施設を確認できる。
※居住地の道府県や地域に同様のアプリがあればそれを利用して
全国避難所ガイド
全国の自治体が定めた災害時の避難所や避難場所を10万件以上収録。現在地から最も近い避難所を検索してルート案内をしてくれるナビ機能もついているので、外出先で災害にあったときに役立ちそう。
MySOS
救命・健康サポートアプリ。急病人の一次救命措置や応急手当てをガイドしてくれる。近くのアプリユーザーへの救援依頼や119番通報することもできる。健診結果やお薬、かかりつけ医などの記録機能も。
NHKラジオ
災害時にはすぐに正しい情報を収集したい。そこで、ラジオがなくてもラジオを聴けるアプリがおすすめ。「NHKラジオ らじる★らじる」では、NHKラジオ(第1、第2、FM)を聴くことができる。
雨ですかい?
雨の降る時間と量がすぐにわかるアプリで、現在地で雨が降りそうなタイミングを通知してくれる。すでに雨が降っていても豪雨に達すると雨量が増すごとに通知するので、台風による災害の備えにも。
KOE
アプリを起動して画面の「HELP!」を押すと、マナーモードにしているときでも、大音量で警告音が流れる。痴漢撲滅用に開発されたアプリだが、災害時にも身の危険を周囲に知らせたいときに使える。
自然災害に備えあれば憂いなし! アプリにマップ、改めて知りたい防災知識
教えてくれたのは……
国崎信江さん プロフィール
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性・母・生活者としての視点から、防災・防犯対策を提唱。災害時には支援活動も行う。『震度7から家族を守る家:防災・減災ハンドブック』(潮出版社)など著書も多数。
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photograph_Junichi Harano
text_Keiko Nakayama
(大人のおしゃれ手帖 2020年8月号)
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