(2020年5月18日 更新)
免疫力とは、さまざまな病気から体を守り、健康を維持する力のこと。免疫力を上げれば、同じ環境にいてもウイルスを撃退できる。
今回は摂取するだけで幅広い効果があるといわれている、“お酢”の効果について東京農業大学名誉教授の小泉幸道先生に教えてもらおう。
≪目次≫
●毎日大さじ1杯の酢で体は即効パワーアップ!
●お酢のおすすめ摂取法
●基礎疾患を防いで免疫力維持
●このコンテンツの監修者は……
毎日大さじ1杯の酢で体は即効パワーアップ!
本来、食べるだけで目覚ましい健康効果が得られる食品は少ない。病気の治癒(ちゆ)や予防のための薬理作用がある薬品との大きな違いだ。ところが酢は違う。摂取してすぐに幅広い健康効果が得られるのだ。
酢の摂取後すぐに期待できる健康効果は、唾液の分泌によって促される免疫力の向上、疲労回復、食欲増進など。中長期の継続摂取で得られる健康効果は、高血圧や糖尿病の改善、内臓脂肪の減少、認知症やがん、脳卒中の予防まで、多岐にわたる。
酢を研究して40年、「お酢博士」として知られる東京農業大学の小泉幸道名誉教授はいう。
「酢には食欲を増進させる作用とともに唾液の分泌を促す働きがあります。唾液は細菌やウイルスなどの異物が体内に入るのを阻む最初の障壁。リゾチームや免疫グロブリンなど多くの抗菌・抗ウイルス物質を含み、有害物質を死滅させる役割を持っているのです」(小泉先生)
加齢とともに唾液の分泌量は減る傾向にある。口の中が乾燥する「ドライマウス」は、免疫力の低下を招くのだ。酢を積極的にとり、よく嚙んで食べることで、唾液の分泌を促し、免疫力の向上に努めたい。
さらに酢はカルシウムを吸収しやすくする働きもある。カルシウムは免疫の働きを左右する自律神経のバランスを整える。この点からも酢の摂取は、免疫力の強化につながるといえる。
「カルシウムの吸収率を高める料理としてすすめたいのが、貝類を具材にしたみそ汁です。酢を入れた水でカルシウムが豊富な殻つきの貝類を煮ると、殻に含まれるカルシウムが酢の成分と結びつき、煮汁に溶け出します。通常の3倍以上のカルシウムのほか、マグネシウムやカリウムなども効率よく摂取できるおすすめメニューです」(小泉先生)
骨まで食べられる小魚の南蛮漬けやマリネ、牛乳に酢を加えたヨーグルト風ドリンクもおすすめだ。
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お酢のおすすめ摂取法
お手軽! 毎朝の習慣に
水や無糖の炭酸水で割って飲む
酢をそのまま飲むと、のどや胃の粘膜を傷めることにも。一番手軽で習慣にしやすいのは水や炭酸水で5~8倍に薄めて飲む方法だ。
即効で元気を作る組み合わせ
お酢×はちみつドリンク
酢にはそれ自体に疲労回復効果があるが、はちみつと合わせることで、より強力でスピーディーな効果が期待できる。ここで紹介するのは、豊富なビタミンCの抗酸化作用による老化防止を同時に狙った100%オレンジジュース割り。作り方は簡単で、下記の材料をグラスに入れてよくかき混ぜるだけ。ジュースを牛乳に代えれば、牛乳のカルシウムが吸収しやすく、ヨーグルトのような味わいになる。
<材料>
・りんご酢:大さじ1
・はちみつ:大さじ1
・100%オレンジジュース:120mL
毎日の献立にお酢をプラス
貝のみそ汁が特におすすめ
納豆に酢を足すなど、酢のちょい足しで健康効果は上がるが、特におすすめするのは酢を加えた貝類のみそ汁だ。酢によってカルシウムなどのミネラル分が溶け出して吸収しやすくなるとともに、豊富なアミノ酸も摂取できる。シジミ汁を作る際に小さじ1と1/2の酢を加えて殻つきのシジミを煮出したところ、通常の3.4倍のカルシウムが溶け出したという研究結果もある。また意外にも酢を加えると上品な味わいに。
<材料(1人分)>
・水:200mL
・殻つきのシジミ(アサリに代用可):50g
・酢(穀物酢または米酢):小さじ1と1/2(7.5mL)
・みそ:小さじ2(10g)
<作り方>
1:鍋に水と酢、殻つきのシジミを入れて8分間弱火で煮る。
2:火を止めて2~3分おき、みそを溶かし入れる。
ビタミン豊富な野菜を使う!
野菜を酢漬けにする
野菜などを酢に漬けるマリネは、世界中にみられる調理法。野菜によって異なる栄養成分と酢の組み合わせで、さまざまな健康効果が期待できる。免疫力強化という観点からおすすめするのが、免疫細胞を活性化するβカロテンを豊富に含む野菜の酢漬け。マリネ向きの野菜ではニンジン、トマト、パプリカなどがある。
また、ゴボウやきのこ類といった、腸内環境を整える働きのある食物繊維が豊富な食材を酢漬けにするのもいい。ニンジン、トマト、パプリカは生のまま使うが、ゴボウやきのこ類は漬ける前に加熱が必要。ゴボウは酢を加えた水に入れて火にかけ、沸騰したら3分ほど煮て、水気を切ってから使う。きのこ類は酢、砂糖、塩を入れた水から煮て沸騰する直前でザルに上げてから使う。
基礎疾患を防いで免疫力維持
新型コロナウイルスに関して、糖尿病、心臓病などの基礎疾患がある人は感染リスクが高いことが指摘されている。また、高血圧自体は免疫力を低下させないものの、感染した場合、重症化しやすいこともわかってきた。酢はこうした基礎疾患の予防・改善にも役立つ。
「酢の健康効果の中でも血圧を下げる作用に注目してほしいと思います。酢を毎日大さじ1(15mL)とり続けた結果、6週間で血圧低下がみられたという研究結果があります。血圧が高めの男女(最高血圧130~159mmHg、最低血圧85~99mmHg)の平均低下値は、最高血圧で15mmHg、最低血圧で6mmHgでした」(小泉先生)
高血圧の定義は「最高血圧140mmHg以上かつ、または最低血圧90mmHg以上」。平均的な低下がみられれば、正常な範囲まで血圧を下げることができることになる。
高血圧は脳梗塞(こうそく)や脳出血など「脳血管疾患(脳卒中)」、心筋梗塞や狭心症(きょうしんしょう)などの「心疾患(心臓病)」、人工透析(とうせき)や腎臓移植が必要となる「慢性腎臓病」などのリスク要因。毎日、大さじ1の酢で、このリスクを下げることもできるのだ。
「酢の摂取をやめると、血圧は元に戻ってしまいます。ただ、やめたからといって、とり始める前より血圧が高くなることはありません。また、正常な血圧の方が摂取したからといって、血圧が正常値より下がる心配はありません」(小泉先生)
メタボリックシンドロームにつながる内臓脂肪を減少させる効果も見逃せない。内臓型肥満と、高血圧・高血糖・脂質異常症のうちの2つが結びつくと動脈硬化などの発症リスクは高くなるのだ。
また、糖尿病の発症につながる急激な血糖値の上昇を抑える効果もある。すでに糖尿病を発症している人は、日々の血糖コントロールは病気を悪化させない重要な課題。酢の摂取はそのためにも役立つ。
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このコンテンツの監修者は……
東京農業大学名誉教授
小泉幸道先生
【Profile】
専門は発酵食品学(発酵食品の科学的な成分変化と機能性に関する研究)。監修書に『やせる・若返る・病気が消える! お酢レシピ 完全版』(笠倉出版社)など。「お酢博士」としてテレビなどで活躍中。
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(抜粋)
TJ MOOK『新型コロナウイルス対策! 免疫力を上げる50の方法』
監修(記事掲載順):後藤礼司(愛知医科大学医師)、栗原 毅(栗原クリニック東京・日本橋院長)、北西 剛(きたにし耳鼻咽喉科院長)、山口康三(回生眼科院長)、栗原丈徳(栗原ヘルスケア研究所所長・歯科医師)、石原新菜(イシハラクリニック副院長)、小泉幸道(東京農業大学名誉教授)、川嶋 朗(東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当医師)、内田輝和(鍼メディカルうちだ院長)、宇佐見啓治(うさみ内科院長)、齊藤嘉美(成和会介護老人保健施設「むくげのいえ」施設長)、板倉弘重(品川イーストワンメディカルクリニック理事長)、井尻慎一郎(井尻整形外科院長)、島村善行(島村トータル・ケア・クリニック理事長)、藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授)、秋津壽男(東京戸越銀座・秋津医院院長)、海原純子(医学博士・心療内科医)、赤須玲子(赤須医院院長)、帯津良一(帯津三敬病院名誉院長)、久代登志男((一財)ライフ・プランニング・センター理事長 日野原記念クリニック所長)、長尾和宏(長尾クリニック院長)、常喜眞理(常喜医院院長)、井原 裕(獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科教授)、米山公啓(米山医院院長)、木庭新治(昭和大学医学部教授)、早坂信哉(東京都市大学人間科学部教授)、榎木英介(病理専門医・細胞診専門医)、宝田恭子(宝田歯科院長)、宮田俊男(みいクリニック院長)、工藤孝文(工藤内科 糖尿病・減量外来)、大西睦子(医学博士・内科医)、岩根隆太(Sleep Rest Clinic 幕張院長)、中村康宏(虎の門中村康宏クリニック院長)、石井さとこ(ホワイトホワイト デンタルクリニック院長)、菅原道仁(菅原脳神経外科クリニック院長)、筒井冨美(フリーランス麻酔科医)、福田大和(一宮きずなクリニック院長)、上田弥生(産婦人科医)、長尾周格(稲毛エルム歯科クリニック院長)
編集・執筆:株式会社はる制作室、真瀬 崇、坂本夏子、黒澤 円、石野宏幸
編集・執筆協力:五十嵐有希、常井宏平
撮影:中川晋弥
写真協力:shutterstock、photolibrary
WEB編集:FASHION BOX
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